本棚に本を並べるだけで、ほれぼれする

三階の壁一面に配置した本棚に、本を並べてみた。昨年10月に参加したスゴ本オフ以来、未読の本が部屋のあちこちに積み上げられている。知合いは、禁密林という措置で、本を増やさないようにしたり。あるいは、本を段ボールに詰めて処分するなどして、本を増やさない工夫をしていた。

そんな中、どうかしようと迷いつつ、階段や箪笥の上に積み上げてあった本ども。並べてみると、ほれぼれとする。こんなにも読んでいない本があったのか。これまでの一年分の在庫、主に未読の本の全貌が明らかになった。美しいのだ。当たり前だが、本の装幀家というプロがいる。出版社の意向、著者の考え、そんな中で火花を散らしながら、造り上げられた芸術作品。本の中身は文芸だが、装幀はアート。

並んだ本を眺めながら、人は、こんな単純なことで幸せになれるのかと、思う。電子版書籍では味わうことにない、美術鑑賞。だから、大型書店にわざわざ足を運ぶのだろう。

持っているものがわかったから、今度は読書の時間を増やそう。10月から、新しいことが始まりそう。

10月から新学期と考えてみる

学校を卒業して、仕事の単位が、1月から12月の括りになっている。ビジネス的には普通だが、生活する上では、ちょっと不便だ。日本には、季節の変化があるから、やはり4月から9月までの前期と、10月から3月までの後期という二部制で考えると、すっきりうまくいく。

暑い時、あるいは寒い時、部屋の窓を開けて、大掃除はしたくない。9月末なら、衣替えに合わせて、部屋の模様替えも楽しくできる。というわけで、今週の二日間、集中して片付けることにした。モノを捨てる、手放すというのが基本。収納はあまり考えずに、持っているものを減らす。

何かに行き詰まったり、新しいことを始めるには、持っているものを半分くらいにすると、なぜかうまくいく。空いた場所に、よい気が流れてくるのかもしれない。お買い物が大好きだから、モノは自然と増えていく。モノに囲まれた生活は、疲れも加速する。壁一面に何かが並んでいるよりも、何もない空間が実は贅沢なのだ。

最初に捨てるときは、かなり迷う。これは正常。感謝して、手放そう。だんだん慣れてくると、自分なりのルールが確立される。片づけがスムーズにできるようになる。

【七つの基本ルール】

1. 似合わない洋服は手放す 
2. 買ったときの価格は考えない
3. 悩んだら、着てみる。いちばんのお気に入りと較べて,幸福感を計る
4. 流行があるから、3,4年をメドに手放そう。一生ものといわれるのは、着物くらいだ。
5. いつか着ることがあるかも、と考えない。来年にはもっとすてきなモノと出会うだろう。
6. お気に入りのモノに囲まれた生活を考える
7. モノに使った金額は、自分への投資である。ハズレもまた必要経費だ。 

そして、当然ながら報告書も必要である。これから、同じことを繰り返さないために、対策も考えよう

【モノを増やさない対策】
1. 洋服は、似合う色とデザインをだけを、よく考えて買う
2. クオリティがよい、有名デザイナーだからと買わない。自分に似合わないものは結局は使わない。
3. 自分のサイズがセールになったからとすぐに買わない。同じ色、同じ材質を在庫していないか確認する。
4. 同じものを色違いで買わない。黒と白とか、茶と紺とか。例外はソックスくらい。
5. しまう場所を固定して、スペースに空きがでたら、買って補充する
6. タグを付けたまま、ビニールに入れたままにしない。すぐに使える状態にして、その季節に活用させる。
7. 予算を決めて、その中で買い物をする。欲しいものがすべて買えるわけではない。

書いてみると、当たり前のことばかりなのだが、これまで30年くらい、考えずに突っ走っていた気がする。ワンルームマンションが買えるくらい、使っているはず。海外旅行が趣味で、外資系に勤めていたときは、二年置きに家族で欧州に出かけた。あれも自分への投資だろうと、思いたい。

ただひとついえるのは、ある時期、ブランドものに浸るのも大切。本店に出かけてみて、店員さんたちとの会話を楽しむ。そういう時期があって、シンプルライフに転向するのは楽しい。ムダもまた、文化だから。節約だけの人生はつまらない。自分が納得して使うことは、問題ない。洋服に使う人,車に費やす人、宝石が趣味の人、ワインにかける人、それも楽しい人生。

人生は実は、何度でもやり直せる。そのことを知っている人は幸いである。新学期から、何を始めるのか、何を止めるのか、それもあなたの人生。誰かに強制されるのではなく、自分が選び出すのが人生だから、好きなものに囲まれて、気持ちよく過ごしたいと思うのは当然のことだ。

国立能楽堂で、羽衣を鑑賞する

羽衣はなんどか、見ているのだが、脇正面で鑑賞したのは初めてだった。シテの動きがよくわかる。特に橋懸かりからの動きが美しかった。能楽は、退屈だとか、眠くなるという人が多いが、大人になって、寂しさ、哀しさを知るようになると、それなりにわかるようになる。

序破急というリズムがあるから、最後まで、序の舞いではないのだ。扇をかざすようになって、舞台が転換する。衣装も美しいが、舞いが変化するのを楽しむのもいい。気持ちよく眠ってしまっても、それも鑑賞の一部だと思えばいいのだ。

生死を分け合うひとときのつかの間の休息としての、能楽と、晴れの場としての能楽は、少し違う。戦乱の中で生まれて,洗練された芸術になったが、演ずるのはどろどろした人間模様だ。この世では満たされることのない生を、供養することによって、昇華させていく。

古文書講座の先生から、井原西鶴の好色一代男と、能楽のたとえを教わった。好色一代男では、世之介は主人公なのだが、後半は出てくる遊女たちがシテ役で、彼は旅の僧のようなワキ役なのだという。なかなか、面白い例だと思った。

今回、ちょっと観劇したのは、能楽堂の座席に液晶画面があって、字幕が流れていたこと。聞き取りづらい台詞も、ここに表示されるのはうれしい。日本語、英語と切り替えられるようになっていた。

■2012年9月21日(金)
狂言 口真似(くちまね) 野村又三郎(和泉流)
能   羽衣(はごろも)盤渉(ばんしき) 金井雄資(宝生流)

国立能楽堂で、能楽体験講座、そして宝生能楽堂で、能楽4番鑑賞

9月は、能楽月間。9/7に佐渡草刈神社で、杜若を見て、9/14は、国立能楽堂で能楽体験講座。この後、9/15に宝生能楽堂、五雲会で、能楽4番も堪能。最後は9/21に国立能楽堂で、羽衣を鑑賞する。

能楽が大好きなのは、いくつかの理由がある。その優雅な舞、太鼓、大鼓、小鼓、笛などによる音曲が、非日常を超えて幽玄の世界へと導いてくれる。閉塞感漂う、いまの世の中にぴったりの伝統芸能だ。能楽は死者との対話、植物などが霊になって登場する。

平家の公達が多いのは、滅び行く人たちだから。政治や権力の主流にある人は、登場実物には出てこない。不遇な最後を遂げた若者が、いちばん共感を得るのではないか。人の思い、情念のようなものが、僧侶の読経や、供養によって、浄化される。最後まで、どろどろとするのではなく、必ず、救いがある。

今回、久しぶりに4番もみて、心地よい疲労に包まれている。昔の人は、こういう楽しみ方をしていたのだ。江戸城でも、将軍は能楽を楽しんだはず。大名や将軍家になったつもりで、鑑賞すると、またひと味違う。今岸ではない、だが、あちらの世界からの使者との、交流。そして、対話。滅びた人たちは何を語るのだろうか。

戦乱の日々がつづく世に、ひととき、自分とそして失った仲間や家臣のことを思い出したのではないだろうか。能楽の楽しみは時空を超えたところにあるような気がする。

■五雲会番組  2012年9月15日 12時から18時45分まで (敬称略)

能「龍田」(たつた) シテ 和久 荘太郎

狂言「狐塚」(きつねづか) シテ 山本 則俊

能「通盛」 (みちもり) シテ 渡邊 荀之助

能「班女」 (はんじょ) シテ 水上 優

狂言「左近三郎」 (さこのさむろう) シテ 山本 東次郎

能「是界」 (ぜがい) シテ 東川 尚史

銀座で、トスカを見る

プッチーニのオペラ、トスカはあまりにも有名だが、そのハイライト公演をエレクトローンの伴奏でわすが三人で演ずるというのは、大きな冒険。それに挑戦して、かなりの手応えが得て、さらに進化した再上演があった。幸運にも初回も見ているので、そのすごさが伝わってくる。

銀座ヤマハホールは、一階、二階合わせて333席。こじんまりとしたすてきなホールだ。今回はチケットは完売している。
トスカ役は小川里美さん、美人で歌唱力があり、情熱的な歌姫にはぴったり。トスカ役が美人だと、物語が必然性を帯びてくる。彼女のためなら、死ねるとか,彼女をこの手を抱くためになんでもする、という男心が自然に理解できる。

トスカの恋人、カヴァラドッシ役は高田正人さん。恋人に対する誠実な、そして熱い思いが伝わってくる。白い衣装もよかった。特に今回は、サンタンジェロで歌う、アリア、星は光りぬ E lucevan le stelle がすばらしく、涙が出てしまった。

二人を追いつめる警視総監スカルピア役は、与那城敬さん。二枚目が演じると、本当に凄みが出る。トスカを我がものにするために、何でもやるぞという執念、そして、隠された愛、または、情念のようなものが伝わってくる。この人が恐怖を与えないと、物語は平坦になってしまう。

三人が三人とも、重責を抱えていて、微妙なバランスをとりながら、せめぎ合いして、ドラマは進む。悲劇なのに、ときおり、笑いが出る。哀しみと歓びは裏表の関係なのだ。ホールが小さすぎると感じたのはわたしだけだろうか。

そして、忘れてはならないのは、エレクトローンを自在に操る清水のりこさん。彼女はこの壮大なドラマを一台の楽器で織り上げていく。繊細で、大胆で、すべての音色をひとりで担当する。

終わった後にツィッター上でも、出演者たちが興奮冷めやらぬまま、今回のオペラの感想を言い合うのも楽しい。文句なく、今年一番の出来だったと思う。

三人で演じて、ここまで魅せることができるのかという、驚き、発見。何もかもに感謝したい。そんなすてきな時間を分け合うことができてよかった。次回もこの三人での挑戦、楽しみにしている。

人間って日々変わっていくものなのだ

去年と同じことだけしていればいい、ということになったら、退屈で死んでしまうだろう。毎日、新しいことが待っているから、わくわくしながら生きていけるのだ。

最近では、読むべき本もうず高く集まり、眠る時間が惜しいくらい、いろんなことが待っている。

今年も佐渡に、草刈神社の奉納能で来ているが、今年違うことは、海の風景を撮っていること。二泊するうちの一日は自由時間があるから、お天気さえよければ、浜に出て、海と雲と空が溶け合っているのを見ることができる。

中学生の頃、キヤノンの一眼レフを与えられ、写真部に入ったのだけれど、ぜんぜんモノにならなかった。そのうち、デジタルカメラが台頭し、銀塩カメラは使わなくなった。昔はよく、下手の横好きで撮っていたのに、それすら忘れている。

ブログを書くのに、写真が少なすぎといわれたが、挿絵のようにいれるのは苦手。そんなわたしが佐渡の海景色を載せているのだから、一年前には想像もつかない。

海景色を撮るには、宿屋から歩いて浜に出る。そして、海風に当たりながら、人生について、自分の生き方について、ブレがないかを考えてみる。海は思索の場所なのかもしれない。

「子育てに必要なことはすべてアニメのパパに教わった」を読みました

現在、オーストラリア、ブリスベンにお住まいの柳沢有紀夫さんの新著、「子育てに必要なことはすべてアニメのパパに教わった」を取り寄せて、一気に読んでしまいました。柳沢さんとは、Facebookを通して、ときどきコメントを入れるネットの知合いです。一度もお会いしたことはないのですが、その人柄に引かれて、著作を読んでみたいと思ったのです。

この本の要旨を一言でいうなら、【子育てを楽しんでやろうね】、ということではないでしょうか。わたしの少し前の時代は、『スポック博士の育児書』がバイブルでした。小児科医の松田 道雄先生の、「私は赤ちゃん」、「私は二歳」、などという本にもお世話になりました。他には、ソニーの井深大さんの「幼稚園では遅すぎる」など。新生児を抱えて、急に熱を出したりして、心の支えになるものが欲しかったのだと思います。

アニメパパ(こういう短縮形をお許しください)に出てくるパパは、よく知っている人だったり、見たことがないアニメだったり、さまざまでした。そんな中、すてきだと思ったのは、第何話に出てくる、こういう話だからと、出典を明らかにしている点。あとからDVDなどを取り寄せて、追体験ができます。

どのパパも基本は、子どもを愛しています。放任のようでも、しっぽや根っこは掴んでいます。愛があるから、厳しさがいじめにならないのですね。それぞれの章の格言のようなものも、簡潔でわかりやすい。これだけをぱらぱらとみてから、章を読み直すのもいいいかも。

うちのアニメ時代に育った娘の旦那さまに進呈しようと思います。彼はもうすぐ二歳になる男の子と日夜格闘中。子育ての教科書にぴったりです。次の作品も期待してしまいますね。

「リー・ミンウェイ」によるギャラリートークに行ってきました

ニューヨーク在住で台湾出身のアーティスト、リー・ミンウェイ(李明維)の日本初個展「澄・微」(Visible, Elusive)を開催。その作者「リー・ミンウェイ」によるギャラリートークがあり、参加しました。

最初、想像していたのはギャラリートークなので,実際の展示物の解説かと思ったら、まるで違いました。リーがこれまで行なってきたプロジェクトについて、丁寧な説明が始まったのです。

彼のアートは、他者とのコラボレーションによって成り立っているといいます。たとえば、スリランカから、一枝の菩提樹を切り取って、それをオーストラリアに移植する。の菩提樹というのは、お釈迦さまが、悟りを開いたといわれている木が、弾圧により、倒され、焼かれてしまう前に、お姫様が一枝折って、スリランカに伝えたといわれている、由緒あるものです。これには実現まで4年もの時間がかかったそうです。

アーティストというのは、自我の強い人と思われがちですが、リーは、穏やかで、そして、内面は強い意志を持っている人だと思いました。

■リー・ミンウェイ展 澄・微
主催:株式会社資生堂
会期:2012年8月28日(火)~10月21日(日)
会場:資生堂ギャラリー
〒104-0061
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階
Tel:03-3572-3901 Fax:03-3572-3951
平日 11:00~19:00 日曜・祝日 11:00~18:00

ブラジル映画祭2012、試写会に行ってきました 【後編】

二日間にわたり、ブラジル映画祭の試写会に行ってきました。ブロガー招待です。二日目は、「センチメンタルなピエロの旅」。

人を笑わせる役のピエロが、人生について、ちょっと懐疑的になり、新しい生き方を考えたり、とストーリーは、人間模様についての考察でしょうか。移動サーカスの団員たちと、その旅風景も興味深く、どのシーンもいったことのない、ブラジルという国を見せてくれます。

この映画はブラジル本国でも、観客動員数が多かった作品で、家族や恋人と見るのをお薦めします。笑って、笑って、最後にちょっぴり泣けます。でも、通俗的ではなく、上質のドキュメンタリーをみているような気分です。これが見られてよかったと思いました。

ブラジル映画祭2012は、10/6 土曜日、東京からスタートして、大阪、京都、浜松で上映されます。予告ビデオも揃っていますので、ごらんになって、興味の引かれるものに参加されたらいいと思います。

前編はこちら