銀座オペラ ガラコンサートに行ってきました

GINZAというだけで、特別な響きがあり、たくさんの意識が集まる場所。そのヤマハホールで開催される、銀座オペラ・ガラ・コンサートに行ってきました。

数年前から開催されているので、いまやメンバ全員が知合いというか、お話したことのある方々。当然ながら、内容の濃いものになることは予想していました。歌い手が五人、そして、オーケストラをすべて一台のエレクトーンに集約して、一人で演奏される清水のりこさん。彼女がいなかったら、この空間でオペラの曲を歌うことはできなかったでしょう。

個性豊かな五人が、プログラムには載っていない曲を歌ったり、だれが歌うのかわからないというミステリアスな会。これも彌勒忠史さんというカウンターテナーが参加されているからです。カウンターテナーとメゾソプラノは音域が似通っていて、というか、どちらも相手のパートが歌えるというすばらしい才能。
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そんな出演者たちがオペラの名曲を思い思いに歌うのですから、このままずっと終わらなかったらいいのと思ってしまいます。きっと厳しい練習が繰り広げられたと思いますが、みなさま、明るく、楽しく、オペラっていいよね。気になる歌は全曲オペラで聴きましょうと、歌い続けてくれます。

小川里美さんの仮面舞踏会、オペラのあの暗く怖い場面が浮かんできます。歌声と映像が記憶の中にセットされているのですね。小川里美さんと鳥木弥生さんの蝶々夫人も、ずっと待ち続けた中で、ぼうっと灯がともるような場面が思い出されます。みたことのあるオペラが多くうれしかったです。ドンカルロも見たいと思いました。

高田正人さんのトスカも、あの歌い上げる正統派テノール、すてきですね。与那城敬さんの闘牛士の歌で、力強く響かせるバリトン。歌声は男の武器です。それぞれの力が重なり合って、濃い舞台となりました。ぜひ、パート2も続けてください。幸せな気分で帰ってきました。

 

開催日 2018年11月16日(金)
時間 開場18:30  開演19:00
会場 ヤマハホール

公演概要 声と一台のエレクトーンで奏でる至高のオペラの世界

出演
小川里美 (ソプラノ)
鳥木弥生(メゾ・ソプラノ)
高田正人(テノール)
与那城敬(バリトン)
彌勒忠史(カウンターテナー)
清水のりこ(エレクトーン)

演奏曲目
第一部
ビゼー:歌劇《カルメン》より「闘牛士の歌」  与那城敬
ドリーブ:カディスの娘たち   小川里美
モーツァルト:《フィガロの結婚》より「恋とはどんなものかしら」彌勒忠史
ビゼー:歌劇《カルメン》よりハバネラ「恋は野の鳥」 鳥木弥生
ヴェルディ:歌劇《仮面舞踏会》より「あの草をつみとって、私があなたのそばにいます」小川里美・高田正人

第二部
オッフェンバック:歌劇《ホフマン物語》より舟歌「美しい夜、おお、恋の夜よ」鳥木弥生・彌勒忠史
プッチーニ:歌劇《トスカ》より「星は光りぬ」 高田正人
ヘンデル:歌劇《リナルド》より「私を泣かせてください」 彌勒忠史
マスネ:歌劇《ウェルテル》より手紙のアリア「ウェルテルよ、誰がいえましょうか」 鳥木弥生
アンドルー・ロイド・ウェバー:《レクイエム》より「ピエ・イエス」小川里美・彌勒忠史
ヴェルディ:歌劇《ドン・カルロ》より「あなたは王妃を愛している! おそれなさい、偽りの息子よ」鳥木弥生・高田正人・与那城敬

エレクトーン演奏  清水のりこ

 

本日のアンコール曲
ヴェルディ 『ドン・カルロ』より 友情の二重唱   高田正人・与那城敬
プッチーニ 『蝶々夫人』より 花の二重唱  小川里美・鳥木弥生
ブェルディ 『椿姫』より 乾杯の歌  全員

国立能楽堂 9月開場35周年記念公演

国立能楽堂開場35周年記念公演ということで、出かけてきました。チケットはわずか7分で完売。プラチナチケットになりました。

翁(おきな)は、能でも、狂言でもない別格に扱われる祝言曲。 最初に翁を演じる正式な番組立て翁付といい、正月初会や祝賀能などに演じられる。翁・千歳・三番叟の3人の歌舞からなり、役は白色尉、三番叟役は黒色尉という面をつける。

地謡は橋掛かりに座ります。面箱を持った千歳が登場し、中から表を出して着けて舞います。初めてみた演目で、古式豊かな風情を感じました。

能、井筒は何度かみていますが、今回は宗家のシテ。在原業平の妻である、紀有恒の娘が昔を思い出し舞い、そして、業平のかたみの冠をつけた、水に映る自分の姿をみて、夫のことを思い出すというお話。哀しさや時の移り変わりまで感じられて、夫婦の情愛にジーンとなりました。

《開場35周年記念公演》

翁(おきな)  金剛 永謹(金剛流)
松竹風流(まつたけのふりゅう) 大藏 彌太郎(大蔵流)

能  井筒(いづつ) 物著(ものぎ)  観世 清和(観世流)

能  乱(みだれ) 置壺(おきつぼ)   片山九郎右衛門(観世流)

八月納涼歌舞伎を見てきました

歌舞伎座の八月は、三部作。演目をみて、これは全部見るしかないと思いました。

夜の部は、家族と、そして、一部、二部はまとめて一人で鑑賞。
第一部の花魁草(おいらんそう)。初めて見ました。幸太郎役の獅童さんと、お蝶の扇雀さんの息がぴったりあって、芝居を愛する人の出世に、邪魔してはいけないという女心が哀しいほどよかったです。年の差でもなく、心根が優しいから遠くから見守るしかない。二人の世話をする隣の夫婦に幸四郎さんと梅枝さん。贅沢な組み合わせで、芝居の奥行きが違います。

龍虎、親子の戦いが見事です。染五郎さんの成長が楽しみ。

七之助さんのおたかの薄情ぶりと、おっかさんの獅童がうますぎる。獅童さんの老け役もなかなかでした。

第二部
東海道中膝栗毛の奇想天外な展開に、ついていくのがやっと。幸四郎さんのだらしない男ぶりや、お子たちの賢そうなこと。宙乗り四人で勤めますというのが、本当でした。小鬼の市川右近の天才ぶり、ひさびさ、子役にうっとりさせされます。閻魔大王もキリストも出演して、いそがしい。笑いました。

第三部
通し狂言 盟三五大切
幸四郎さんが真面目な浪人から、次第に悪につかれてくる様が怖いほどよかったです。必死になってお金を集めているのに、その主人の顔がわからなかったという悲劇。いまでも通じるものがありました。怖さと美しさがないと、舞台が引き立ちません。

暑い中、でかけたのに、満足して戻ってきました。

 

第一部
一、花魁草(おいらんそう)北條秀司 作・演出、
大場正昭 演出
お蝶   扇雀
幸太郎  獅童
座元の妾お八重  高麗蔵
客孝吉  松江
米之助女房お松  梅枝
お糸       新悟
客平助      虎之介
小料理屋女房   梅花
客音松      吉之丞
小料理屋亭主   松之助
達磨問屋主人五兵衛  市蔵
菊岡女将お栄   萬次郎
座元勘左衛門   彌十郎
百姓米之助    幸四郎

二、龍虎(りゅうこ) 大野恵造 作
龍  幸四郎
虎  染五郎

新作歌舞伎
三、心中月夜星野屋(しんじゅうつきよのほしのや)
小佐田定雄 脚本 今井豊茂 演出
おたか    七之助
星野屋照蔵  中車
藤助     片岡亀蔵
母お熊    獅童

第二部
十返舎一九 原作より
杉原邦生 構成
戸部和久 脚本
市川猿之助 演出・脚本
またいくの こりないめんめん
再伊勢参!?
一、東海道中膝栗毛(とうかいどうちゅうひざくりげ)
市川猿之助・中村獅童   早替り
中村七之助・市川中 車

松本幸四郎・市川猿之助  宙乗り
市川染五郎・市川團 子
相勤め申し候

喜多八       猿之助
大岡忠相/獅子堂獄之助   獅童
女医羽笠/鬼塚波七     七之助
釡桐左衛門/暗闇の中治   中車
閻魔大王          右團次
舞台番竹蔵/司録      竹松
茶屋女お稲/妻彌美     新悟
五日月屋亭主藤六/司命   廣太郎
五日月屋女房おさき     米吉
赤鬼            橋之助
青鬼            福之助
舞台番虎吉         虎之介
大鬼            鷹之資
伊之助妹お園/女歌舞鬼   千之助
中鬼            玉太郎
黄鬼            歌之助
伊月梵太郎         染五郎
五代政之助         團子
小鬼            市川右近
三毛猫           鶴松
むく犬           弘太郎
町名主伊佐久        寿猿
後妻お紀乃         宗之助
大家七郎兵衛        錦吾
阿野次郎左衛門/泰山府君  片岡亀蔵
住職門海/基督       門之助
弥次郎兵衛         幸四郎

二、雨乞其角(あまごいきかく)  伊藤鷗二 作
其角     扇雀
船頭     歌昇
同      虎之介
芸者     新悟
同      廣松
其角の弟子  橋之助
同      男寅
同      福之助
同      鷹之資
同      千之助
同      玉太郎
同      歌之助
同      鶴松
大尽     彌十郎

第三部
四世鶴屋南北 作
郡司正勝 補綴・演出
織田紘二 演出
通し狂言 盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)
序 幕

二幕目

大 詰 佃沖新地鼻の場
深川大和町の場
二軒茶屋の場
五人切の場
四谷鬼横町の場
愛染院門前の場

薩摩源五兵衛     幸四郎
芸者小万       七之助
家主くり廻しの弥助  中車
ごろつき五平     男女蔵
内びん虎蔵      廣太郎
芸者菊野       米吉
若党六七八右衛門   橋之助
お先の伊之助     吉之丞
里親おくろ      歌女之丞
了心         松之助
廻し男幸八      宗之助
富森助右衛門     錦吾
ごろつき勘九郎    片岡亀蔵
笹野屋三五郎     獅童

大阪松竹座で、高麗屋襲名披露公演を見る

夏にわざわざ京都にいくのは、祇園祭もありますが、大阪松竹座に通うこと。京都からは阪急で一時間足らず、身近な劇場です。

今年の松竹座は高麗屋襲名披露公演、新幸四郎さんが頑張っていました。演目は、昼の部が、河内山と勧進帳。夜の部は女殺油地獄。幸四郎と猿之助の絡みが楽しみでした。大阪歌舞伎はたっぷりなので、一日に昼夜の鑑賞は無理で、二回に分けて通います。今年は、仁左衛門さんの富樫がよくて、結局三回も通いました。

廓三番叟
菅原伝授手習鑑 車引
天衣紛上野初花 河内山
歌舞伎十八番の内 勧進帳

菅原伝授手習鑑 車引、三つ子の兄弟のうち、桜丸と梅王丸を扇雀と、雁治郎が演ずるのがうれしい。関西ならではの配役です。悲劇の前のもうひとつの山場、ふたりの心情が深く掘り下げされているのがよかったです。

歌舞伎十八番の内 勧進帳
こちらは、歌舞伎座の襲名披露でも見ましたが、仁左衛門さんの富樫とのやりとり、まるでスーパー歌舞伎のように、飛んだり叫んだりして、まるで違う出し物でした。仁左衛門さんの迫力、そして、それに立ち向かう幸四郎。二人のやり取りをみていると真剣勝負のような気がします。一度では物足りず、チケットがあるということで、三日後に再度拝見しました。本当のすてきでした。

夜の部
元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿
二代目松本白鸚 十代目松本幸四郎 襲名披露 口上
女殺油地獄

御浜御殿綱豊卿は、歌舞伎座でも何度か見ていますが、今回の仁左衛門さんと中車さんの緊迫のやり取り、そして、壱太郎さんのお喜世が可憐でよかったです。せりふが多いので、役者の力量が試されますね。

女殺油地獄は、若い二人の転げまわるような演出に、新しい時代を感じました。近松も理解していると思います。大阪で、江戸の役者が演ずる大阪物をみるのもすてき。後からじわじわと怖さが来ます。

京都祇園祭で、前祭を楽しむ

今年の夏は少し異常。東京も34度超えとか。京都は元から暑いので、どんよりした暑さが籠もっています。それでも宵山は熱気があって、暑ささえ楽しんでいる若い人たちでいっぱい。三連休の最後の日なので、どこもにぎわっていました。

そして、7/17は山鉾巡行の日。もう何年になるでしょうか。mixiコミュでお誘いがあって、京都マスターの教える京都の愉しみ方というのをじっくりと、味わいました。暑さは苦手、人ごみは嫌いという自分が、この時期にずっと通い続けているのは、きっと最初の出会いがすてきだったからと思います。IMG_5866

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暑さ対策として、四条の歩いて戻れる場所に泊まる。日中は出歩かない。疲れたら昼寝もする。ホテル選びは結構重要。二月か、三月から予約を始めます。そして、大阪の松竹座に歌舞伎を見に行く。阪急の駅に近いと、大阪はすぐです。

今年はその前の週に大雨が降ったのに、今回の祇園祭は晴天続き。これはあくまで私感なのですが、大船鉾に龍頭が納まって、心地よく四条を駆け巡る。それで、竜神様が満足して、雨を降らして困らせるのをやめたのではないか。物事が収まる場所に収まると平和が生まれます。

祇園祭は大人だけの世界ではなく、子どもたちも活躍しています。ちまきをうる女の子たち、そして、巡行に参加する男の子たち。みていて、うれしくなります。

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毎年見ていると、いろいろな変化が楽しめます。晴れているので、前懸・胴懸にはいちばん最高のものを使っています。雨の日だとビニールが掛かったのを覚えている方もいると思います。そういう意味で今年はいちばんよい、山鉾をみられたのではないでしょうか。山鉾の案内はこちら

占出山には歌仙の歌と作者の姿が縫い付けられています。さて、どの歌をご存知ですか。晴れているからこそ、こんな写真を撮る余裕があります。IMG_5991s

最後は船鉾。舳先に金色の鷁をつけています。鷁(げき)とは、中国で、想像上の水鳥。白い大形の鳥で、風によく耐えて大空を飛ぶといわれ、船首にその形を置いて飾りとしたとのことです。

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最後まで見終わって、四条通をみると、山鉾渋滞が起こっていました。

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本来なら、博物館に陳列しているような山鉾が通りを歩くのですから、それだけでも偉大です。これから鉾町まで約二時間あまり、本当に頭が下がります。そして、神事はこれだけではないのです。夕刻、八坂神社での神事のため、早めにお昼を食べて、ホテルで休息します。

 

 

夏の京都を着物で楽しむ

毎年、祇園祭に京都に出かけています。最初の頃は、洋服で出かけて、京都に着いたら、浴衣を着ていました。綿の浴衣は、どんなに上等なものでも、洗うと白ちゃけて、3年が限度。幸田文さんも書かれていましたが、浴衣を外で着るのは2年が限度だそうです。

それから単の着物を持参したのですが、その頃は着物のことがよくわからず、今なら、四月でおしまいにするような結城紬の単を着て、汗だくになったりと、苦労がありました。その後、夏着物を知り、夏大島や、夏塩沢を取り寄せてみると、その軽さ、着心地にびっくり。いまでは、往復も着物で出かけています。すると荷物が少なくて楽しいです。

夏の京都を避ける意味でも、大阪松竹座に歌舞伎を見に行くので、それに合わせて、絽の着物も二枚、持参します。こちらは軽くて薄いので、何枚持っても大丈夫。今年は、友だちにもあうし、フレンチのディナーも予定しているので、九日間の逗留に何を持っていくのか、頭を悩ませます。去年は持参した小千谷縮、あまり出番がありませんでした。

ホテルの中は冷房がよく効いているので、はおりものもあるとべんり。こちらは大判スカーフで代用して、ホテル内使用のTシャツと、パンツも持参します。

肌襦袢も絽の生地で手作りしました。綿のごわごわしたものに比べて、軽いし、汗をかいてもすぐに飛びます。足袋は白足袋。下駄でも、足袋を履いていると疲れません。白足袋は上等なもの、普段用と用意。足袋を洗うブラシと、吊るすパチパチも持参。ホテルの風呂場に毎日、吊るしておきます。半襟は、多分、途中で洗って、付け替えると思います。絽の長襦袢に絽の半襟は、柔らかい生地なので、つけるのも簡単。ソーイングセットは必須ですね。

祇園祭には雨が付き物。雨天両用の日傘と、本格的な雨の日用と二本用意します。今年も水分補給しながら、炎天下は避け、楽しんでこようと思っています。

今年の夏の対処法

今年は梅雨明けが早く、そして六月から、夏が始まった。涼しい日もあったが、大部分は酷暑。夜も遅くまで暑さがこもっている。

そんな夏の過ごし方、いくつか工夫していることがある。家は南に面していて、大きな窓があるのだが、夏の間は雨戸を閉めきりにしている。これで直射日光が入らず、温度が上がるのを抑えている。冷房は29度設定。少し動くとうっすら汗が出る温度。それでも、外から戻るとほっとする。室内は扇風機も併用。一方向に風を送ることで、空気の流れを作る。

京都の暮らし方で、時間帯で、打ち水をしたり、窓を開けたりする話を読んだことがある。太陽の動きに合わせて、こちらも対処するのだ。夕方は、西側の雨戸を閉める。カーテンは遮光カーテンと普通カーテンの二重にする。

朝は6時前、夕方は6時過ぎに庭に水を撒く。これが打ち水効果で夜も涼しい。窓を開けたり閉めたりと手間はかかるが、電気を無駄なく使いたいのだ。夜、10時半過ぎれば、涼しい風が吹き込んでくる。千葉の最低気温、最高気温などもチェックしながら冷房を入れるタイミングを考える。

あの東関東大震災を経験してから、ずいぶんと意識が変わったように思う。

日生劇場で、ドン・ジョヴァンニを観る

モーツァルトのオペラは悲劇の中に喜劇があって、見ている人は、その時の感情や気分で、それを哀しみや同情とみることもできるし、一方で舞台の上で演じられている一つの物語と、冷ややかに見つめることもできる。

オペラ劇場に集う人々は、どんな思い、あるいは思惑で望んでいるのだろうか。今回の「ドン・ジョヴァンニ」、土曜日の午後公演で、若い女性が多くて驚く。これは私の個人的な感想なのだが、ドン・ジョヴァンニ役の歌手は、かっこいい男性が演じないと、すべてが嘘くさくなる。

忠臣蔵の六段目で、お軽は、夫勘平のために、一文字屋に身売りするのだが、この勘平が色男でないと、話は成立しない。菊五郎や仁左衛門のような二枚目が演ずるものなのだ。

ドン・ジョヴァンニが、不誠実ではあるが、魅力的な色男だからこそ、ドンナ・エルヴィーラが押しかけていくのだし、ドンナ・アンナも誘惑されそうになって、逃げ出すのだが、婚約者のドン・オッターヴィオには、物足りなさを覚えている。今回のニコラ・ウリヴィエーリは、そういう意味でも完璧な配役である。蛇足ながら、フィガロの結婚の伯爵は、あまりにいい男だど、喜劇の要素が消されてしまう。こちらは長身だけが取り柄の人でいいのだ。

今回の演出なのだが、ドンナ・アンナ役の小川 里美さんが際立って、存在感があった。普通は、ドンナ・エルヴィーラが全面に出ていて、ドンナ・アンナは、悲劇の人、そして、優しいだけのドン・オッターヴィオに物足りぬ思い抱いている人、という印象である。だが、今回は違っていた。ドンナ・アンナは、こんなに目立っていた人だったかしらと思うほどである。小川 里美さんの歌唱力はすばらしく、きちんと自分の立ち位置がわかっている。彼女がドン・ジョヴァンニに襲われなかったら、そして、父親が娘を助けるために、闘い、殺されなかったら、ドラマは始まられない。サッカーで例えると、得点を入れるためのアシストである。最初の10分で、すでにゴールを決めていたのかもしれない。それほど、彼女の憤りは激しかった。理不尽なことに闘う、婚約者も巻き込んで闘うという姿勢がはっきりしていて、これは初めての経験だった。

ドンナ・エルヴィーラ役の佐藤 亜希子さんも素晴らしい。気品あふれた表情で、要所要所で、まだ、ドン・ジョヴァンニを思いきれない女心を感じさせる。喜劇の要素もたっぷりで、うまい役者だと思う。

ゼルリーナ役の清水 理恵さんも実にいい。こんな可愛い女に男は惚れてしまうのだろう。自分にはない要素なので、余計に羨ましい。姿も声も可愛くて、ドン・ジョヴァンニが、なんとか手に入れようともがくのもうなづける。

レポレッロ役の押川 浩士さんも、この下僕に徹していて、楽しい。今回、気づいたのだが、最後の夕食の場面で、騎士長の銅像がやってくるとき、最初にみたドンナ・エルヴィーラが悲鳴をあげ、その次に確かめにでたレポレッロが恐怖の叫びをあげるのだが、そのすぐ後で、旦那様、外に出てはだめです。玄関を開けてはだめです、と必死で止める。あんなにひどい目にあっていて、なぜか主人思いで不思議でならなかった。だが、ドン・ジョヴァンニは、気位が高く、天邪鬼。行ってはならないと言われると、素直に従わずに、出て行く。それを知っていて、レポレッロが、親切心をだしたのではないか。

チームワークもいいし、みんなの実力も競り合っていて、見ていて満足度の高いオペラだった。このグループは今週末7/7、横須賀でも上演する。

藤原歌劇団公演 NISSAY OPERA 2018
モーツァルト作曲 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』全2幕
(イタリア語歌唱・日本語字幕付)
総監督:折江 忠道
指揮:ジュゼッペ・サッバティーニ
演出:岩田 達宗
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2018年6月30日(土)14:00開演

【キャスト】 6月30日(土)
ドン・ジョヴァンニ    ニコラ・ウリヴィエーリ
ドンナ・アンナ      小川 里美
ドンナ・エルヴィーラ        佐藤 亜希子
ドン・オッターヴィオ        小山 陽二郎
騎士長          豊島 祐壹
レポレッロ             押川 浩士
ゼルリーナ             清水 理恵
マゼット         宮本 史利

びわ湖で、ワルキューレを見てきました

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びわ湖ホールで、「ワルキューレ」を見てきました。昨年の「ラインの黄金」に続く二作目。京都からは、地下鉄東西線で浜大津まで、そこから乗り換えて三つ目の石場下車。歩いて5分です。びわ湖を見ながら、オペラを聴くというのは、異国風ですてき。オペラハウスも海外のようです。
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五年前にパリ・バスチーユでみた、「ワルキューレ」は不条理な愛の物語でした。この新演出はどう表現するのだろうかと、楽しみでした。

3月4日 日曜日 14時から開始

この日は、日本人だけのプログラム。それがチームワークも良く、歌唱もすばらしいのです。日本人だけで、指輪ができる時代になったのですね。物語は新演出ですから、パリ・バスチーユに似ています。でも、パリほど、愛の対比をするのではなく、もっと物語の基本から見せてくれます。男と女が出会って、逃げて、そして男は殺され、女が残される。冬の場面から、春が訪れ、二人にも春の恵みがやってくる。愛の季節の始まり。この辺りの情景の変化は、パリで見たものととても似ていました。ヨーロッパの人々にとって、春の訪れは、生命の息吹なのでしょう。

ジークムントは優れた英雄、それに対して、ジークリンデは、汚れた女、あなたの愛を受けるにはふさわしくないと訴えます。それでも二人は愛すことを止められず、戦いで決着をつけようということになりました。ヴォータンは、もとより、ジークムントを勝利させることは考えていません。彼は刺されて殺され、剣も粉々にされてしまいます。

二人の愛の印を宿した女は、そのことを知ると、どんなことをしても、その子を産み落とそうと決意します。ともに死を願っていたのに、こんどは生きようとするのです。

ヴォータンは、フリッカに頭が上がらず、ジークムントを討ち果てました。その怒りを娘たちに向けるのですが、それは最愛の娘との別れを意味していていました。最後にブリュンヒルデが眠る山に火をつけ、炎に包まれます。この結界を破るのがジークフリート、来年が楽しみです。

ワルキューレは何度見ても発見があります。その演出の解釈ごとに新しいドラマが生まれ、新しい感動があります。今回も、わざわざ来てよかったと思えるほどのすばらしい舞台でした。

京都の大丸で買えた、ふたばの豆大福を楽屋に差し入れ、終演後は、知合いの小川里美さんとお話ししてきました。来年は、いよいよジークフリート、こちらもでかけなくちゃと思います。

指 揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
演 出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ

4日 出演者

ジークムント 望月哲也
フンディング 山下浩司
ヴォータン 青山 貴
ジークリンデ 田崎尚美
ブリュンヒルデ  池田香織
フリッカ 中島郁子
ゲルヒルデ 基村昌代*
オルトリンデ 小川里美
ワルトラウテ 澤村翔子
シュヴェルトライテ 小林昌代
ヘルムヴィーゲ 岩川亮子*
ジークルーネ 小野和歌子
グリムゲルデ 森 季子*
ロスワイセ 平舘直子

*…びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

管弦楽:京都市交響楽団

参考リンク
究極の重厚長大オペラ「リング」 日本人に受けるワケ 2017/9/25

紅天女@京都観世会館

京都は不思議な町です。四条のあたりは大勢の観光客がいるのに、東西線で東山に着くと、そこは静かな町が広がっている。今年は、顔見世のかわりに観世会館に通います。

この日の出し物は、紅天女。あのガラスの仮面の中に出てくる物語を国立能楽堂の企画で新作能として、披露し、それを今回、京都で初演する、というわくわくするようなお話。

あらすじ

一つの伝説がありました。かつて、戦乱と天変地異で世が乱れたとき、一真という仏師が、千年を経た梅の霊木より天女像を彫り、世の乱れを鎮めたといいます。そして再び災いが世を覆ったとき、一人の仏師がその幻の天女の像を求めて旅に出ます…。

今回も演能のまえに、作者の美内すずえさんによる解説があり、それによるとこの話はまったくの創作だとおもっていたら、京都の嵯峨野にある大黒天がそのような言い伝えをもっているといわれたという。聞いてみるとそんなこともあるのかもしれないと思いました。

内容は夢幻能の世界で、この世とあの世を行き来するような軽いめまいを覚えます。西の人と東の人が争っていて、大きな災害があるとき、二つの世界は仲良く助けようと考えるわけです、そして、仏も救済に現れる。天女というのは天からの使者。われわれに伝えようとしているのでしょう。

梅若 六郎玄祥演ずる紅天女、匂うような美しさですが、哀しみも秘めている。初めてみた作品でしたが、とてもわかりやすくそして、素直に心に入ってきました。