国立西洋美術館で、橋本コレクション 指輪展を見る

  橋本コレクション 指輪展

西洋美術館で、指輪展と聞いて,心がときめいた。招待券をいただいたので、友だちを誘って出かける。こういうときは、オシャレな友だちがありがたい。

【本展は、指輪を中心とする宝飾品約870点からなる「橋本コレクション」が国立西洋美術館に寄贈されたことを記念する企画で、2012年に本コレクション を収蔵して以来、初のお披露目の場となります。橋本貫志氏(1924-)が収集した760点あまりの指輪は、年代や素材に偏りがなく、極めて広範な内容を 持っています。本展では約300点の指輪を一挙に公開し、橋本コレクションの個性豊かな顔ぶれをお楽しみいただきます】

個人の寄贈で企画展が開けるというすばらしさ。年代別に並べられているので、最初は金と、そして真珠の組み合わせ、金とダイヤモンド、プラチナとダイヤモンドと変わっていく。それも富が集るところに指輪ができるのだ。メディチ家、そして、産業革命直後のイギリス、アメリカ、と豊かさと共に宝飾品の発展がある。宝石も、時代と権力に結びついて発達したのが、よくわかる。

早めのランチは、桜木の菜の花。ここは佐渡の宿根木にあった店が移転したもの。佐渡直送のお野菜がおいしい。上野ランチコースをいただいたが、やさしい味わいがうれしい。また、行きたい店だ。

 

METライブビューイングで、ワルキューレを観る

日本で上演されるワーグナーの作品では、ワルキューレが多いと思う。起伏に富んだストーリーだし、各場面の見せ場も多い。【Hojotoho】「ワルキューレの騎行」はあまりにも有名で、「地獄の黙示録」にも使われ、また単独に演奏されることが多い。

私がパリ、バスチーユで見たのは、愛の物語だった。正式な結婚という手続きを踏んでいないジークムントとジークリンデの愛、そして、ヴォータンとフリッカという冷えきった夫婦。ヴォータンが愛したのは、娘、ブリュンヒルデ。その最愛の娘は、命令にそむき、罰しなければならない。二人の別れは、恋人の別れだった。

そういう意味でも、METのワルキューレ、新演出が楽しみだった。ヨナス・カウフマンが、ジークムントを演じ、デボラ・ヴォイトによる初役のブリュンヒルデ。ブリン・ターフェルのヴォータンは、前作に引き続いてであるが、圧倒的な存在感がある。


METのワルキューレは、舞台は新演出でも、心情は、いままでみたドラマに似ていた。やはりパリの演出が飛び抜けて愛の物語だったのだ。ジークムントは、カウフマンが演じることで、甘く切なさ、愛の予感を感じさせた。あれは、元気一杯の若者がやってもつまらない。苦悩や哀しみを知った男がいいのだ。そういう意味で、カウフマンは、適役だと思う。

デボラ・ヴォイトの誇り高きブリュンヒルデ。神々の長の娘として、それにふさわしい処遇を求め、最後にはヴォータンも折れて、炎で包んでやる。そこを乗り越えて、彼女の眠りを覚ますのは、英雄しかいない。このとき、ブリュンヒルデは、分かっていたのだと思う。

指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ヨナス・カウフマン、ブリン・ターフェル、デボラ・ヴォイト、ステファニー・ブライズ、エヴァ=マリア・ヴェストブルック
上映時間:5時間14分(休憩2回) MET上演日:2011年5月14日

ラインの黄金、METライブビューイングで鑑賞

歌舞伎の上演時間を調べていたら、松竹サイトで、「METライブビューイング アンコール2014」8/9(土)より東劇にて上映! という記事が載っていた。

オペラは、劇場で見るのが最高と信じて、映画を敬遠していた。過去に見た、編集されたオペラ映画は、感動を覚えるほどでなかったのも、理由の1つである。

それが、オペラ評論家の知合いから、ライブビューイングのすばらしさを教わり、「愛の妙薬」、「パルシファル」、「ウェルテル」と三本見て、まるで劇場で座ってみるかの臨場感に大満足した。幕間に用意されている出演者インタビューも楽しいし、楽屋裏の風景も見えて、舞台と客席が一体化されている。この体験は、心地よいもの、そして、初めての作品の予習にはぴったりだと思った。

そのライブビューイングが、総集編として、再上演される。この夏は、「ニーベルングの指環」四タイトルをすべてみようと決めた。とはいうものの、第一作、第二作をまず見て、次は9月にした。二日間で四作品見ても、印象が曖昧になるし、第一にこの作品持つ味わいをじっくりと楽しもうと思ったからである。

8/14にまず、《ラインの黄金》と《ワルキューレ》を見る。《ワルキューレ》は、パリ、バスチーユで見たばかりなので、その比較も楽しみだった。METは、ご存知のように、劇場収入の他、映画の配信、個人からの寄附で成り立っている。それは、新演出といえども、奇をてらうものではなく、みんなが楽しめるような内容になっているのだ。言い換えれば、最高の歌手を備えて、安心してみることのできるプログラムといえよう。

今回の新演出というのも楽しみだった。コンピュータを使う、大掛かりな舞台演出。ラインの乙女たちは、まるで山登りような重装備で望む。それが客席からは、川のせせらぎに楽しそうに泳ぎ回る乙女たちに見えるのだ。舞台裏がわかっているからこそ、アルベリッヒとのやりとりが生きてくる。歌手は歌うだけではなく、最高の演出に合わせて文字通り、身体を張っているのだ。

舞台が近いので、物語の進行も、理解しやすい。《ラインの黄金》で張り巡らされた伏線は、あとから大きな意味を持ってくる。そういう意味でも、この前夜は大切だ。

神々の住むヴァルハルと呼ばれる荘厳な城は、巨人族に作らせたもの。そして、その報酬を神の長ヴォータンは、火の神ローゲの知恵で地底のアルベリヒから奪い取った黄金で支払う。

ヴォータン役のブリン・ターフェルは、崇高な神というよりは、傷ついた戦士のように見える。最高の配役というのも、うなずけるすばらしさだ。

http://www.shochiku.co.jp/met/program/1011/photo_gallery/01/

指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ブリン・ターフェル、ステファニー・ブライズ、リチャード・クロフト、エリック・オーウェンズ
上映時間:3時間3分(休憩2回) MET上演日:2010年10月9日

ワーグナー ニーベルングの指環

《ラインの黄金》 10-11 上映時間:3時間3分
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ブリン・ターフェル、ステファニー・ブライズ
8/14(木)―11:00、9/13(土)―11:00

《ワルキューレ》 10-11 上映時間:5時間14分
指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ヨナス・カウフマン、エヴァ=マリア・ヴェストブルック 8/14(木)―15:00、9/13(土)―15:00

《ジークフリート》11-12 上映時間:5時間11分
指揮:ファビオ・ルイージ 演出:ロベール・ルパージュ
出演:ジェイ・ハンター・モリス、デボラ・ヴォイト
8/15(金)―11:00、9/14(日)―11:00

《神々の黄昏》11-12 上映時間:5時間28分
指揮:ファビオ・ルイージ 演出:ロベール・ルパージュ
出演:デボラ・ヴォイト、ジェイ・ハンター・モリス
8/15(金)―17:00、9/14(日)―17:00

 

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大船鉾の復活 その2

その1はこちらです。

今年の祇園祭は、前祭、後祭と二回にわけて実施されました。大船鉾は、150年ぶりの復活ということで、鉾建ても7/17の二時からスタートです。こうした日程の幸運で、大船鉾の鉾建てを見ることができました。7/17には、鉾車や他の材料を下ろすのをじっくりとみていました。「大船鉾組上工程表」によれば、7/18は、船体組上、縄掛けです。

7/18の朝、9時頃にお邪魔したときは、すでに縄掛けが始まっていました。ご存知のように山鉾は釘一本使うことなく、縄で締めていきます。この縄は3000メートルも使うのだそうです。見ていると、一度掛けた後に、さらに巻き直して強化しています。これは、他の鉾もみな同じです。

こちらの鉾の違いは、白木に、高額寄付者のお名前を書いてあり、巡行当日は、そのお名前の付いた山鉾で市内をまわることです。垂れを掛けますから、直接は見えませんが、中にしっかりと入っている。すてきな発想ですね。
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7/18の17時頃には、かなりでき上がっていました。船の形ができるに連れて,見物客の数も増えます。こちらの保存会の方々は優しくて、自転車に乗っている人には、一旦降りてもらい、見物客の安全を第一に考えてくれます。

保存会の松井理事長みずから、通行する人に解説しています。京都のひとは、心の優しいひとばかりだと、しみじみ思いました。

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船板が順番通りに運ばれて、船らしくなってきます。それにしても、道路に木材を置いての作業、晴天がありがたいことです。

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7/19の朝10時、船の屋根が取り付けられました。六本柱、屋根掛、順調に進んでいます。大勢の見物人です。大船鉾に対する関心の高さが偲ばれました。それにしても眩しいほどの天気。お天気に恵まれています。

この日、12時に京都を去って、西宮に向かいました。心残りですが、ここまで見ることができたことを感謝したいです。

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祇園祭、神幸祭を見てきました その2

その1はこちら

錦の神輿は、西御座で、八柱御子神 (やはしらのみこがみ)です。

四条通から花見小路を南へ向かい、川端通を北へ、三条通から木屋町通を北へ、二条通へ入り寺町通を下がる、三条通から河原町通を南へ、四条通から木屋町通を下がり松原通を西、河原町通を上がり四条通から御旅所へと二時間あまりのコースになります。途中、担ぎ手が交代したり、また、台車に載せたりと、全行程を担ぐことはしません。

それでも「ほいっと、ほいっと」という掛け声で担ぐのをみているのは、気持ちがよいのです。神輿は花見小路に入りました。ここは、お茶屋さんが並んでいる通りです。道の両側に並んでいるお茶屋さんの前で、旦那さん、お姐さんたちが挨拶をしたり、飲み物やお握りなどの接待もします。
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お茶屋さんの二階から、身を乗り出して眺めているひともいます。きれいどころの待っているこの辺りを「ほいっと、ほいっと」という掛け声と共に進み、一緒に歩いているわたしたちまで、祭りは楽しいなあと思いました。錦の人たちは優しくて、写真を撮っているひとも邪魔にせず、一体感があります。

途中、休憩のときは、神輿を台車に載せて休みます。神輿は、細い路地も通り抜け、見たこともない道を進むのですが、どこでも挨拶をしたり、飲み物を配ったりする人がいて、氏子に愛されているのだと分かります。神様のお通りですから、みんなが歓迎するのでしょう。

楽しかったのですが、最後まで付いていく体力はなく、四条通りに出たのを機にお別れしました。初めての経験で、こんなに楽しい祭りに参加できて、感謝です。
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祇園祭、神幸祭を見てきました その1

祇園祭は、八坂神社の神事で、7/1から7/31まで続きます。その中でも、宵山(よいやま)といわれる前夜祭、生稚児が乗り込む山鉾巡行(やまほこじゅんこう)が有名で、大勢の観光客が訪れます。

毎年、祇園祭に出かけ、巡行を見た後、午後の新幹線で戻っていました。すると、昨年のことです、京都の方から、7/17の夕方、八坂神社で神幸祭が開催されるから、それをぜひ見て帰ってください、と教わりました。

今回は、7/19に兵庫でオペラを見るので、7/17から、さらに二泊、京都に滞在することに決めました。さて、そうはいうものの分からないことだらけです。どこでどのようにして見たらいいのか、見当もつきません。巡行のとき一緒に並んでいた方ともお話しし、警察の方にもお聞きし、ホテルに戻ってからも担当の方に相談しました。どうも八坂神社が出発点だから、そこに向かえばいいと、わかりました。

四条通は、まだ交通規制があって、車が使えません。四条烏丸から、歩いて、八坂神社に向かいます。近づくと道の両側には人がびっしり並んでいます。八坂神社で神事が行なわれ、そのあと、18時から神輿がでるという話でした。

まず、宮本組神宝奉持列、豊園泉正寺榊行列がそれぞれのコースを渡御します。神輿が来ると思っていたのが、神主さんの行列や、馬に乗ったお稚児さんがいて、それはそれで平安絵巻を見ているようです。
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やがて、30分ほどすると、遠くから歓声があがり、御神輿の到来です。三基の神輿が氏子の地区を歩く神輿渡御出発式があって、神輿は、四条御旅所(おたびしょ)まで向かいます。三基とは、中御座(三若神輿会)、東御座(四若神輿会)、西御座(錦神輿会)です。詳しいルートはこちら
神輿は「ほいっと、ほいっと」という掛け声とともに進みます。
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中御座(三若神輿会)の神輿

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西御座(錦神輿会)の神輿

私は、もっと神輿の写真が撮りたいと思い、錦の神輿の後を付いていくことにしました。これが幸いしたのです。三基はそれぞれ別の道順を通りますが,錦の神輿は、四条通から花見小路を南へ向かいます。

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兵庫で「コジ・ファン・トゥッテ」を見てきました


モーツァルト「フィガロの結婚」が、オペラの入門でした。「ドン・ジョヴァンニ」も何度もみています。それなのに、「コジ・ファン・トゥッテ」は、今回が初めてなんです。

知合いの小川里美さんが、フィオルディリージを演ずるというので、祇園祭のあと、京都から駆けつけました。

会場の兵庫芸術文化センター大ホールは、2000人を収容できる本格的なコンサートホール。座ってしまうと舞台との一体感があって、落ち着きます。

今回の舞台装置のデザインが、絵画のように美しいのです。二次元の前に、生きた人間が立ち、唱い、演技するのです。


(ワークショップのときの映像をお借りしています)

「女に貞節などない」と主張する老哲学者ドン・アルフォンソ。貞節な女は、アラビアの不死鳥のように見つけることが稀なのだと、語ります。誠実な恋人を信じている二人の青年士官は、そんなことはない、自分の恋人は違うのだと、賭けをすることになります。

そんなことは知らない、二人の姉妹は、恋人たちが急に戦場に向かうことになって、ひどく落ち込み、食事も喉に通りません。そこに、異国人に変装した男たちが現れ、おたがいが別の相手を口説いて、恋心を訴えるのです。

始めはきっぱりと拒否していた姉妹ですが、死ぬことすら怖れずに自分たちを一途に思う心に引かれていくのを感じます。最後がどうなるのか、わくわくしますね。

モーツァルトの楽しげな音楽に載せて、舞台の上で恋人たちの思いが、交差します。わたしが見たのは、アジアチームの初日7/19でした。

異国人は馴れ馴れしく、恥じらいも無く、恋を語ります。フィオルディリージ役の小川里美さんは、透き通るような声で、凛と相手を拒絶し、だが、次第に心が傾いていく、苦悩をうまく演じていました。気品あふれる小川さんの、心の動きがモーツァルトの華麗な旋律に乗って、聴いているこちらまで、どきどきしてしまいます。

妹のドラベッラは、恋を楽しむのも気晴らしにいいと、割り切り方が、ドライなのですが、姉のフィオルディリージは最後まで、頑として恋を拒み、恋人のいる戦場に赴くことを考えます。

今回の舞台は、女中のディスピーナ役の田村麻子さんの演技が光っていました。狂言回しとして、アルフォンソとともに大活躍。頼もしい女中なのです。青年士官役のキュウ・ウォン・ハン、ジョン・健・ヌッツォのすばらしい歌唱力。ここまで迫られたら、ぐっと来るのも当然のことでしょう。このチームは、すでに知合いだったり、共演経験があったりと、チームワークがすばらしい。持てる力を余すところなく、表現していました。

最後の終わり方も意味深です。恋人たちは、元のさやに収まるのか、それとも新しい恋の相手と添い遂げるのか、恋心に火が付いた若者たちはどうなるのでしょう。

3時間半の長いオペラなのに、楽しくて、あっという間に終幕でした。カーテンコールの間も拍手が止みません。公演は、ちょうど半分が終わったところ、まだまだ続きます。お近くの方は、ぜひ、足を運んでみてください。きっと恋心を思い出して、戻れますよ。

2014年 祇園祭 前祭に行ってきました その2

宵山か巡行の日は、雨だというのが定説です。今年はその前に大型台風が来たおかげで、お天気は素晴らしく、油断していたら、日焼けしてしまいました。

始まる前に最後の仕上げをしている郭巨山のみなさん。
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月鉾のみなさん
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記念撮影をしている函谷鉾のみなさん。
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山鉾巡行の当日、9時スタートなので、8時過ぎに、四条烏丸の交差点に向かうと、最前列が空いていました。ここは、9時過ぎからは日陰になって、また、警備の警官が優秀なので、お気に入りの場所です。ここで長刀鉾の生稚児さんを見て、残りの22基を見ようと決めていました。

8時半すぎると、長刀鉾がスタート地点へと動き出し、警官の一人が、こういうシーンはカメラで撮らなくちゃと教えてくれます。
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生稚児さんは肩に背負われて登り、ぐるりを周り、お顔を見せます。今年は西利さんの長男でした。無事、乗り込むと長刀鉾のスタートです。

今年は23基なので、全部見ることができて、楽しかったです。今年はお天気にも恵まれました。

普通なら、博物館のガラスケースに陳列されているような時代物の山鉾がそろりそろりと動いて、四条から御池まで一周してみせることです。これらの山鉾が並んだ姿は、ミニュチュア模型のように可愛らしい。それが見たくて、出かけるかもしれません。
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2014年 祇園祭 前祭に行ってきました その1

7月の暑い盛りに、京都に行くのは、最初は勇気がいりました。それが、思いの外楽しくて、祇園祭の期間に触れ合う人びととの優しい、柔らかい時間にすっかり魅了されて、毎年出かけるようになりました。今では、七月になるのを楽しみに待っています。

祇園祭の楽しみ方は、人様々だと思います。わたしは仕事柄、祭りの前段階から参加するのが好き。鉾建てが始まり、町内で準備の始まる、7/13頃から京都入りします。今年は前祭、後祭と二週間に渡っての初めての開催。どうなることかと、気になっていました。

宿泊は四条付近。いつものように町歩きをすると、なんだが物足りない、途中で終わっています。新町通りの北側の北観音山、南観音山、八幡山がありません。室町通りの北側の、鯉山、黒主山、役行者山もありません。これらは今回の籤で、後祭。いつもなら、この辺りは屋台が出て、一方通行で賑わっているのに、今年は静かでした。南側では交通規制となっていて、ここから先には進めませんというアナウンスが飛び交っています。

山鉾には提灯が飾られ、夜になると灯りが入って、風情があります。昼間の暑い盛りに出歩くよりも、夕暮れのあとから、町歩きするのが似合っています。

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祇園祭は、山鉾のお飾りを見たりするほか、屏風祭という個人宅を解放して、美術品を拝見することができます。名家では、この日のために飾り付けをし、家長が自ら、解説もしてくださるのです。
芦刈山の近く、染呉服卸の横山商店にお邪魔しました。ご主人自ら、お話しいただき、京都画壇で円山派の復興に貢献した森寛斎の「四季農耕の図」を見せていただきました。画像はお借りしています。

この屏風は代々、家に伝わるものですかと尋ねると、自分が20代のときに買ったものだといいます。当時、家にこの絵が付いていて、家と絵を両方買うか、あるいは、絵だけ欲しい人がいるから、その分、家を安く買うかと問われ、絵が好きだから、両方買ってしまった。今考えても度胸のあることをしたと思う、といわれます。本来なら、国立博物館に収まっているような作品を個人で所有していて、祇園祭の期間だけ、公開しているのです。こういう屏風祭、昔は130軒くらいあったのが、今では26軒だけということでした。

螺鈿の団扇を展示しているお宅もあります。IMG_3575

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宵々山では、あちこちの山鉾がお囃子や踊りリハーサルをしています。町の人は、この時期、出かけるようです。山鉾巡行当日の籤改めの扇子あしらいの練習があったりと、町が祭りの呼吸をしています。見守っている人たちも無事にできると、拍手していました。

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綾傘鉾のお囃子練習風景

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四条傘鉾のお囃子と踊りのリハーサル、四条通は歩行者天国になっています。
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歌舞伎は題名にだまされてはいけない、松竹座に行ってきました。

歌舞伎の題名で、演目を知る。昼の部か、夜の部かと迷い、人はどきどきしながら、出かけていく。しかし、役者という種族は、特別。演目とは別に自分の解釈、自分の演技というものに命を懸けている。

7/16の夜、宵山で賑わう京都を抜け出し、大阪松竹座にでかけた。これも恒例のこと。最近は堪え性がなくなって、関西の歌舞伎を昼夜通しで見るということができなくなっている。江戸の歌舞伎に較べて濃密、一幕多いのだ。

京都の暑さを逃れるという意味なら、昼の部なのだが、今回は、どうしても夜の「沼津」が見たかった。東京ではなかなかかかることのない演目である。たぶん見るのも初めて。

「沼津」
藤十郎、翫雀、扇雀と山城屋+成駒屋の一族総出の芝居。

鴈治郎がやった呉服屋十兵衛を藤十郎、雲助平作を翫雀。親子が逆なのも、藤十郎の若々しさで無理なく演ずる。平作が、78才になったら、足腰のたたんようになる苦労がわかるといい、笑わせる。ふたりが荷物を担いで、客席を歩くのも一興。

可憐な娘お米は、扇雀。十兵衛から嫁にほしいといわれて、帰ってもらってくださいと父に訴える。清楚な色気があり、夜暗くなったところで、恋人のために傷にきく印籠をぬすもうとする辺りに、女の哀しさが漂う。その後の訳を訴え、許しを乞うところも女形の美がある。

三人の心根に、相手を思いやる気持ちがにじみ出ていて、それぞれの見どころが満載。役者の格が合わなければ、まとまらない。この一家でなければできない演目だと思った。

 

「身替座禅」
仁左衛門の身代座禅。あの玉の井という奥方に頭が上がらない大名の右京が、たまたま京に訪ねてきている愛人花子に会うために、一夜座禅を組むといって妻を欺く。

すでに何度か見ているし、あれだなと思って鑑賞する。仁左衛門の右京は、恐妻家。奥方玉の井は何でも反対して、そばに寄り添っていたいと思っている。そこで、座禅を組むから近づかないようにといい、家来の太郎冠者(橋之助)を呼び出し、無理やり身代わりにして、いそいそと出かけて行く。その楽しさ、会いたさが伝わってくる。

当然のことながら,奥方は窮屈そうな座禅を気の毒がり差し入れをしようとするが、断られ、側近くに出向いて、被り物を剥がして、右京でないことを知ってしまう。さあこれからが怖い。太郎冠者に言いつけ,自分が替わりに座禅をする。翫雀の玉の井は、能面の作りで、悋気と、愛憎が見え隠れする。

そこへいそいそと右京が戻ってくる。花道でたちどまり、ほうっと息をつく。愛の営みのあとの少し疲れた惚けたような姿で、それは大名というよりは、あの「郭文章」の伊左衛門。顔の作りからして、違う。いいとこの若旦那の、放蕩三昧の色香が漂ってくる。ここからがたっぷりなのだ。題名は「身替座禅」なのに、夕霧と契った後の伊左衛門に変わっている。衣装こそ、紙子は着ていないが、中身はまさしく伊左衛門

ここからは仁左さんの独断場。この人でなければ、できない演技だ。奥方玉の井にこのことは隠しているのも辛いから、知られないようにお前だけに話すといって、太郎冠者と信じて、一夜の楽しさを打ち明ける辺り。そして、それが奥方だと知った驚き、逃げ惑う姿。ここからは、元の「身替座禅」に戻っているのだが、色町の香りは全編に残っている。東京で見たときは、そんなことは露も考えなかった。

松竹座で、仁左さんの伊左衛門を見たと信じている。題名にだまされてはいけないのだ。

 

七月大歌舞伎 夜の部

一、伊賀越道中双六 沼津(ぬまづ)

呉服屋十兵衛    藤十郎
お米    扇 雀
池添孫八    進之介
雲助平作    翫 雀

二、新古演劇十種の内 身替座禅

山蔭右京    仁左衛門
太郎冠者    橋之助
侍女千枝    梅 枝
同 小枝    児太郎
奥方玉の井    翫 雀

三、真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち)
豊志賀の死

豊志賀    時 蔵
お久    梅 枝
噺家さん蝶    萬太郎
伊東春海    橘三郎
勘蔵    竹三郎
新吉    菊之助

四、女伊達(おんなだて)

女伊達木崎のお秀    孝太郎
男伊達淀川の千蔵    萬太郎
同  中之島鳴平    国 生