蕗の葉の佃煮

コロナ禍の中、いままでの生き方を大きく変えさせられる。
千葉市に住み、人形町で江戸のくずし字講座を開催し、美容室は渋谷。東銀座の歌舞伎座には、昼の部、夜の部と一月に2回通い、その合間に千駄ヶ谷の国立能楽堂に行く。夜はイベントがあれば、外苑前や渋谷に出かけていた。

それが何年も続いて、当たり前のように思っていたのが、まん延防止の措置で制限がかかる。人が集まる場所で、マスクなしで話をする危険。東京に出かけるのも、一月に一度か二度になってしまった。

かわりにZoomによる会議、イベント、勉強会が続く。こちらは移動にかかる時間がない分、ぎりぎりまで仕事をしたり、ゆっくりと食事をしたりと、本来の人間の生き方に戻ったような気がしている。

上総の国にうさぎ小屋があって、週末はそこで過ごしているが、家の庭で蕗が採れる。
春先は、蕗の薹を楽しみ、今頃は採れた蕗の葉をさっと湯がいて、一晩おく。
これであくを出し、あとは水を変えてすすぎ、絞ったら、ごま油で炒めていただく。味付けは出汁醤油と削りぶし。後からすりおろしたゴマをかけてもいい。

これが蕗の茎よりも美味なのだ。小分けにして冷凍もできる。長年、蕗は茎だけ料理して、葉は棄てていた。それが採りたての蕗なら、美味しいと教わる。ほろ苦さが春の味わい。

冬の間、身体に溜め込んだものをデトックスする意味でも、春はほろ苦いものが身体にいい。いまの時代、健康に過ごすことが第一だから、江戸の人々のように季節のものをいただく。その季節でしか味わえないものをいただく。知り合いにも差し上げたら、酒の肴になると喜ばれた。

時間はたっぷりあって、家で仕事しているので気分転換にマーマレイドも作る。文旦マーマレイドのあとは、河内晩柑のマーマレイド。甘さ控えめで果肉もいれるからフレッシュで美味しい。ひと手間はかかるが、その分、朝ごはんの楽しみが増える。昔はこのひと手間を惜しんで、高級食材に手を出していたが、今は、季節を楽しみながら、美味しいものをいただこうと思っている。