秀山祭九月大歌舞伎、初日昼の部を見てきました

吉右衛門が開催する秀山祭、菊之助も松緑も出るということで、初日に出かけてきました。


出し物は、吉右衛門の得意とする一條大蔵譚。つくり阿呆という演技が見事。特に檜垣では、阿呆のまま、観客を魅了させます。この人、日頃が謹厳実直の性なので、その落差が面白いのです。

今回は、吉岡鬼次郎・お京が、菊之助・梅枝といつもの気持ちの合った二人で、さらに、一條大蔵譚と鬼次郎のやりとりが、信頼された主従として、ぴったりでした。五月の團菊祭に引き続き、この義理の親子は呼吸もあって、頼もしいと思ってしまいました。常盤御前役の魁春も上出来。この人らしいなよなよした中に、きりりとした風情がよかったです。

初日だけに所作がまだ決まっていない人もいる中、この菊之助・梅枝のコンビ、そして、一條大蔵譚と鬼次郎の息の合ったところが、光っていました。

佐藤忠信の染五郎は、碁盤片手の立廻りで、大変そうです。碁盤のもち方に一工夫でしすね。荒事に挑戦するのも、大切なこと、ゆくゆくは幸四郎を継ぐ人なのですから。

太刀盗人は、又五郎と錦之助のやりとりが面白い。万兵衛を真似て九郎兵衛が半間ずつ遅れて舞う舞など、思わず笑ってしまいます。二人の技量があっていないとできない作品。そういう意味で、この二人はぴったりでした。

 

【昼の部】
右田寅彦 作
松岡 亮 補綴
一、碁盤忠信(ごばんただのぶ)

佐藤忠信           染五郎
塩梅よしのお勘実は呉羽の内侍 菊之助
右平太            歌昇
左源次            萬太郎
万寿姫            新悟
三郎吾            隼人
小車の霊           児太郎
浮橋             宗之助
壬生の小猿          桂三
摺針太郎           由次郎
宇都宮弾正          亀鶴
江間義時           松江
番場の忠太          亀蔵
横川覚範           松緑
小柴入道浄雲         歌六

岡村柿紅 作
二、太刀盗人(たちぬすびと)

すっぱの九郎兵衛     又五郎
田舎者万兵衛       錦之助
従者藤内         種之助
目代丁字左衛門      彌十郎

三、一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)
檜垣
奥殿
三代目中村吉之丞襲名披露

一條大蔵長成     吉右衛門
吉岡鬼次郎      菊之助
お京         梅枝
八剣勘解由      吉之助改め吉之丞
鳴瀬         京妙
茶亭与一       橘三郎
常盤御前       魁春

「【開館50周年記念特別展】山種コレクション名品選Ⅱ 浮世絵 六大絵師の競演 ―春信・清長・歌麿・写楽・北斎・広重―」ブロガー内覧会

山種美術館は、まだ茅場町にあったときからのお気に入りです。恵比寿に移転して、さらにバージョンアップした気がします。そんな美術館で、今回、ブロガー内覧会が開催されるということで、台風接近かもしれないという中、出かけてきました。
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この内覧会、なんと写真撮影ができます。フラッシュは不可ですが、かなりの接写もありで、それも楽しみでした。日頃から、江戸のくずし字講座を主宰しているので、江戸について関心があります。その当時の風俗や、絵師たちが描く、切り取られた日常というのをふんだんに拝見できて、幸せでした。

歌川広重の描く【東海道五拾三次】はあまりにも有名ですが、今回の展示のその保存状況もたいへんよく、初摺(しょずり)であったと思われます。特に扉がついていて、こちらには、《東海道五十三駅続画 保永堂》と記されています。こんな展示も初めて見ました。
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広重の東海道五拾三次では、【箱根】が一番好きです。険しい山並み、美しい色彩、鮮やかな風景です。 これをじっくりと眺めることができて、幸せでした。
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広重の東海道五拾三次の【原】では、富士山が台紙から突き抜けています。このような展示も初めて見ました。普通はこの部分が隠れてしまっているのですね。
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美人画も充実しています。喜多川歌麿のゆったりとした品の良い、【青楼七小町 鶴屋内 篠原】。当時の髪型もよくわかります。
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こちらが鳥居清長になると、いきなり八頭身のすらりとした姿に描かれます。【社頭の見合】、この着物の柄ゆき、髪型、みているだけで、わくわくしますね。

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こちらの会場には、東洲斎写楽も三枚展示されています。【八代目森田勘弥の駕篭舁鴬の次郎作】、色彩も鮮やかです。
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特に、特別ゲストとして、國學院大学の藤澤紫先生の作品解説がすばらしく、浮世絵の見方の基本および、中級の知識を教わりました。こういうレクチャのあと、再度作品を見ることができて、理解も深まるし、見所もしっかりとわかります。
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浮世絵が西洋の絵画にも大きな影響を与えたという話は知っていますが、
ゴッホが次のような作品を作っています。元になる広重の【名所江戸百景 大はしあたけの夕立】と比べてみると、広重の大はしは、雨が一部交差して、大雨なのに川面は静か。それに対して、ゴッホの水面は波立っています。日本の美意識の違いなのでしょうね。

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会場では、これらの展示に因んだ和菓子が五種類、用意されています。有料ですが、今回は内覧会ということで、わたしたちもお味見させていただきました。
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幸い台風もそれて、充実したプログラムに、満足して帰って来ました。また、機会がありましたら、参加させていただきたいと思います。関係者の方々、ありがとうございました。

国立演芸場で、落語を聞いてきました

夏に弱いはずなのに、京都の祇園祭を皮切りに、結構出かけています。特に夏の夜の落語鑑賞は最高の娯楽。同期生の主催するイベントに参加させていただきました。

今回は、東銀座でオペラビューイングのチケットを予約し、そこから都営バス [都03] 四谷駅行で、三宅坂に向かいます。築地の停留所は東劇ビルの前。少し築地側に戻ると、屋根付きの停留所があります。こちらでは、東京駅、新橋駅行きがあって便利です。三宅坂までは17分、地下鉄を乗り換え、半蔵門から歩くよりずっと楽しい。

夜の部は貸切で、18時開演ですが、最初は前座、この方は、プログラムの捲りをしたり、座布団を裏返したりと、忙しいです。続いて、二つ目。この辺りから、笑いを取るというか、面白くなってきます。落語が続くと飽きないように、曲芸や奇術などがあって、最後のオオトリが、柳亭市馬(りゅうてい いちば)。柳家小さんの弟子で、落語協会会長なんですね。

今回の出し物は『らくだ』。長屋でも鼻つまみ者のらくだというあだ名の男が、河豚に当たって死んでいるのを、兄貴分の男がみつけて、葬儀を行ってやりたい、しかし、金はない。そこに通りかかった屑屋、つかまって、いろいろと手伝いをさせられる。ケチで有名な大家からも酒と料理を出させて、こき使う。

そんな人情噺を聞かせてもらいました。最後まで聞きたかったが、屑屋が酒を勧められて、酔って人間が豹変して、今度は兄貴分を怒鳴りつけるというオチ。こういうのを見ると、独演会でたっぷりと聞きたい気になるから不思議です。

石山源氏と、源氏供養を見てきました

7月の国立能楽堂は『能のふるさと・近江』の特集企画でした。その最終日の演目が、《源氏供養》。なかなか上演されることのない曲です。京都に行く前に日程を確認し、チケットも取れました。

当日は、源氏にちなんで、絽の一つ紋に牡丹の帯、帯揚げは撫子で出かけました。能楽の前には狂言があるのですが、今回は、箏曲「石山源氏」。こちらは、続けて演奏されることは稀なことのようです。なにしろ、能楽堂の舞台に五つの琴が並ぶのですから、何が起きるのだろうかと、どきどきします。能楽の囃し方と較べ、五つ紋の黒留袖の女性が登場し、唄、琴、三弦、笛と奏でるのは華やかで、心躍る世界です。

この箏曲「石山源氏」、今年が石山寺の本尊の如意輪観世音菩薩が、33年に一度の御開扉ということで、特別に企画されたようです。リンク先に歌詞が載っていますが、ほんとうに流れるように美しい。今回は、 山田流箏曲家家元の山勢松韻が唄い、最高級の供養になったのではないでしょうか。

続いて、源氏供養。紫式部が能楽の題材になっているのというのも珍しく、そして、こちらも上演されることが珍しい曲。源氏が主題なので、格調高く、優美で、平安のみやびな世界を想像させます。

近江の石山寺に詣でたので、あの風景も浮かび、話にすっと入っていけました。石山寺で、雅楽を聞いたのも、こちらの演目をみることができたのも、源氏のおかげ。ありがたくもあり、みんなに感謝したい気持ちで帰ってきました。

 

シテ方宝生流・武田孝史氏インタビュー

祇園祭、後祭の記 その1 大船鉾

今回は三年目にしてようやく、大船鉾がとりを飾る、後祭を見ることができました。その1は、大好きな大船鉾からです。

7/19の朝、四条新町通りの大船鉾さんにご挨拶にでかけると、以前からお世話になっている松居会長が体調をくずして、新しい会長に代わったとのこと。少しお話して、鉾建てを見せていただきました。
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今年の大船鉾は、新たに龍頭をつけて、さらにパワーアップしています。

もともとあった龍頭は、1864(元治元)年に発生した禁門の変の大火で焼失していて、保存会ではこれを復活させようと龍頭の制作を決定。研究者から、かつての龍頭は、当時活躍した九山新之丞(くやましんのじょう)、新太郎親子の作ではないかとの意見が上がり、東山区の瀧尾(たきのお)神社拝殿にある新太郎作の木彫の龍を参考に、2年がかりで新調した(京都新聞 2016年06月18日引用)。

7/19  17時半に大船鉾を見に行くと、神事が始まっていました。龍頭は、東山区にある滝尾神社からの寄進です。
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宮司が祝詞をあげた後、この鉄の先に鈴のついた棒を三人が担いで、歩き出します。後ろからは神輿、そして、宮司と雅楽を演奏する人たちが続きます。これは古式ゆかしい祇園祭の音曲なのだそうです。そして、町内を三往復して後、ようやく龍頭を乗せます。二人がかりでようやく乗ると、歓声があがりました。

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今回の後祭、雨は一切降りませんでした。龍神さまは、雨を降らせる神様なのになぜだろう。思うに、龍頭がいちばんふさわしいところに収まって、非常に満足しているからではないか。保存会の会長さんたちとそんなお話をしました。

これが四条通を進む姿は壮大で、感激します。龍神さまも喜んでおられると思います。後祭のおおとりにふさわしい姿です。 またこちらの鉦は高い音がでるのですが、こちらもいずれ鉾が復興するだろうと、以前に作ってもらって寄付されたものだそうです。多くの人の思いが復興を実現させたのですね。

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石山寺で、如意輪観世音菩薩を見てきました。

石山寺では、平成28年(2016年)3月18日(金)から、33年に1度の本尊『如意輪観世音菩薩』の御開扉を行っているという新聞コラムをみて、京都に来ているので、出かけてきました。
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7月18日(月・祝)は法要のため、一般のご参拝の方は12時30分まで内陣へお入りいただくことができません、といわれ、せっかくでかけてきたのと思ったら、本堂には入れ、如意輪観世音菩薩も拝見することができました。

この日は、ちょうど、ご開扉中日法要に当たり、朝から雅楽の演奏が聞こえ、舞を舞う人の練習風景など、珍しいものを見ることができました。帰り道、参道を歩くお練りがあり、巻い手の装束から、源氏物語に出てくる青海波と思ったら、その通りでした。演目は『源氏物語』に登場する「蘭陵王」「青海波」。 これも観音様のご利益だと思います。

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三十三年ぶりのご開帳というのは、伝承するぎりぎりだと思います。昔舞った舞人が新しい人に伝え、彼がまた、次の世代の人に伝えるわけです。本堂の内陣で、雅楽の音曲にあわせて練習していた人たちも、ここで舞うのは初めての経験なのでしょう。朝一番で滋賀までやってきた甲斐があったというものです。

併せて同時開催の『石山寺と紫式部展』も見てきました。紫式部が奉納した大蔵経が展示されており、マダム・ムラサキの直筆をみることができます。 一千年以上も前に、紫式部がここに籠もり、源氏物語の着想を練ったというお話もとても真実めいています。境内はしずかで、清らげでした。

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石山寺は、 本堂は国の天然記念物の珪灰石(「石山寺硅灰石」)という巨大な岩盤の上に建ち、これが寺名の由来ともなっています。 平安から平成のときを旅しているような気分でした。

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今回の滋賀への旅行、京都地下鉄・京阪大津線1dayチケットを使いました。こちらは地下鉄全線に乗り放題ですので、京都で夜のお出かけにも便利です。お買いになるときに、パンフレットも併せてもらうと、こちらの石山寺も含めて拝観料も団体割引になります。京都地下鉄からは、奈良斑鳩の里チケットもあり、事前に調べておくといいと思います。

この日はお昼に琵琶湖のレストランでイタリアンをいただき、午後は三井寺に詣でて帰ってきました。三井寺はまた、別途載せます。

大阪松竹座で歌舞伎を見てきました

京都に祇園祭で来ている間、日中の暑さを避けて、毎年、大阪松竹座で歌舞伎をみています。京、大坂の芸能に親しむ絶好の機会です。

今月の出し物は、五代目中村雀右衛門襲名披露ということで、一段と充実していました。
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同じ雀右衛門襲名披露といっても、上方では出し物が違います。
『小さん金五郎』ははじめて見ました。孝太郎の色っぽい芸者もいいですが、児太郎が若い芸者の艶っぽさを見せていて、はっとさせられます。

『夕霧名残の正月』は、藤十郎さんが出てくるだけで、空気が変わります。芝居の楽しさがわかりますね。雀右衛門さんの夕霧も可憐でよかったです。

『与話情浮名横櫛』の仁左衛門さん、若々しくていいとこのぼっちゃんでうまいのです。ここでの雀右衛門さん、前半はすこし固くなっていました。もっとあだっぽくて、見ている人をとろかすような粋さ、色気があるといいです。なにしろ、馴れ初めの場なんですから。後半の源氏店はしっぽりとよかったです。

考えてみれば、襲名と同時に父が相手役だった幹部の方々と、共演するのですから、その心配りはいかほどかと思います。あと少しですから頑張って欲しいですね。

この日は高校生の団体が三階席正面にいて、こんな色っぽい話を高校生歌舞伎鑑賞教室として実施する学校はすてきだなあと思いました。隣の席の女性とお話したのですが、地方からではないか、大坂ではありえないといっていました。高校生のみなさんも歌舞伎の楽しさがわかったのではないでしょうか。

さて、京都から来ていてるので、昼夜と続けてみていました。夜の部も見ています。

『菊畑』も役者が揃っていて楽しかった。口上は幹部たちの心のこもった挨拶、お引き立てを賜りますようにとどなたも頭をさげて応援しています。これを見られるだけでも大坂に来た甲斐がありました。

『鳥辺山心中』、雀右衛門の持ち味の可憐で薄倖な雰囲気がとても似合っています。死ぬしかないと追い詰められていく二人、心中ものでも特に心が惹かれます。あっという間の八時間でした。関西歌舞伎の真髄に触れた思いで戻ってきました。

昼の部

大森痴雪 作
戸部銀作 補綴
今井豊茂 演出
一、小さん金五郎(こさんきんごろう)

金屋橋の金五郎    鴈治郎
芸妓額の小さん    孝太郎
太鼓持六ツ八実は木津屋六三郎   亀鶴
芸妓大村屋のお糸   児太郎
奈良屋権左衛門    松之助
千草屋女房お縫    寿治郎
千草屋娘お崎     廣松
女髪結お鶴      吉弥
広瀬屋新十郎     錦之助

今井豊茂 脚本
二、夕霧名残の正月(ゆうぎりなごりのしょうがつ)
由縁の月

藤屋伊左衛門    藤十郎
扇屋夕霧      芝雀改め雀右衛門
太鼓持鶴七     廣太郎
同 亀八      廣松
扇屋三郎兵衛    友右衛門
扇屋女房おふさ   秀太郎

三世瀬川如皐 作
三、与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)
木更津海岸見染の場
赤間別荘の場
源氏店の場

伊豆屋与三郎   仁左衛門
お富       芝雀改め雀右衛門
鳶頭金五郎    橋之助
番頭藤八     松之助
赤間源左衛門   團蔵
蝙蝠安      歌六
和泉屋多左衛門  梅玉

夜の部
一、鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
菊畑

奴虎蔵実は源牛若丸    梅玉
奴智恵内実は吉岡鬼三太  橋之助
笠原湛海         亀鶴
申し次腰元白菊      宗生
皆鶴姫          孝太郎
吉岡鬼一法眼       歌六

二、五代目中村雀右衛門襲名披露 口上(こうじょう)

芝雀改め雀右衛門
幹部俳優出演

岡本綺堂 作
三、鳥辺山心中(とりべやましんじゅう)

菊地半九郎     仁左衛門
遊女お染      芝雀改め雀右衛門
坂田市之助     橋之助
仲居お雪      竹三郎
若党八介      松之助
お染父与兵衛    團蔵
坂田源三郎     鴈治郎
遊女お花      秀太郎

岡村柿紅 作
四、芋掘長者(いもほりちょうじゃ)

芋掘藤五郎    橋之助
友達治六郎    錦之助
緑御前      児太郎
菟原左内     宗生
魁兵馬      種之助
松ヶ枝家後室   友右衛門

2016年祇園祭、前祭の記

なぜこんなに京都に惹かれるのか、そして、暑い七月にわざわざ日程をさいて京都に向かうのか、すべては祇園祭のためです。IMG_2354S

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もう十年以上も前に、mixiの京都コミュでお世話になった方々がいて、誘われました。当時は、浴衣もひとりで着ることができず、五条で着付けをしてもらい、そのままタクシーでお茶会の会場へと向かいました。

その後は、知り合いと待ち合わせたり、家族や友人を同行したりと、毎年、必ず出かけはります。観光客としてではなく、長いことそこに住んでいるような気持ち出歩いていると、たくさんの出会いがあります。籤改めの文箱の開け方、渡し 方の練習風景や、お囃子の公開練習、本番前の練習は、ゲネプロとしてオープンされている。 家の中の様子がわざわざわかるような屏風祭りがあったり、水を 買ったかえりに警備の方に親切にされたり、この時期は人々が心を開いて寄り添うような感じがします。

祭りというよりは、神事が好きなのです。長刀鉾の生稚児さんは、この期間、地面を歩くことはならず、男衆が世話をします。山鉾に登るのも男衆の肩に背負われて進みます。神様の使いだから、稚児さんが乗ると雨も止みます。

三年前から、巡行の日のもうひとつの神事、八坂神社の御神輿も見るようになりました。

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御神輿は三基あるのですが、いつも錦の神輿に付いて歩きます。花見小路では、角々で御神輿に手を合わせる人々がいて、神様が乗ってはるからなあと思います。御神輿を担ぐという言葉がありますが、文字通り楽しい。辛いことや嫌なことを忘れさせてくれます。そういう時間が大切なのでしょうね。 神事は後祭の終わるまで続きます。

二期会名作オペラ祭 『フィガロの結婚』を見てきました

フィガロの結婚は、最初にみたオペラです。新宿区に住んでいたとき、区民のためのオペラ鑑賞があり、上野の東京文化会館で三日連続鑑賞。こちらも二期会でした。 それから何度となく、見ているお気に入りのオペラです。

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今回の宮本亜門演出の 『フィガロの結婚』、2011年に引き続き、拝見しました。進化しているのが小気味よく楽しめました。

 

『フィガロの結婚』は、人間の心の動き、愛と哀しみが、本当にうまく表現されていて、喜劇なのに、哀しみもあふれている。だから、何年たっても、いろいろな演出で、今の人の心に訴えるものがあるのだと思います。

見たのは7/16の部。歌い手さんたちが、揃っていてすばらしかった。オペラはチームワークの芸術、ひとりだけ目立っていてはだめなのです。この日の、アルマヴィーヴァ伯爵 与那城 敬さん、イケメンなのに、スザンナからは冷たくされて、彼女に惹かれているという役をうまく表現しています。 伯爵夫人 増田のり子さん、アリアがすばらしい。こんな一途な妻を放っている夫がひどすぎると、味方したくなります。

スザンナ 髙橋 維さん、お茶目で気がつくチャーミングな女性。みんなをひっぱっています。フィガロ 萩原 潤さん、両親との対面の場が、一番楽しめました。男らしいようで、くよくよするところも面白い。

ケルビーノ 青木エマさん、こんなかわいい少年を乙女たちが愛してしまうのは当然。伯爵は男には興味がなくてよかったですね。ドン・バジリオ 高田正人さん、音楽教師のはずが想定外に活躍して楽しめます。存在感がありました。マルチェリーナ  石井 藍さん、気絶するところがうますぎる。母親の顔への変化がいいです。

みんながひとつになって、すばらしい作品を作り上げていく様子が見えます。音楽だけでない、生の、そして一期一会の楽しみ。 モーツアルトもびっくりでしょう。次回も楽しみです。

配役
アルマヴィーヴァ伯爵   与那城 敬
伯爵夫人          増田のり子
ケルビーノ         青木エマ
フィガロ           萩原 潤
スザンナ          髙橋 維
バルトロ          長谷川 顯
マルチェリーナ      石井 藍
ドン・バジリオ       高田正人
ドン・クルツィオ      升島唯博
アントニオ         畠山 茂
バルバリーナ       全詠玉
花娘1            辰巳真理恵
花娘2            加藤早紀

オペラ全4幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

指揮: サッシャ・ゲッツェル
演出: 宮本亜門

会場: 東京文化会館 大ホール
公演日:
2016年7月15日(金) 18:30
16日(土) 14:00
17日(日) 14:00
18日(月・祝) 14:00

日本文学全集12 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 刊行記念トークイベントに行ってきました

日本文学全集12 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 刊行記念トークイベント@東京堂ホール
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池澤夏樹個人編集の日本文学全集、前評判も高く、斬新、ユニーク、愉しいとの書評もあり、気になるところから集めています。久々の全集物、河出書房新社の社運をかけた事業でもあります。

個人的には、昔々、河出書房の日本文学全集を親に揃えてもらって、源氏物語から読みましたので、今回の江戸の俳諧シリーズには大変興味がありました。幸運なことにこちらのイベントに参加することができ、昨日7/5、神保町まで出かけてきました。

涼しい一日だったので、もっと時間をとって、この辺りを歩き回ればよかったなあと少し後悔。それくらい、ネットの書店を愛用している自分には目新しく、出会いもありました。

写真は右から、松浦寿輝さん、辻原登さん、長谷川櫂さん。江戸を代表する歌人、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の選と解説、訳を担当しています。

人形町の江戸のくずし字講座でも二年余りにわたり、「おくのほそ道」を芭蕉直筆版で習ったので、それがどう訳されているのか、どきどきしながら拝見しました。リズム感があり、自然な流れで、江戸人が読むような平易な日本語になっています。お見事でした。松浦さんは詩人でもあり、言葉のもつセンスが光っているのです。

芭蕉は、古典などの教養を裏に、雅な世界を自然に置き換えて表現している。神格化されすぎているが、ハイブリットな人ではなかったのか、今回担当して、瑞々しい感情に驚かされたと松浦さんは語っています。みなさま、ご自分の担当された歌人より、それ以外のひとの批評が多く、一体化した江戸人集合のように見受けられました。

辻原さんは芭蕉が嫌い、蕪村の作品をまとめるとき、俳句には季語があるから、季節でまとめてみようと思ったそうです。春夏秋冬、ただそれだけでは、物足りないので、もう一度春を締めくくりに持ってきた。それが「春風馬提曲」です。

「春風馬提曲」はこちらで初めて読みました。漢詩と、漢詩読み下し文の混ざった斬新、新鮮な前衛詩だと辻原さんは記しています。こちらも従来の解釈とは違い、商家に勤めた女中が故郷に帰るのではなく、妓家に勤めた女が帰るとしています。すると、これまでの解釈では不自然だった部分が見事にわかるのだとそうです。こういうことは、教わらないと気づくこともありませんから、それだけでのこのトークイベントに参加してよかったと思いました。

一茶は、古典も知らず、俗物に徹して句をつくったひとと、長谷川さんは語ります。俗なものにばらけていくのが、近代の特徴で、そういう意味で、近代化をしたひとなのだそうです。一茶から近代詩が始まる、面白いです。

近代、明治以降、郷愁を追求していて、それを先取りしたのか蕪村。蕪村は俳人だけでなく画家でもあります。近世畸人伝などを読んでいると、蕪村は池野大雅と同じ画家です。作られた句が絵画的と言われるのも、基本がそこにあるからと思いました。

辻原さんのいう、近代の詩人は郷愁のものばかり。どこから来て、どこに行くのかがわからないのが近代。それに比べ、芭蕉ははっきりとどこから来て、どこに行くのかが記されている。

松浦さんが、芭蕉は西行を参照して旅をする、中国の古典も引用する。旅の中に、日本文化の厚みが刻みこまれている。それが天明期になると、狂歌が盛んになり、雅なものでなく、俗なものが流行る。今がまさにそんな時代だと思われます。だから、古典を読んで、もう一度学びたくなるのですね。

三人のお話は息があって、ツッコミもあって、まだまだ聞いていたい気がしました。

俳句を作ることはできなくても、詩を書くことはいいなあと、久しぶりに思いました。心の動き、感性のひらめきを残すには、現代人には詩が似合っていると思います。そんなさまざまな思いを胸に戻ってきました。ありがとうございました。