石岡瑛子展で、びわ湖の仇を討つ

2021年2月14日まで開催の石岡瑛子展に行ってきた。事前予約のおかけで、すぐに入場、空いている館内で、鑑賞する。資生堂時代の作品や、パルコの一連のポスターにはなじみがあって、同じ時代を生きていたのだと実感する。

わたしよりも、はるかに年上の方なのだが、彼女がアートディレクターとして活躍した時代が、ぴったり合致しているのだ。同時に、若いときに受けた刺激、感銘、驚き、発見などはいまも変わらないのだと、驚く。それは感性に似ていて、生活や経験の影響を受けず、心意気、あるいは、感受性とよばれるもの。その引き出しにしまわれたものは、時が経ても色あせずに変わらない。

三年前、パリで二十年以上ぶりの友人と、ダリの展示会を見て歩いていたが、好きな色、好きなデザインが同じなのだ。だから、この人と友だちだったのだと気づく。

そういう意味で、石岡瑛子さんの感性は、ぴったりと合っていた。だから、いまでも覚えているのだろう。心のストライクゾーンに直球を打ち込むように、リスクも犯しながらの挑戦である。それができたのは、時代もある。セゾングループや、パルコ、角川書店など、宣伝部や予算が活躍の場を与えてくれた。

そんな感慨にふけりながら、次のステージへと移る。こちらは、海外での音楽、映画、そしてオペラのコスチュームまで、あまり知られていなかった業績である。
『ザ・セル』(映画 2000)、『落下の王国』(映画 2006)と回って、今回の目玉ともいうべき、オペラ 『ニーベルングの指環』 (リヒャルト・ワーグナー作、ピエール・アウディ演出、オランダ国立オペラ、1998-1999年) 衣装デザイン のコーナーに向かった。

こちらすでに五時間のトーク番組でも紹介されていて、ヴォータンの妻、フリッカの持つ羊の頭の杖とか、じっくりと見たかった。指環に出てくる登場人物の衣装が順番に展示されており、それをまとって歌う、オペラ歌手の姿を想像してみる。すると、
隣の小部屋がミニシアターになっていて、オペラのハイライトシーンを上演しているのだ。実際に衣装を着けた生きた人々が歌っている。

ドイツ語による上演、字幕なし、物語は飛び飛びで紹介。でも楽しかった。パリのバスチーユで見たものと比較して、ここは違うという箇所を見つけて喜ぶ。パリの指環は禁断の愛がひとつのテーマだったが、ここオランダでは、違っていた。

うれしくて、二回も見てしまった。

そして、家に帰り家族に話をすると、うちにも日本人が衣装デザインした指環のDVDがあるという。デザインをみると同じ。中のリーフレットにはコスチュームデザイン、Eiko Ishioka とある。さっそく、最終回の神々の黄昏を見る。同じものだった。青い鳥ではないが、ずっとこのDVDは家にあった。さらに購入したのは、わたしらしい。石岡瑛子さんのことを知っていて買ったのでなく、単なる偶然。でも、思いがけず、びわ湖の仇を討つことができた。

 

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