お正月は忙しい。歌舞伎座も新橋演舞場も、浅草もあって、その他、三宅坂の国立劇場も歌舞伎芝居があります。毎年、国立劇場の菊五郎劇団の復活狂言をみて、演目に合わせて、歌舞伎座をみる、ということにしています。
今回は、やはり藤十郎演ずる戸無瀬が見せ所の、山科閑居を見たくて,夜の部に行ってきました。お正月らしい着物を着て、新装された歌舞伎座に入るのは、それだけで気分が上がります。
藤十郎の戸無瀬、さすがでした。手の動きや表情、婚礼が叶わぬからと、娘を殺して、自分も死のうとするが、たびたび呼び止められる。大星の妻、お石を演ずる魁春の非情なまでの武家のお内儀。これは役者の力量だけの芝居ですから、バランスが釣り合っていないと、みていてはらはらしてしまいます。
前回見た時は、もっと緊迫感があった気がします。今回のは、上方風のはんなりした戸無瀬、そして小浪役の扇雀とは、親子の情愛のようなものが感じられました。
新作ものが続いている染五郎は、井上ひさしの「東慶寺花だより」を好演。この人の純粋な、ひたむきさがよく出ていた作品だと思います。舞台の奈落に落ちて、一時は役者も危ぶまれたのに、無事復帰して、人間の幅が広がったように思えます。だから、新しい役にもなじむのでしょうね。
夜の部
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居
戸無瀬 藤十郎
大星由良之助 吉右衛門
お石 魁 春
小浪 扇 雀 ※
大星力弥 梅 玉
加古川本蔵 幸四郎
二、乗合船惠方萬歳(のりあいぶねえほうまんざい)
萬歳 梅 玉
通人 翫 雀
大工 橋之助
田舎侍 彌十郎
芸者 児太郎
白酒売 孝太郎 ※
女船頭 扇 雀
才造 又五郎
三、東慶寺花だより(とうけいじはなだより)
信次郎 染五郎
法秀尼 東 蔵
柏屋主人源兵衛 彌十郎
おぎん 笑 也
堀切屋三郎衛門 松之助
美代 虎之介
おせん 孝太郎
惣右衛門 翫 雀
お陸 秀太郎