銀座で、トスカを見る

プッチーニのオペラ、トスカはあまりにも有名だが、そのハイライト公演をエレクトローンの伴奏でわすが三人で演ずるというのは、大きな冒険。それに挑戦して、かなりの手応えが得て、さらに進化した再上演があった。幸運にも初回も見ているので、そのすごさが伝わってくる。

銀座ヤマハホールは、一階、二階合わせて333席。こじんまりとしたすてきなホールだ。今回はチケットは完売している。
トスカ役は小川里美さん、美人で歌唱力があり、情熱的な歌姫にはぴったり。トスカ役が美人だと、物語が必然性を帯びてくる。彼女のためなら、死ねるとか,彼女をこの手を抱くためになんでもする、という男心が自然に理解できる。

トスカの恋人、カヴァラドッシ役は高田正人さん。恋人に対する誠実な、そして熱い思いが伝わってくる。白い衣装もよかった。特に今回は、サンタンジェロで歌う、アリア、星は光りぬ E lucevan le stelle がすばらしく、涙が出てしまった。

二人を追いつめる警視総監スカルピア役は、与那城敬さん。二枚目が演じると、本当に凄みが出る。トスカを我がものにするために、何でもやるぞという執念、そして、隠された愛、または、情念のようなものが伝わってくる。この人が恐怖を与えないと、物語は平坦になってしまう。

三人が三人とも、重責を抱えていて、微妙なバランスをとりながら、せめぎ合いして、ドラマは進む。悲劇なのに、ときおり、笑いが出る。哀しみと歓びは裏表の関係なのだ。ホールが小さすぎると感じたのはわたしだけだろうか。

そして、忘れてはならないのは、エレクトローンを自在に操る清水のりこさん。彼女はこの壮大なドラマを一台の楽器で織り上げていく。繊細で、大胆で、すべての音色をひとりで担当する。

終わった後にツィッター上でも、出演者たちが興奮冷めやらぬまま、今回のオペラの感想を言い合うのも楽しい。文句なく、今年一番の出来だったと思う。

三人で演じて、ここまで魅せることができるのかという、驚き、発見。何もかもに感謝したい。そんなすてきな時間を分け合うことができてよかった。次回もこの三人での挑戦、楽しみにしている。

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