團菊祭に行ってきました

今年の團菊祭は、いつもと違う。團十郎不在のあと、男伊達をどうするのかと思っていたから、海老蔵も菊之助も頑張っている。菊五郎は一時体調を崩していたが、孫の初お目見えもあって、一幕は出ている。昔、團十郎と菊五郎が張り合っていた頃を思い出すと、時代は変わっていくのだ。

もう一つの目玉は播磨屋さんの登場。團菊祭に出るのは29年ぶりとのこと。この人も孫につられて出てきたのだ。播磨屋さんと音羽屋さんを祖父にもつ、寺嶋和史(菊之助長男)くんも果報者。恥ずかしがって、ご挨拶もできないが、退場の時、手を振ってみせた。

華やかな役者が揃って、顔見せ公演のようである。

福地桜痴 作今井豊茂 補綴
一、鵺退治(ぬえたいじ)

源頼政   梅玉
猪の早太  又五郎
巫女梓   歌女之丞
九条関白  錦之助
菖蒲の前  魁春

菅原伝授手習鑑
二、寺子屋(てらこや)

松王丸   海老蔵
千代    菊之助
戸浪    梅枝
涎くり与太郎  廣松
春藤玄蕃  市蔵
百姓吾作  家橘
園生の前  右之助
武部源蔵  松緑

河竹黙阿弥 作、花街模様薊色縫
三、十六夜清心(いざよいせいしん)
浄瑠璃「梅柳中宵月」

清心    菊之助
十六夜   時蔵
恋塚求女  松也
船頭三次  亀三郎
俳諧師白蓮実は大寺正兵衛  左團次

四、楼門五三桐(さんもんごさんのきり)

石川五右衛門  吉右衛門
右忠太     又五郎
左忠太     錦之助
真柴久吉    菊五郎

夜の部
一、勢獅子音羽花籠(きおいじしおとわのはなかご)
寺嶋和史 初お目見得

鳶頭   菊五郎
鳶頭   吉右衛門
菊之助
初お目見得 寺嶋和史(菊之助長男)

鳶頭    松緑
鳶頭    海老蔵
鳶頭    團蔵
茶屋女房  萬次郎
茶屋女房  秀調
鳶頭    権十郎
鳶の者   亀三郎
鳶の者   亀寿
鳶の者   松也
芸者    梅枝
鳶の者   萬太郎
鳶の者   巳之助
芸者    尾上右近
芸者    種之助
鳶頭    錦之助
鳶頭    又五郎
芸者    雀右衛門
芸者    時蔵
芸者    魁春
世話人   彦三郎
世話人   左團次
鳶頭    梅玉

河竹黙阿弥 作
二、三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)

大川端庚申塚の場
お嬢吉三    菊之助
お坊吉三    海老蔵
夜鷹おとせ   尾上右近
和尚吉三    松緑

鶴屋南北 作
三、時今也桔梗旗揚(ときはいまききょうのはたあげ)
本能寺馬盥の場
愛宕山連歌の場

武智光秀    松緑
小田春永    團蔵
四王天但馬守  亀寿
桔梗      梅枝
森蘭丸     萬太郎
森力丸     巳之助
連歌師丈巴   橘太郎
園生の局    笑也
矢代條介    男女蔵
安田作兵衛   松江
皐月      時蔵

四、男女道成寺(めおとどうじょうじ)
白拍子桜子実は狂言師左近  海老蔵
所化   男女蔵
所化   九團次
所化   萬太郎
所化   巳之助
所化   竹松
所化   尾上右近
所化   種之助
所化   廣松
所化   橘太郎
白拍子花子   菊之助

四月大歌舞伎、千秋楽に行ってきました

歌舞伎の神様というのが、いるのだろうか。偶然読んだ歌舞伎座のメイルマガジン。4月は、染五郎の『幻想神空海』。夢枕獏さんの原作全4巻も揃っている。

スケジュール表を眺めながら、行けるかなと思っていたら、明日が千秋楽。昔から、千秋楽には、何かが起こるといわれている。そして、三階席だが、いつもの八列目が1つだけ空いていた。これは、行くしかない。出かけるまでに予習をと、原作本を取り出した。いつか読もうと積読中だったのだ。一日かかって、2巻目まで読み終えた。登場人物が入り組んでいるので、新作ものは予習したほうがいい。

染五郎の新作ものはなぜか、原作も家にあって、毎回見ている。陰陽師東慶寺花だよりアテルイ、そして今回の空海だ。逸勢役は松也。勘九郎とはまた違って、コミカルさがある。児太郎(春琴)が妖しく、儚げでよかった。米吉もいつにも増して色っぽい。この若さですばらしい。

雀右衛門(楊貴妃)も美しい。この人は襲名披露のあと、先代の雀右衛門になりきっている。仕草や表情がはっとするほど生き写し。芸は伝承するのである。歌舞伎という古典から、新しいことに挑戦する力はすばらしい。続編も楽しみである。

夜の部

一、彦山権現誓助剱(ひこさんごんげんちかいのすけだち)
杉坂墓所 毛谷村
毛谷村六助  仁左衛門
お園     孝太郎
杣斧右衛門  彌十郎
微塵弾正実は京極内匠  歌六
お幸     東蔵

高野山開創一二〇〇年記念
夢枕 獏 原作、戸部和久 脚本、齋藤雅文 演出
新作歌舞伎
二、幻想神空海(げんそうしんくうかい)
沙門空海唐の国にて鬼と宴す

空海   染五郎
橘逸勢  松也
白龍   又五郎
黄鶴   彌十郎
白楽天  歌昇
廷臣馬之幕 廣太郎
牡丹    種之助
玉蓮    米吉
春琴    児太郎
劉雲樵   宗之助
楊貴妃   雀右衛門
丹翁    歌六
憲宗皇帝  幸四郎

FOODEX JAPAN 2016に出かけてきました

幕張メッセで毎年開催されるFOODEX JAPANは、総合食品展示会です。国内、海外の新しい食材と出会う場で、昨年は庄内麩が気に入り、取引を始めました。

今年の全体の印象は、ヨーロッパの結束が際立っていたこと。ヨーロッパ・ブースも中心に位置し、アメリカが縮小気味に比べて、イタリア、ドイツ、フランスなどはパフォーマンスも見事で、目立っていました。

イタリアブースでは、日本国内からシェフを呼び寄せ、イタリア料理の講習、そして試食と続きます。アンケートもあって、答えるとかわいいメモ帳がもらえます。ドイツブースでは、ドイツ人二人による、料理の実演、こちらも出来上がったものを試食できます。なにしろ、よくしゃべる二人に通訳はひとりで、あたふたしています。

■ドイツ風チキンのクリーム煮 (レセピはこちらで補完したものです)
1.  鶏肉400gは、皮をはがし、一口大に切って、塩胡椒し、炒めてブイヨンで煮込む。
2. ホワイトソースをつくり、このチキンを加えてさらに煮込む。チリパウダーも少々加える。味見して、砂糖も小さじ1加える。
3. アスパラ、インゲンを4、5センチに切ってさっと茹で、炒める。
4. 皮をむいたポテトをいちょう切りして、油で炒める。ブイヨンを入れて煮込む。
5. 器にチキンを盛り、アスパラ、インゲンを散らして、上からポテトを並べる。最後に熱々のホワイトソースを注ぐ。

■ドイツ風野菜のカレー煮
1. 玉ねぎをみじん切りし、砂糖を小さじ1加え、油で炒める。そこにトマト1個をすりおろしたもの、さらに100ccのオレンジジュースを加え、煮詰める。ここにカレーパウダー、チリソースを加え、カレー味にする。
2. ベーコンあるいは、ソーセージを炒め、マッシュルームも加えて、炒める。ここにコーン、アスパラ、グリーンピースを加え、炒める。
3. 器にこれらを彩りよくならべ、熱々のカレーソースを注ぐ。ピリリして、甘さのあるカレー味が絶妙のおいしさ。

イタリア館では、カラーの小冊子を配布していましたが、お料理のレセピとしては、一工夫が必要。ドイツ館のダイナミックな実演は楽しかったし、すぐに作ってみたくなります。

後半、かなり歩いて、心地よく疲れて、会場を眺めていると、自分がその場にいるのではなく、なにかの映像を眺めているような気分になりました。それは、大きなパーティの真っ最中。みんな何かを頬張り、グラスを持ち、大声で話し合っている。幸せな時間なのです。食材だけでなく、そこで提供されるサービス、また、そこに集う人が醸し出す幸せ感。 普通の展示会では、味わえない瞬間です。そこに居合わせた全員が感じていたことだと思いました。

 

 

東京創元社 2016年新刊ラインナップ説明会に行ってきました

2014年から始まった、新刊ラインナップ説明会、三年連続で今年も参加できました。

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東京創元社は、守備範囲が広いです。
海外ミステリ、国内ミステリ、ファンタジィ、SF、その他のラインナップ。
担当営業が次々と紹介していく作品、どれも興味深く、全部読んでみたくなります。まだ執筆中の作品、今年後半に出る予定の作品、公開の場所でコミットするわけですから、担当者にとっても、緊張をしいられるはず。

2/19に、亡くなったばかりの、ウンベルト・エーコによる「プラハの墓地」、2/22刊行で紹介されました。これが最後だと思うと本当に残念でなりません。

 

今年は、説明会に登場された作家先生による、ゲスト対抗「ビブリオバトル」がハイライトでした。なにしろ、豪華なゲスト、池澤春菜さん(司会担当)、山本弘さん、藤井太洋さん、北村薫さん、深緑野分さんの五名が、それぞれに持参した推薦本を紹介するのです。優勝は、深緑野分さんで、紹介した本は、「八月の暑さのなかで、ホラー短編集」。深緑さんは、本屋さんで面白そうだからと、手にとって見つけたそうです。

日頃、紙面でしかお会いすることのできない作家の、創作への熱意を聞いているとわくわくします。時代考証も大切で、その時代にはまだ発明されていなかったものを載せないように注意しています。

また、特別ゲストとして、銀河英雄伝説をお書きになった、田中芳樹さんのお話も聞けました。ビクトリア朝の作品を書くときは、紅茶に角砂糖をいれる、と書いて、この当時、角砂糖は存在したのか、と検証するのだそうです。

わたしも気になって調べたら、リバプールの青年実業家、ヘンリー・テートが、1875年、ドイツ人の発明家から角砂糖製造の特許を取得、78年には東ロンドンに角砂糖製造をメインにした新たな工場(現テート&ライル社Tate & Lyle)を建設。

この方が、あのテートギャラリーを作ったのです。ロンドンにいたとき、いちばん好きな場所が砂糖に関係していたなんて、田中先生のお話を聞くまで、気がつきませんでした。

新作ラインナップを聞いていると、自分の過ごした場所、時代、そして、思いなどが交差して、心の中が波立つような思いでした。本が好きなのは、旅をしているからでしょうか。時間や、空間を旅することができる、そんな貴重な体験なのです。

以下、備忘のために気になった作品を載せておきます。

1. ブラック・リバー / サラ.M.ハルス
2. ウィアード / キャシー・アンズワース
3. オーブランの少女 / 深緑野分
4. ショー・マスト・ゴー・オン / 河野裕
5. 亡霊星域 / アン・レッキー

東京創元社のメイルマガジンに登録すると、ワクワクする素敵なことに出会えそうです。お薦めします。

壽初春大歌舞伎の初日、夜の部に行ってきました

12月に京都南座で顔見世興行。お正月は、歌舞伎座で壽初春大歌舞伎というのが、ここ数年の恒例になっています。IMG_0544

オペラも能楽も行きますが、お江戸で、江戸の歌舞伎を見るのが楽しいのです。お正月はやはり、歌舞伎で始まるのが似合っている、と思っています。今年は幸運なことに初日のケチットが取れました。

みんなが待ちに待った初日、この日は、いつにもまして、着物姿の艶やかな女性が多く、見ているだけで正月気分を味わえます。歌舞伎座が新装オープンしてから、着物の方が大変増えました。お正月は、さらにそれが華やかになり、特別な気分になります。

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夜の部の演目は、お正月にふさわしく、踊りあり、武士ものあり、廓もの、恋人の別れと、歌舞伎の楽しい要素がびっしりと詰まっています。

■赤い顔の猩々は、もともと能楽から来ていますが、見ているだけで、お正月気分になれます。

■二条城の清正は、幸四郎と金太郎(染五郎長男、孫)の情愛のこもったやりとりが、祖父と孫が演じることで、二重に心打たれます。命をかけての二条城でのやりとり、清正公らしい実直で、豪胆な仕草、幸四郎にぴったりでした。左団次の家康も心に一物あって、狸親父らしく宜い出来です。

■廓文章の鴈治郎は、姿や仕草が藤十郎にそっくり、親はもうすこし、軽やかでふわふわと演じていますが、新鴈治郎も和物の柔らかさはしっかりと身につけています。芸達者な家系ですね。喜左衛門役の歌六、大人の役者になりましたね。

■片岡直次郎は、初役の染五郎。三千歳役の芝雀がたっぷりとかき口説き、それを受けて、ワルだが、憎めない色男を演じていました。育ちはいいのだが、悪事に足をつっこんだ悲劇のようなものを感じさせます。丈賀役の東蔵、ベテランのいい味を出しています。

壽初春大歌舞伎

夜の部
一、猩々(しょうじょう)
猩々   梅玉
酒売り  松緑
猩々   橋之助

二、吉田絃二郎 作
秀山十種の内 二条城の清正(にじょうじょうのきよまさ)

二条城大広間の場
淀川御座船の場

加藤清正  幸四郎
大政所   魁春
豊臣秀頼  金太郎
井伊直孝  松江
池田輝政  廣太郎
斑鳩平次  錦吾
浅野幸長  桂三
藤堂和泉守 高麗蔵
本多佐渡守 彌十郎
徳川家康  左團次

三、玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋

藤屋伊左衛門   鴈治郎
吉田屋喜左衛門  歌六
阿波の大尽    寿猿
おきさ      吉弥
扇屋夕霧     玉三郎

四、河竹黙阿弥 作
雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)
直侍
浄瑠璃「忍逢春雪解」

片岡直次郎   染五郎
三千歳     芝雀
暗闇の丑松   吉之助
寮番喜兵衛   錦吾
丈賀      東蔵

 

奈良で、鹿に遭遇する

奈良にはどこにでも鹿がいるような気がしますが、違います。法隆寺のある斑鳩の里には鹿はいません。春日大社の参道から、奈良公園、東大寺にかけてが、野生の鹿と出会える場所になっています。

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今回、春日大社から、回りましたが、こちらは、「式年造替」のため、中に入ることができません。二月堂から、東大寺に向かう道は、なだらかな丘のようになっていて、ここが有名な若草山です。

二年前に出かけたときは、イタリア人と同行していたのですが、今回はひとり旅。途中、鹿の写真を撮ったり、木々や山の様子を眺めたりと、ピクニック気分です。二月堂は、ここからの奈良市内の眺望がすてきで、いつか、お水取りに出かけたいと思っています。

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二月堂から、東大寺本堂はすぐなのですが、今回は、奈良公園で、鹿がジャンプしながら駆け寄ってくるのに見とれていて、道を間違えました。 車が一台とまり、中から、女性が降りて、何かを置いてもどりました。すると、遠くから大勢の鹿が飛ぶようにして集まりました。 餌をたべているのです。

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終わると、満足げなようすで、ポーズをとってくれました。 こんなシーンが見られたので、東大寺の大仏様には、次回お会いすることにして戻ってきました。

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京都四條南座「吉例顔見世興行・夜の部」に行ってきました

クリスマスイブの12/24に、京都南座で歌舞伎鑑賞をしてきました。 ここは江戸の世界、しばし、現実を忘れさせてくれます。

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今年の暮れは暖かく、この日も歩くとほんのり汗ばむほど。でも、南座の中の熱気に較べれば、何のことはありません。 毎年この時期に南座の舞台をみていますが、今年の意気込みはいつもと違います。雁治郎さんの襲名披露が、ご当地、京都で締めくくりになるというのが、伝わってきます。

歌舞伎には、役者、演目、そして、襲名披露のような華が大切です。追善歌舞伎興行よりも、幹部役者が揃っての口上、何度聞いても楽しいものです。

信州川中島合戦IMG_0467ss20山本勘助の母越路は、上杉謙信方が、軍師として、勘助を招きいれようとするのが気に入らず、いろいろと難癖を付け、配膳を足蹴にする。老婆でありながら、ありえないことです。

その無礼に対して、吃りの嫁お勝が琴を鳴らしながら、詫びて、代わりに自分を手打ちにしてくれと訴える。そこで、謙信も刀の鉾を収めて思いとどまった。

というかなり難解な話です。越路を演ずる秀太郎が、自然体で天然な老婆を演じます。 歌舞伎の演目でも演ずるのに格が必要な難役です。それを必死でかばうお勝役の時蔵が熱演して、姑を思う心根が見事に表されていました。

 

土屋主税
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渡辺霞亭 作の忠臣蔵外伝のようなお話です。東京大学に霞亭文庫というものがありますが、江戸のものを熱心に集められています。江戸のことがわかっているから、このような武士の心意気を説いた物語が作れたのでしょう。

江戸時代、武士が二君に仕えないというのは、今習っている近世畸人伝にもしばしば登場します。 いまのように転職が当たり前の時代に、ここがわかっていないと話の面白さが伝わらないでしょうね。土屋主税は、本所吉良家の隣に住まいし、討ち入りの当日も騒ぎが、最初は火事かと思ったそうです。実際にはどれくらい協力的だったのか、調べてみると面白そうです。

河瀬六弥役の梅枝、若侍もうまいです。こんな人が江戸にはいたのだろうなあと、見ていました。

討ち入りと、俳諧の師匠をからめて、うまくまとめた作品だと思います。晋其角役の左團次さん、日ごろから洒脱な方なので、ぴったり。木に登ってまで様子を知りたがるところ、みなの気持ちを代表して魅せます。

雁治郎さんの主税は、駄々っ子のようでもあり、また、上品な優しい殿様でもあります。御前といわれて、じっと我慢して、見送りをしないところもかわいいです。こういうさらりとみせる作品も大切にしてほしいですね。

歌舞伎十八番の内 勧進帳
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こちらは、成田屋さんの十八番のひとつ。海老蔵さんの熱演に圧倒されました。 十一月に勧進帳は見たばかりなのですが、こちらのほうが一段と迫力を増していました。にらみも成田屋さんにふさわしく、細かな演技も練習の積み重ねがみえて、驚くばかりのできばえでした。江戸の心意気を関西に伝えてくれて、ありがとうございます。

壱太郎さんの義経も、品があって、風情を感じさせました。これからが楽しみな役者です。

すっかり、感じ入って戻ってきました。来年もまた、来ますね。

 

夜の部

第一、
近松門左衛門 作
信州川中島合戦(しんしゅうかわなかじまかっせん) 輝虎配膳

長尾輝虎    梅玉
勘助妻お勝   時蔵
直江山城守   橋之助
直江妻唐衣   扇雀
勘助母越路   秀太郎

第二、
四代目中村鴈治郎襲名披露 口上(こうじょう)
翫雀改め鴈治郎
幹部俳優出演

第三、
渡辺霞亭 作
玩辞楼十二曲の内 土屋主税(つちやちから)

土屋主税   翫雀改め鴈治郎
侍女お園   孝太郎
落合其月   亀鶴
河瀬六弥   梅枝
西川頼母   寿治郎
晋其角    左團次
大高源吾   仁左衛門

第四、
歌舞伎十八番の内 勧進帳(かんじんちょう)

武蔵坊弁慶   海老蔵
源義経      壱太郎
亀井六郎     市蔵
片岡八郎     男女蔵
駿河次郎     九團次
常陸坊海尊    家橘
富樫左衛門   愛之助

冬の京都の楽しみ方

ここ数年、クリスマスの前後には京都にいる。最初は知り合いのオペラ歌手の第九の公演があったのが始まり。それから、毎年、南座で顔見世歌舞伎をみて、知り合いと会い、お正月前の中休みをしている。

この時期は、紅葉のころと違い、町も人々も普通に暮らしている。さすがに十二月も二十日過ぎると、修学旅行の学生たちもいない。祇園祭のような賑わいはないが、それでも、お正月の準備やら、弘法の市がたったりと、住んでいるひとのためのイベントはある。IMG_0497ss20

今年の京都は暖かい。着物で町を歩くと、寒い思いをしないですむ。人の少ない町を歩くと、たくさんの発見がある。お気に入りの店には、必ず立ち寄るようにしている。

今日は、友人と会った後で、大原に向かった。大原は、四条烏丸と、四条河原町から出ている京都バスに乗って約一時間。 それだけで別の世界が広がる。

大原御陵にお参りしてから、三千院に向かう。ここでは、クリスマスは無縁の世界。日本国、山城の国、大原郷だ。雨の予報だったが、ときおりぱらぱらと来るだけで、なんとか降らずに曇り空のまま。

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お庭を見せているだけで、心が和む。人が少ないのもポイントが高い。いつまでもここに座っていたいとも思うのだ。 悠久のときを過ごす気分だ。

三条通に戻ってきたときは、小雨が降っていた。 お昼時を過ぎて、中途半端な時間に食事をしようとするときは、三条のかつくらに駆け込む。ここは昔、パリに住むイタリア人とよく通った。揚げたてのヒレカツをいただくと元気がでる。

最近は、その帰り道に、八百一のスイートを買って戻る。ザ・ブレッドのパン・ヴァリエがマイブーム。 大丸地下のパン屋さんも大好き。

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三条にはお気に入りの店がたくさんあって、四条まで、歩きながら帰ってくる。なぜ、三条のホテルにしないかというと、南座の歌舞伎が終わって、四条まではバス一本。夜道が怖いのではなく、雨や雪の日に無理をして歩きたくないのだ。

二月に来たときは、本当に雪に閉じ込められて過ごした。食べ物屋さんが近くにある四条は、そういう意味でもありがたかった。明日は、南座の夜の部、夕方までは、お天気しだいだか、どこかに出かけようと思う。

京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行・昼の部」に行ってきました

京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 四代目中村鴈治郎襲名披露」に行ってきました。

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1月の大阪松竹座から始まった鴈治郎襲名披露の締めくくりが京都。鴈治郎さんは、どうしても関西で見たかったので、望みが叶いました。

【玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場】

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山科閑居というのは、雪の降る中、嫁入り支度で、加古川本蔵の女房・戸無瀬が小浪を伴い大星由良之助の住まいを訪ねてくるというあらすじです。それが、玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記というのは、なんだろうと、疑問符が一杯。

玩辞楼十二曲の内
雁治郎が選んだ十二曲のうちのひとつ、とわかりました。

碁盤太平記、わからないのも当然。40年振りの上演だそうです。上演に当たっての苦労などは、扇雀さんのブログを拝見しました。

扇雀さんのお話によれば、

この作品も最初は近松門左衛門の原作に沿う形で上演されましたが渡辺霞亭の手が加えられて原作とは全く違った作品に変化していきました。そこには初代鴈治 郎の工夫とアイデアが凝縮されていますが、全てお客様に楽しんで頂く。また、自分自身が作品の良さをより出すために手を加えていくそして何よりもリアリ ティを目指すといったことから改訂が加えられて来ました。

初代の雁治郎さんもクリエイターだったのですね。偽りの放蕩を重ね、妻、そして、母も縁切りし、家から追い出す。それをみていた吉良家の間者も、大石には仇討ちする本懐なしと、手紙を手渡します。

実はそれも敵方と知って、油断させるために策を設けたこと。下僕岡平は、自らが吉良家の家臣、高村逸平太だと名乗り、最後は碁盤の目を使って、吉良家の屋敷見取り図を知らせます。たしかに忠臣蔵は、太平記の時代になぞらえていました。

息子の主税が父宛の密書を預かり、密かに読んでいると下僕岡平が忍び寄ってくる。今度は文盲のはずの岡平が密書を読んでいるのを主税が見咎める。 これは仮名手本の一力茶屋のパロディ。

最初にのどかに碁を指しているのが、最後にまた碁盤が登場するなど、ここそこに伏線があって、最後にはそれがひとつにまとまるという高度な技は、渡辺霞亭がストーリーテラーだからこそでしょう。

扇雀さんは、昨年の「藤十郎の恋」のような柔らかものが得意だと思っていましたが、大石のような忍を飲み込んだような役柄も似合います。

最後の場面で、明かりを消して、親子の対面、別れを告げるところ、そして、女房りくが傘を差出し、そして、手を引っ込めずにためらっているところ。夫婦の強い愛情を感じました。別れ際が、たっぷりしていて、きれいでした。

同じく、【玩辞楼十二曲の内 心中天網島の河庄】

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こちらは、愛想尽かしで、心中まではいきません。それだけに見せ場は、治兵衛の呼び戻しの演技です。くどくどと、腰は低くで、優しいひとなのですが、腹を立てると手が出る、足が出るという大坂のお人です。

見ているこちらは泣き笑いなのですが、演ずる側は気持ちが入らないとできないと思いました。

雁治郎さんもそのあたりを語っています。

「治兵衛は恋に病い、裏切られて腹を立て、兄にはグチグチ言い訳し、ひとり小春を思い出してしゃべる。お客様にもその世界に入っていただかないと」と話し、型としてではなく、気持ちで動いている、それこそが『河庄』治兵衛なのだ。

わたしは、それを呼び戻しの美学だと思います。普通の歌舞伎は、終わったら、花道を通って帰るだけ。それが呼び戻されて、また、芝居を始める。そこに華がなければ、単なるくどさに終わってしまいます。しょうもない奴やけれど、まあ、話を聞いてやるかという気分にならないと続きません。このたっぷり感は、関西にいると普通なんですが、お国柄なのでしょうか。

夜の部も楽しみです。

昼の部

近松門左衛門 作
渡辺霞亭 脚色

第一
玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場

大石内蔵助      扇雀
下僕岡平実は高村逸平太 愛之助
大石主税       壱太郎
医者玄伯       寿治郎
大石妻りく      孝太郎
大石母千寿      東蔵

第二
義経千本桜吉野山(よしのやま)

佐藤忠信実は源九郎狐  橋之助
静御前         藤十郎

第三
玩辞楼十二曲の内 心中天網島
河庄(かわしょう)

紙屋治兵衛    翫雀改め鴈治郎
紀の国屋小春   時蔵
江戸屋太兵衛   愛之助
五貫屋善六    亀鶴
丁稚三五郎    萬太郎(時蔵の次男)
河内屋お庄    秀太郎
粉屋孫右衛門   梅玉

第四
河竹黙阿弥 作
新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

叡山の僧智籌実は土蜘の精  仁左衛門
平井保昌    左團次
侍女胡蝶    孝太郎
渡辺源次綱   進之介 (我當の息子)
坂田公時    男女蔵
碓井貞光    萬太郎
卜部季武    国生
巫子榊     梅枝
番卒藤内    愛之助
番卒次郎    橋之助
番卒太郎    扇雀
源頼光     梅玉

歌川国芳・肉筆画展に行ってきました

12/7 月曜日の夜、表参道から歩いてすぐの「本の場所」で開催された《歌川国芳・肉筆画展 いとうせいこう × 河治和香トークイベント》に行ってきました。

国芳は、浮世絵師として有名ですが、その彼が残した版本ではなく、肉筆画ということに興味があり、また、いとうせいこうさんのファンなので、このトークイベント楽しみでした。

国芳は、面倒見がよかったらしく、有名になった弟子たちもいっしょに暮らしていたようです。肉筆画は、スポンサーからの依頼で、やはり日銭になるからと描きに出向いたのでしょう。

《めりやす》ということば、伸び縮みするというよりは、滅入りやす、の意味だったのではないか。お二人のお話は、まるで江戸から生きていたかのように、真実味に溢れています。四方に作品が展示されていて、それを見ながらお話を聞くという、贅沢な環境で一時間半があっという間でした。