玉川テラスで、チョコレートパーティー2014に行ってきました

玉川高島屋の7階にある,玉川テラスでは、毎月、興味深いイベントを開催しています。そんな中、バレンタインの前に、各社選りすぐりのチョコレートを味見できるという、チョコレートパーティー2014に出かけてきました。

お知らせをいただいたときから、とても楽しみにしていて、申し込めましたが、すぐに満席になってしまうという人気のイベント。今年初めて参加しました。

第一部は、小椋三嘉さんによる、チョコレートの歴史と、パリの最新情報をお聞きします。現在のような板チョコができる前は、長い間、チョコレートは飲み物だったそうです。

こちらは、マリーアントワネットが使っていたチョコレート用カップの復刻版。パリでは、こんなふうに、チョコレートを飲み物として楽しんでいたのです。

第二部は、お味見会です。会場にずらりと並んだチョコレートの一部をご紹介します。

【参加ブランド】
<玉川高島屋S・C>
モロゾフ、オッジ、ビゴの店、ジーゲスクランツ、玉や絲や、笹屋伊織、赤坂柿山、銀座鈴屋、カフェマルコリーニ
<玉川高島屋>
アンリ・ルルー、かきたねキッチン、ゴディバ、ゴンチャロフ、BABBI、デメル、ドゥバイヨル、カール ユーハイム、ヴィタメール、菓子工房ルーヴ、フォション、ペック、マキャプート、ミッシェル・ショーダン、帝国ホテル
なんと、24社が勢揃いします。順番に各社を回って,お皿に乗り切りません。日頃、気になっていたブランドのお話も聞けて楽しかったです。こちらがひとり分。
いただいたチョコレートを、美味しい紅茶とともにいただくのですが、さすがに全部は食べられません。すると、お持ち帰りできるボックスまで用意されていて、感激でした。家に戻って、家族と、お話しながら、ゆっくりと味わいました。

今回、気になったのは、デルメの猫の舌をモチーフしたチョコレート。箱のデザインもとても可愛いのです。貰ったら、うれしくなりますね。

これだけ楽しめて、参加費1,500円は、とってもお得でした。来年もぜひ、参加したいと思います。バレンタインまで、あと二週間あまり、どれにするか、ゆっくりと考えてみます。

歌舞伎座 壽初春大歌舞伎に行ってきました

お正月は忙しい。歌舞伎座も新橋演舞場も、浅草もあって、その他、三宅坂の国立劇場も歌舞伎芝居があります。毎年、国立劇場の菊五郎劇団の復活狂言をみて、演目に合わせて、歌舞伎座をみる、ということにしています。

今年の干支にちなんだ展示

今回は、やはり藤十郎演ずる戸無瀬が見せ所の、山科閑居を見たくて,夜の部に行ってきました。お正月らしい着物を着て、新装された歌舞伎座に入るのは、それだけで気分が上がります。

藤十郎の戸無瀬、さすがでした。手の動きや表情、婚礼が叶わぬからと、娘を殺して、自分も死のうとするが、たびたび呼び止められる。大星の妻、お石を演ずる魁春の非情なまでの武家のお内儀。これは役者の力量だけの芝居ですから、バランスが釣り合っていないと、みていてはらはらしてしまいます。

前回見た時は、もっと緊迫感があった気がします。今回のは、上方風のはんなりした戸無瀬、そして小浪役の扇雀とは、親子の情愛のようなものが感じられました。

新作ものが続いている染五郎は、井上ひさしの「東慶寺花だより」を好演。この人の純粋な、ひたむきさがよく出ていた作品だと思います。舞台の奈落に落ちて、一時は役者も危ぶまれたのに、無事復帰して、人間の幅が広がったように思えます。だから、新しい役にもなじむのでしょうね。


夜の部

一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居

戸無瀬 藤十郎
大星由良之助 吉右衛門
お石 魁 春
小浪 扇 雀 ※
大星力弥 梅 玉
加古川本蔵 幸四郎

二、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)

萬歳 梅 玉
通人 翫 雀
大工 橋之助
田舎侍 彌十郎
芸者 児太郎
白酒売 孝太郎 ※
女船頭 扇 雀
才造 又五郎

三、東慶寺花だより(とうけいじはなだより)

信次郎 染五郎
法秀尼 東 蔵
柏屋主人源兵衛 彌十郎
おぎん 笑 也
堀切屋三郎衛門 松之助
美代 虎之介
おせん 孝太郎
惣右衛門 翫 雀
お陸 秀太郎


名優たちがいつの間にか、増えています。

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純喫茶トルンカを読みました

知り合いに薦められて、京都まで連れてきた本たち、「純喫茶トルンカ」もその一冊です。

【トルンカ】つてなんだろうと思って読み進めてきたら、最後の章で明かされました。イジー・トルンカという、チェコの人形アニメの作家なのです。この店のマスターが最初にデートしたとき見たのが、その作品で、やがて、それを店の名前にしたというわけです。

舞台が、喫茶店で、さまざまなお客様がやってきます。薫り高く、ほろ苦い思い出。マスターのいれる上質な珈琲に似ています。ドラマは現在から、過去を呼び出し、そしてちょっぴりと未来に光を当てています。

谷中の話なので、読んでいると、その場所が立体的に浮かんでくるから不思議。さらさらと読めますが、本当は、じっくりと一話ごとに味わい深くお楽しみください。昔の出会いや、昔分かれた人たちのことを思い出しました。心の温かくなる物語です。
徳間文庫 八木沢里史 著

花だけの「写真展」に行ってきました

写真家の清家正信さん、Facebook繋がりで、グループ展などを拝見していました。風景を撮ると、しずかな、哀しみのようなものまで、映し出し、清冽な印象です。その方が、「花だけの写真展」を開催するというので、オープニングパーティに出かけてきました。

会場は、すでに熱気に溢れていて、飾られた写真は、写真というよりは、絵画。絵画展に迷い込んだような印象です。自然にあるものを撮っているのに、儚さ、脆さ、凛とした表情、時間の流れ、などさまざまな思いを感じます。写真でここまで、取り込めるのですね。そういう驚きは、わたしだけでなく、会場にいたすべてのみなさまが、そういう感想を述べられていました。

どうやったら、あんな写真が撮れるのか、どうやったら、少しでも、近づけるのか、考えると夜も眠れそうもありません。写真は写実を超え、芸術となるのですね。会場には、重い一眼レフを抱えた人ばかりで、コンデジの自分は、それを取り出して写す勇気がありませんでした。いえ、すばらしい作品に圧倒されて、ただただ眺めていたのです。写真を撮ることなんか、思いつきませんでした。

日時 2013年12月14日から23日まで、12時から19時 (好評につき12/23まで延長します)
場所 目黒、meguroba
〒153-0063
東京都目黒区目黒1-23-15
Tel :   090-8343-6226

日生劇場で、オペラ「フィデリオ」を見る

日生劇場で、「フィデリオ」を見た。 小川 里美さん主演。ベートーヴェン唯一のオペラで、ドイツ語上演だった。演奏会形式は、多いのだが、オペラで、さらに日本人が主役もやるというは、珍しいのだ。

物語は、投獄された夫フロレスタンを助けるために、その妻レオノーレは、髪を切り男になって、刑務所の看守ロッコの助手として働く。誠実な仕事ぶりに、娘マルツェリーネが気に入っているので、婿にしてもよいといわれる。

一方、夫を投獄させた政敵ピツァロは、大臣の抜き打ちの訪問の知らせを聞き、フロレスタンを殺害して、証拠を消そうと企む。

ロッコは殺人を断り、かわりに墓穴を掘る仕事を命じられた。フィデリオは、その穴を掘る仕事を手伝うことで,愛する夫のそばに行くことができる。弱った夫にワインとパンを与え、励ます。するとピツァロが現れ、夫を刺そうとする。そこに立ち向かうフィデリオ。まず、妻を刺しなさいと、自らが剣の前に立ちはだかるのだった。危ういところで、大臣が到着し、陰謀はあばかれ、フロレスタンは、解放される。

全編を貫くのが夫婦の愛。愛する夫のため、強く生きるフィデリオが凛々しく、そしてけなげで、涙が出てくる。

今年は、2月のオペラバスチーユのワルキューレに始まり、ワーグナーのパルシファル、そして、二週間前のリア、とドイツオペラが続いた。

イタリアオペラに較べて、ドイツオペラは、旋律がすばらしい。魂の声そのもの。演ずる人も命がけだと思う。そんな夕鶴のような小川さんが、すべてを捨て、身を削り、危険を省みず、愛する人を救おうとする姿に万雷の拍手がわき起こった。
台詞もドイツ語、歌も歌うのだから、演ずる人は、普通の何倍も大変だったのではないか。

演出は三浦安浩さん。舞台を特定の地名ではなく、どこかの国、どこかの時代にして、哀しみや人の心の動きを際立たせている。能楽でもそうだが、抽象的にすれば、見る人の経験や感情で、どんどんイメージが膨らんでいく。

敵役のピツァロを演ずるジョン・ハオのうまさ、権力にしがみついた男を見事に演じていた。ロッコの山下浩司さんは、優しい父親で、そして、殺人の依頼に対し、任務外のことですからと、断る勇気がある。

日本では、まだあまりなじみのない、このオペラ、ドイツ語圏内では、頻繁に上演されているようだ。夫婦の愛だけでなく、権力との闘争を描いたとの解釈もあって、新演出の腕の見せ所なのかもしれない。今回は、最後にマルツェリーネがヤキーノとよりを戻す場面があって、笑えた。二番手でもいいのだ。今どきの女の子だから。

オペラの演目を重ねると同時に、演出の絶妙さを楽しもうと思った。出演者のみなさま、お疲れさまでした。観客は、大いに楽しみました。

イタリア文化会館で、「ニッコロ・アンマニーティとの出会い」 特別上映会

今週は、毎日イベントが続いた。そんな中、九段下のイタリア文化会館に二日間通った。「ニッコロ・アンマニーティとの出会い」という特別プログラムがあって、講演会には出席できなかったが、その後の特別上映会を見た。

11月8日(金) 19時
「ぼくは怖くない」(ガブリエーレ・サルヴァトーレス監督)
(2003年3月14日 初公開)
イタリア南部の小さな村で暮らす、ミケーレは、偶然みつけた穴の中に鎖につながれた子どもを発見する。恐ろしい秘密、そして、二人は心を開いて仲良しになる。だが、その子の存在と、両親や大人たちには関係があった。

見ていて、はっとなる場面があって、子どもたちが実に生き生きとして描かれていて、イタリアの貧しい南部の暮しというのものが伝わってくる。まるで、自分も同じように麦畑を走り回っているような気分にさせられた。最後のシーンが印象的でいつまでも心に残る。

11月9日(土) 19時
「孤独な天使たち」(ベルナルド・ベルトルッチ監督)

人とうまく交わる人のできない14歳のロレンツォ。スキー合宿に出かけると嘘をついて、自宅のあるアパートメントの地下室で、一週間、孤独な時間を過ごそうとしていた。そこに異母姉のオリヴィアが現れ、かき乱されてしまう。姉はヘロインの中毒で苦しむ。初めて、会話する姉弟。ロレンツォは、姉の苦悩も知り、なんとか助けたいと思うのだった。そして、最後のシーンで流れる曲、「Ragazzo Solo, Ragazza Sola (lonely boy and a lonely girl)」
が、涙が出てくるくらいすてきだ。一日かけて調べしまった。1982年に発表されたアルバム「Rare」に収録されている。

The Italian version of David Bowie’s Space Oddity. This song isn’t about isolation like the original, but is a story of a lonely boy and a lonely girl who meet.

“Ragazzo Solo, Ragazza Sola” (Bowie, Mogol) – 5:02
An Italian-language version of “Space Oddity”, released as single in Italy in 1969

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能楽研修発表会、第二回 青翔会に行ってきました

千駄ヶ谷の国立能楽堂では、さまざまな能楽の公演が行われています。初めての方向けには、能楽鑑賞教室があって、中学生、高校生向けですが、一般の方も入場できます。親切な解説付きで、わかりやすく、演目も退屈しないようになっています。6月の観劇記はこちら

その一方で、今度は舞い手側の「能楽研修発表会」があります。こちらは、各流派の若手能楽師たちが日頃の稽古の成果を発表するもので、昨年から、有料化され、席も指定席になりました。それ以前は、入場するために並ぶ必要があったので、余裕をもって、出かける必要がありました。有料化といっても、正面1500円、脇正面1000円というの破格なお値段。若手能楽師といっても、格流派から選ばれた人、それぞれに型があり、見応えがあります。狂言、舞囃子(装束を付けない舞)と続きます。

seisyokai

今回の見どころは、能「乱(みだれ)」。宝生流の「猩々(しょうじょう)」は何度か見ていますが、観世流の乱は、「猩々」において中ノ舞(ちゅうのまい)を舞うところを、乱という遅速の変化に富んだ舞を舞うものだと、聞いていました。

この演目は、シテ方、井上裕久さんがつとめました。日本能楽会員で、この国立能楽堂養成研修講師でもあります。

いつものように赤い衣装の「猩々」が現れ、楽しそうに踊るのですが、いつもと動きが違います。能楽の特徴のすり足ではなく、つま先で歩いたり、足の裏を見せたり、軽快に明るく,楽しそうです。こんな能楽もあるのですね。新人の発表会の最後の演目らしく、目出たさに溢れていました。

実は、今回の能楽鑑賞の前に、知人から、これを読むと能楽が違って見えるといわれた、渡辺保さんの「能のドラマツルギー」

(文化デジタルライブラリーからの引用)
晴れ渡った空に、月や星がまたたくなか、芦の葉にそよぐ風を笛の音のように、打ち寄せる波を鼓の音のように聞いて、猩々は舞います。ここでは太鼓にあわせ て「中ノ舞(ちゅうのまい)」が舞われますが、「乱(みだれ)」という舞が舞われることも多く、足拍子を踏まずに抜き足やつま先で横滑りするような足づか いなどを見せ、酒に酔った猩々が、ふわふわと波に漂いながらたわむれる姿がよく表されています。その場合は、演目名は『猩々乱(しょうじょうみだれ)』や 『乱』となります。

この能楽研修発表会,次回は2014年3月10日 月曜日 16時からです。お楽しみに。

 

「うたかたの日々」、特別試写会に参加しました。

先日9/29のスゴ本オフの第二部は、「うたかたの日々」ディレクターズ・カットの特別試写会でした。おとぎ話のような幸せに包まれた若いカップルが、妻の不思議な病のために、破滅していきます。夢の続きの現実を突きつけられて、繊細な心をもつ人は、苦しむのでしょう。切ないラブストーリーです。原作者、ボリス・ヴィアンの略歴をみると、主人公のコランを思い出します。持っていたものを突然失って、ひとはそれからどのように生きていけるのでしょうか。2013年の今みても、色あせない夢の世界でした。

映画は10/5から上映中。

今回の試写会、早川書房、光文社から、それぞれ映画の原作本を差し入れていただくという豪華なものでした。運よく、二冊ともいただき、両方を読み比べながら、映画の余韻のようなものを楽しみました。ぜひ、原作をお読みになることをお薦めします。

映画だと、当然ながら、パリの風景、それも裏道だったり、暮らしている人目線で、つぎつぎと現れます。これは、本の行間を読むより、強烈な印象があります。2月に出かけたパリの、あの街角だとあの風景だと思いながら、楽しんでいました。フランスの映画を久しぶりに見たように思います。大人になる前の、空想の世界、それも原作に忠実に画像で表現してくれています。原作のこの場面は、こういう表現をしているのだ、など、思い出しながら、二度楽しみました。

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スゴ本オフ、「Love」に行ってきました

前回の「アイドル」、佐渡にいたので参加できず、久しぶりのスゴ本オフでした。

今回は二部制。第一部がスゴ本、第二部が試写会という、二倍楽しい会でした。「Love」がデーマで、
わたしが紹介したのは、安井かずみと森瑶子。すでに故人ですが、70年から80年にかけて、時代を駆け抜けて来た人です。若い人にも知ってもらいたいと、持参しました。

私のなかの愛安井 かずみ著
学生時代、楽譜を買いに行って、ふとした偶然で、作詞を始める。その後、加賀まりこと親友になり、二人で初めてパリに出かけた。フランス語でたくさんの恋をして、フィレンツェで結婚式をあげ、一年半で離婚。日本に帰ってきてからは、沢田研二の作詞をして、「危険なふたり」、「私の城下町」などのヒット作を次々と発表。

実生活では、加藤和彦と再婚し、理想的なカップルといわれた。その彼女が、まだ結婚前の孤独や、思いや、伝わることのない愛について語っている。愛について、読み解く本。

恋愛論 森 瑶子著
芸大のヴァイオリン科を卒業し、イギリス人と結婚。広告代理店に勤めていたが、知合いの池田満寿夫が芥川賞を取ったのを期に小説を書き始める。その「情事」がすばる文学賞受賞。

三人の娘に恵まれ、男の女の恋愛についての小説を多数発表。その切り口は鋭く、恋の終わりの描写には定評があった。お料理上手としても知られていて、ご近所に住んでいたひとによるとふつうのおばさん。女性のためのセミナで一度、お会いしたことがある。ゴージャスな装いのマダムだった。この恋愛論は、ミス家庭画報に連載したものを収録している。結婚前に読んでおくとよいと思う。

さて、スゴ本オフの内容だが、今回もほしい本が続出。前々から気になっていた尾崎翠をいただいてきた。

他にも99通りの表現のある「文体練習」

また、坂口美千代のクラクラ日記

そして、ペアで読む坂口安吾の青鬼の褌を洗う女

他にも、死ぬ間際のひとつの望みを叶えるという「MOMENT」

まだまだ紹介が尽きません。
現場から丁寧に実況してくれたスバビタさんのツイッターに感謝です。

ワーグナー最後の楽劇、パルシファルを観てきました

今年2013年は、ヴェルディと、ワーグナーの生誕200年という記念すべき年です。各地で特別プログラムが組まれています。、2月に出かけたパリのオペラ・バスチーユで「ワルキューレ」をみることができました。新演出によるオペラは、愛についてきわだっていたように思います。日本では、何度か観ていたのですが、まるで、違う作品を拝見しているようでした。

日本に帰ってくると、3月から4月にかけて、日比谷オペラ塾が開催されていて、『ワーグナーへの愛』4回シリーズに参加しました。その二回目で「ワーグナー、その愛と死」吉田 真(オペラ研究家・慶応大学講師)が、解説してくださった「パルシファル」。難解だといわれていましたが、ぜひ、みたいと思っていました。

バイロイト祝祭劇場では、2000年以降、新演出に変わったようです。NHKのBSでも放映され、動画もみることができますが、新しい物語のよう。そして、9月にMETライブビューイング・プレゼントに当選し、昨日、5時間あまりの大作「パルシファル」を観てきました。

すべてが予め決められていた運命のように、「パルシファル」で完結するのですね。METの作品は、支援者からの寄附を貰って作っていますから、分かりやすい、そして、美しい。最高の配役で制作されています。今回は、事前学習をきちんとして、DVDもみていました。あとは、どんな演出、どんな解釈をするのか、舞台装置、衣装、そんなものがわくわくするくらい楽しみでした。

「パルシファル」は、清らかな愚か者、これを演ずる歌手は、ビュアで、美しい男がのぞましい。今回のヨナス・カウフマンは、適役でした。

「パルシファル」は、一言でいうなら、journey
この言葉を英英で引いてみるとよくわかります: [N]an act of travelling from one place to another, especially when they are far apart,[V]to travel, especially a long distance

聖槍や、聖杯、儀式が出てくるから、難解のように見えるのですが、シンプルに素直にみていると、それは、自分の名前すら忘れた愚かな若い男が、苦しみや知恵を授かって、戻ってきて、王となる、魂の過程なのです。今回の新演出では、そう感じました。出演していた歌手たちが、この作品は、いく通りの解釈でできるといっていたように、別の解釈の新演出も、もちろん、あると思います。

今作では、舞台を現代に置き換え、衣装も黒と白のシンプルなもの。それだけに、物語の展開は、演ずる人の力量に左右されます。ルネ・パーペ(グルネマンツ)の安定した、そして、誠実な人柄がでている歌い方は、それだけで魅了されます。

なんといってもすばらしかったのは、カタリーナ・ダライマン(クンドリ)。この陰影のある、そして、運命に翻弄される女をみごとに演じきっていました。彼女がいなかったら、舞台の重厚さは、なかったかもしれない。

METオペラビューイングの特徴は、まるでオペラ劇場に座っているかの、臨場感があります。幕間には、出演者のインタビューがあり、また、舞台の入れ替わりや、設備の移動まで、写し込んでいます。指揮者、演出家がそれぞれの立場で、どんな解釈をしているのか、意図があるのかを語り、それを知ってから、次の幕を眺めると、新しい視点をもらったようで、楽しみが加速されます。

キリスト教の色合いの濃いこの作品に、仏教的な所作を加え、神と人との対比をうまくみせていました。今季のMETの中でもすぐれた作品の1つだったと思います。次回は、本当の劇場でみてみたいと、強く思いました。