11月歌舞伎公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」第二部

今年は国立劇場50周年記念のイベントが続きます。歌舞伎の愛好家から初めてという高校の同期と第二部を観劇しました。


http://www.ntj.jac.go.jp/50th/kabuki_chushingura/

団体なので、一等席を取ってもらい、さらにお弁当もお取り寄せして、芝居気分が盛り上がります。 この日は特に役者も頑張っていたのではないでしょうか。 見ごたえのある公演でした。三部作の中でも、山崎街道と、一力茶屋のあるこのパートがいちばん華があると思います。

菊之助が播磨屋さんのお嬢さんと結婚して、大正解ですね。芸というのは、競い合って、さらに磨かれるもの。人間国宝の人物の重みが出ています。
音羽屋も播磨屋も自分の得意なパートで、芸を競っていました。

最後にはバックステージツアーもあって、大満足な一日でした。関係者の方々、ありがとうございます。

【第二部】 四幕五場
国立劇場美術係=美術

浄瑠璃 道行旅路の花聟   清元連中
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場
同   二つ玉の場
六段目 与市兵衛内勘平腹切の場
七段目 祇園一力茶屋の場

(主な配役)
【道行旅路の花聟】
早野勘平      中 村 錦之助
鷺坂伴内      坂 東 亀三郎
腰元おかる     尾 上 菊之助

【五段目】
早野勘平      尾 上  菊五郎
千崎弥五郎     河原崎 権十郎
斧定九郎      尾 上  松 緑

【六段目】
早野勘平           尾 上 菊五郎
原郷右衛門        中 村 歌 六
勘平女房おかる    尾 上 菊之助
千崎弥五郎       河原崎 権十郎
判人源六         市 川 團 蔵
与市兵衛女房おかや 中 村 東 蔵
一文字屋お才      中 村 魁 春

【七段目】
大星由良之助    中 村 吉右衛門
寺岡平右衛門    中 村 又 五 郎
赤垣源蔵        坂 東 亀 三 郎
矢間重太郎      坂 東 亀  寿
竹森喜多八      中 村 隼  人
鷺坂伴内        中 村 吉 之 丞
斧九太夫        嵐   橘 三 郎
大星力弥        中 村 種 之 助
遊女おかる      中 村 雀右衛門

 

二期会名作オペラ祭 『フィガロの結婚』を見てきました

フィガロの結婚は、最初にみたオペラです。新宿区に住んでいたとき、区民のためのオペラ鑑賞があり、上野の東京文化会館で三日連続鑑賞。こちらも二期会でした。 それから何度となく、見ているお気に入りのオペラです。

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今回の宮本亜門演出の 『フィガロの結婚』、2011年に引き続き、拝見しました。進化しているのが小気味よく楽しめました。

 

『フィガロの結婚』は、人間の心の動き、愛と哀しみが、本当にうまく表現されていて、喜劇なのに、哀しみもあふれている。だから、何年たっても、いろいろな演出で、今の人の心に訴えるものがあるのだと思います。

見たのは7/16の部。歌い手さんたちが、揃っていてすばらしかった。オペラはチームワークの芸術、ひとりだけ目立っていてはだめなのです。この日の、アルマヴィーヴァ伯爵 与那城 敬さん、イケメンなのに、スザンナからは冷たくされて、彼女に惹かれているという役をうまく表現しています。 伯爵夫人 増田のり子さん、アリアがすばらしい。こんな一途な妻を放っている夫がひどすぎると、味方したくなります。

スザンナ 髙橋 維さん、お茶目で気がつくチャーミングな女性。みんなをひっぱっています。フィガロ 萩原 潤さん、両親との対面の場が、一番楽しめました。男らしいようで、くよくよするところも面白い。

ケルビーノ 青木エマさん、こんなかわいい少年を乙女たちが愛してしまうのは当然。伯爵は男には興味がなくてよかったですね。ドン・バジリオ 高田正人さん、音楽教師のはずが想定外に活躍して楽しめます。存在感がありました。マルチェリーナ  石井 藍さん、気絶するところがうますぎる。母親の顔への変化がいいです。

みんながひとつになって、すばらしい作品を作り上げていく様子が見えます。音楽だけでない、生の、そして一期一会の楽しみ。 モーツアルトもびっくりでしょう。次回も楽しみです。

配役
アルマヴィーヴァ伯爵   与那城 敬
伯爵夫人          増田のり子
ケルビーノ         青木エマ
フィガロ           萩原 潤
スザンナ          髙橋 維
バルトロ          長谷川 顯
マルチェリーナ      石井 藍
ドン・バジリオ       高田正人
ドン・クルツィオ      升島唯博
アントニオ         畠山 茂
バルバリーナ       全詠玉
花娘1            辰巳真理恵
花娘2            加藤早紀

オペラ全4幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
台本:ロレンツォ・ダ・ポンテ
作曲:ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

指揮: サッシャ・ゲッツェル
演出: 宮本亜門

会場: 東京文化会館 大ホール
公演日:
2016年7月15日(金) 18:30
16日(土) 14:00
17日(日) 14:00
18日(月・祝) 14:00

熊本地震チャリティコンサートに行ってきました

Music for Kumamoto
「音楽を通じて熊本に元気を!」というジョン・健・ヌッツォの呼びかけに共鳴した、オペラ・クラシック界12人の有志によるチャリティコンサートに行ってきました。

普段では、聴くことのできない豪華なメンバ。どなたも力強く歌い上げて、こじんまりとしたホールに響きわたっていました。イタリアオペラからの曲も多く、心に染みるようです。音楽による支援というメッセージのとおり、聴いていたこちら側も、元気をいただきました。

場所は、白寿ホール。こちらはすばらしく音響の良いホールです。初めて出かけたのですが、居心地がよく、ずっとここで聴きたいと思いました。すてきな時間を共有できてよかったです。

会場では、終演後、ロビーにも募金箱を持った、歌い手さんたちが並び、コンサート収益全額は、毎日新聞東京社会事業団に寄付され、熊本に届けられます。

 

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2016.7.3 [日]
14:00 開演(13:30 開場)
18:00 開演(17:30 開場)

熊本地震チャリティコンサート
Music for Kumamoto

青山貴 (Br/1回目のみ) 悪魔め鬼め 「リゴレット」、
泉萌子 (S) ドレッタの夢 「つばめ」、
小川里美 (S) ああ、そはかの人- 花から花へ「椿姫」、
梯剛之 (pf) 即興曲第3番Op.90 変ト長調「シューベルト」、
ジョン・健・ヌッツォ (T) たえなる調和「トスカ」、誰も寝てはならぬ「トゥーランドット」、
ジョン・ハオ (B) 闘牛士の歌「カルメン」、
デニス・ビシュニャ (B) 陰口はそよかぜのように「セビリアの理髪師」、
鳥木弥生 (Ms) あなたの声に私の心は開く「サムソンとデリラ」、
中西勝之 (Br) 私は町の何でも屋「セビリアの理髪師」、
古澤巌 (vn) タイスの瞑想曲「マスネ」、チャールダッシュ「モンティ」、
鷲尾麻衣 (S) この清潔で愛らしい宿よ「リタ」

赤星裕子 (pf)、高田絢子 (pf)、

全員 乾杯の歌「椿姫」、行けわが思いよ、金色の翼に乗って「ナブッコ」、花は咲く

サントリーホールで第九を聴く

物事の始まりは面白いです。ショットミュージックのメイルマガジンで、今年が武満徹の没後20年にあたることを知りました。

そして、サントリーホールで、武満徹:セレモニアル-秋の歌-を含む次のような演奏会が開かれることを知りました。どうして、ここにたどり着けたのか、今でもわかりません。

壹越調調子(雅楽)
武満徹:セレモニアル-秋の歌-
ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調 op.125 「合唱付」

この曲は、武満の中でも珍しく典雅が官能的といわれる祝祭の色濃い作品です。わたしも聴くのは初めてだったので、楽しみでした。
そして、第九、合唱付き。この時期にサントリーホールで第九が聞けるなんて、こちらもわくわくします。歌手たちの豪華なこと。指揮者のメルクルさんも含めてみなさま、こちらの国立音大で教えていらっしゃいます。

気がついたのが公演の二週間前、お席は前から二列目のコントラバス付近。オーケストラも見渡せて、指揮者のお顔もはっきり見えます。この一体感が大好き。自分も演奏している気分になります。

みなさま、歌いながら、合唱の指揮をするのですね。メルクルさんも歌いながら楽しんでいました。 宮田まゆみさんの笙の笛もひさしぶりで、異次元に浮かぶよう。アートの神様がくれたギフトのような時間でした。

国立音楽大学 創立90周年 特別記念演奏会
国立音楽大学オーケストラ、合唱団日時 2016年6月12日(日) 14:00 開演指揮 準・メルクル出演  笙:宮田まゆみ
ソプラノ:澤畑恵美
アルト:加納悦子
テノール:福井敬
バリトン:黒田博
国立音楽大学オーケストラ
国立音楽大学合唱団

与那城 敬&小川里美 さすらいの詩 魂の歌に行ってきました

5/27 金曜日の昼の音楽さんぽ、第一生命ホール15周年記念公演
第5回 与那城 敬&小川里美
さすらいの詩 魂の歌 に行ってきました。
このお二人、オペラ研修所のときから知っています。実力派なので、楽しみにしていました。バリトンとソプラノの二重唱なのかと、想像していたら、歌曲を歌い上げてくれました。美しい音楽、美しい歌声。日頃、聞くことのない曲、それも抒情的な曲でした。 時空を旅するという音楽ばかり。

それほど大きくないホールにぴったりの歌声に、聞き惚れて、あっという間の二時間でした。いただいたプログラムには、歌詞の訳が載っているのですが、実際の曲の最中に字幕に乗るのは歌手のお二人の訳。思いが籠っていました。

愛の歌、過ぎ去った愛の歌、満たされぬ愛の歌、喜びの愛の歌、さまざまな愛が時間を流れていきます。終わって外に出ると、雨も上がって、素晴らしい一日を予感していました。もう一度聞きたいです。

日時 2016年5月27日(金) 11:00 開演(12:30終演予定)
会場 第一生命ホール  座席図を見る
出演 与那城敬(バリトン) 小川里美(ソプラノ) 巨瀬励起(ピアノ) 山野雄大(ご案内)
曲目 ヴォーン・ウィリアムズ:歌曲集《旅の歌》(与那城)
──『宝島』で有名なスティーヴンソンの詩による歌曲集。
孤独に灯される愛、星降る夜の憧れ、巡る季節にさすらう魂‥‥
暮れ空の彼方へ翼ひろげる放浪の歌。英国歌曲の絶品です!

デュパルク:戦いのある国へ(小川)
──中世のロマンスを思わせる傑作。戦場へ出た夫へ遠く想い寄せる妻の心‥‥

デュパルク:旅への誘い(小川)
──幻想の遠い国へ‥‥ボードレールの精緻な名詩を昇華した歌曲。

プーランク:歌曲集《平凡な話》(小川)
──平凡どころか非凡!詩人アポリネールの豊かな想像を見事に描く歌曲集。

◼︎アンコール
フォーレ:この世のすべての魂 Op.10-1

京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行・昼の部」に行ってきました

京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 四代目中村鴈治郎襲名披露」に行ってきました。

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1月の大阪松竹座から始まった鴈治郎襲名披露の締めくくりが京都。鴈治郎さんは、どうしても関西で見たかったので、望みが叶いました。

【玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場】

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山科閑居というのは、雪の降る中、嫁入り支度で、加古川本蔵の女房・戸無瀬が小浪を伴い大星由良之助の住まいを訪ねてくるというあらすじです。それが、玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記というのは、なんだろうと、疑問符が一杯。

玩辞楼十二曲の内
雁治郎が選んだ十二曲のうちのひとつ、とわかりました。

碁盤太平記、わからないのも当然。40年振りの上演だそうです。上演に当たっての苦労などは、扇雀さんのブログを拝見しました。

扇雀さんのお話によれば、

この作品も最初は近松門左衛門の原作に沿う形で上演されましたが渡辺霞亭の手が加えられて原作とは全く違った作品に変化していきました。そこには初代鴈治 郎の工夫とアイデアが凝縮されていますが、全てお客様に楽しんで頂く。また、自分自身が作品の良さをより出すために手を加えていくそして何よりもリアリ ティを目指すといったことから改訂が加えられて来ました。

初代の雁治郎さんもクリエイターだったのですね。偽りの放蕩を重ね、妻、そして、母も縁切りし、家から追い出す。それをみていた吉良家の間者も、大石には仇討ちする本懐なしと、手紙を手渡します。

実はそれも敵方と知って、油断させるために策を設けたこと。下僕岡平は、自らが吉良家の家臣、高村逸平太だと名乗り、最後は碁盤の目を使って、吉良家の屋敷見取り図を知らせます。たしかに忠臣蔵は、太平記の時代になぞらえていました。

息子の主税が父宛の密書を預かり、密かに読んでいると下僕岡平が忍び寄ってくる。今度は文盲のはずの岡平が密書を読んでいるのを主税が見咎める。 これは仮名手本の一力茶屋のパロディ。

最初にのどかに碁を指しているのが、最後にまた碁盤が登場するなど、ここそこに伏線があって、最後にはそれがひとつにまとまるという高度な技は、渡辺霞亭がストーリーテラーだからこそでしょう。

扇雀さんは、昨年の「藤十郎の恋」のような柔らかものが得意だと思っていましたが、大石のような忍を飲み込んだような役柄も似合います。

最後の場面で、明かりを消して、親子の対面、別れを告げるところ、そして、女房りくが傘を差出し、そして、手を引っ込めずにためらっているところ。夫婦の強い愛情を感じました。別れ際が、たっぷりしていて、きれいでした。

同じく、【玩辞楼十二曲の内 心中天網島の河庄】

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こちらは、愛想尽かしで、心中まではいきません。それだけに見せ場は、治兵衛の呼び戻しの演技です。くどくどと、腰は低くで、優しいひとなのですが、腹を立てると手が出る、足が出るという大坂のお人です。

見ているこちらは泣き笑いなのですが、演ずる側は気持ちが入らないとできないと思いました。

雁治郎さんもそのあたりを語っています。

「治兵衛は恋に病い、裏切られて腹を立て、兄にはグチグチ言い訳し、ひとり小春を思い出してしゃべる。お客様にもその世界に入っていただかないと」と話し、型としてではなく、気持ちで動いている、それこそが『河庄』治兵衛なのだ。

わたしは、それを呼び戻しの美学だと思います。普通の歌舞伎は、終わったら、花道を通って帰るだけ。それが呼び戻されて、また、芝居を始める。そこに華がなければ、単なるくどさに終わってしまいます。しょうもない奴やけれど、まあ、話を聞いてやるかという気分にならないと続きません。このたっぷり感は、関西にいると普通なんですが、お国柄なのでしょうか。

夜の部も楽しみです。

昼の部

近松門左衛門 作
渡辺霞亭 脚色

第一
玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場

大石内蔵助      扇雀
下僕岡平実は高村逸平太 愛之助
大石主税       壱太郎
医者玄伯       寿治郎
大石妻りく      孝太郎
大石母千寿      東蔵

第二
義経千本桜吉野山(よしのやま)

佐藤忠信実は源九郎狐  橋之助
静御前         藤十郎

第三
玩辞楼十二曲の内 心中天網島
河庄(かわしょう)

紙屋治兵衛    翫雀改め鴈治郎
紀の国屋小春   時蔵
江戸屋太兵衛   愛之助
五貫屋善六    亀鶴
丁稚三五郎    萬太郎(時蔵の次男)
河内屋お庄    秀太郎
粉屋孫右衛門   梅玉

第四
河竹黙阿弥 作
新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

叡山の僧智籌実は土蜘の精  仁左衛門
平井保昌    左團次
侍女胡蝶    孝太郎
渡辺源次綱   進之介 (我當の息子)
坂田公時    男女蔵
碓井貞光    萬太郎
卜部季武    国生
巫子榊     梅枝
番卒藤内    愛之助
番卒次郎    橋之助
番卒太郎    扇雀
源頼光     梅玉

イタリア文化会館で『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』を見る

イタリア文化会館では、イタリア文化を日本に紹介するイベントを数々行なっている。その中で、大好きなモーツァルトのドン・ジョヴァンニができるまでという映画を見に出かけた。
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ロレンツォ・ダ・ポンテが、ユダヤ人で、キリスト教徒に改教され、神職についていたことを初めて知った。ベネチアを追放された彼が、新天地として目指したがウイーン。当時、新しい文化を積極的に取り入れていたのだった。ジャコモ・カサノヴァの紹介状を持って同郷のサリエリから、皇帝にお目見えして、新しいオペラをモーツァルトと作るように依頼される。

アマデウスの映画はあまりにも有名だが、こちらは、『ドン・ジョヴァンニ』ができるまでの出来事を中心にしている。途中、モーツァルトの父レオポルトの死の知らせがあったり、ダ・ポンテは、初恋の人と巡り会う。ウィーンの町は一度だけ、訪れたことがあるので、当時の様子も想像できた。たぶん、冬は寒い。雪もかなり降ったのではないか。貧しい人々には、辛い時期だったと思う。お金に困っているモーツァルト、そんな中で夢のような音楽を織り上げていく。

物語では、ネタバレになってしまうが、『ドン・ジョヴァンニ』は、かつてのダ・ポンテで、死んで生まれ変わるのだと語っている。カサノヴァも脚本協力をする。昔の自分を悔いて、新しい恋人との暮らしがはじまる。これを書いて、4年後になくなるモーツァルト。89歳まで長生きし、アメリカでの『ドン・ジョヴァンニ』の初演演奏に出席したダ・ポンテ。見事な対称だ。

 

『ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会い』
2015年11月8日(日)

1787年、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが発表した不朽の名作
《ドン・ジョヴァンニ》。その誕生には、モーツァルトのイマジネーションを
刺激し鼓舞した劇作家、ロレンツォ・ダ・ポンテの存在があった。
オペラ《ドン・ジョヴァンニ》誕生を支えた“もうひとりの天才”ダ・ポンテに
焦点を当て、モーツァルト、ジャコモ・カサノヴァ、アントニオ・サリエリを
はじめとした多彩な登場人物とともに、傑作オペラの創作過程を描く。
監督は、『カラスの飼育』『サロメ』などで知られる巨匠カルロス・サウラ。
撮影は、三度のアカデミー賞に輝く名手ヴィットリオ・ストラーロ。二人の
偉大な“映像の魔術師”が史実から自由に発想を膨らませ、華麗なる世界を見事に
描いた傑作!
【監督】カルロス・サウラ
【出演】:ロレンツォ・バルドゥッチ、リノ・グワンチャーレ、エミリア・
ヴェルジネッリ 他
2009年/127分/日本語字幕付

2015年11月8日(日)19時(開場:18時30分)
イタリア文化会館 アニェッリホール(B2F)

METオペラビューイング ドン・ジョヴァンニを見る

フィガロの結婚を楽しんだ後は、ドン・ジョヴァンニを見ました。平日の夜ということで、若い人が多い。こちらは時代のままの設定なので、衣装がすばらしいのです。

オペラの楽しみは非日常性。ここでは、どんな贅沢も、偽りの恋も許されます。豪華な配役。見ているほうは、どこにいるのかも忘れて、ドン・ジョヴァンニの王国の捕らわれ人となります。それにしても、彼をただ一人愛していたのが、バルバラ・フリットリ演ずるドンナ・エルヴィーラのような気がします。彼女は大人の女として、彼を救いたいと思ったのでしょう。

ドン・ジョヴァンニに騎士長である父を殺されたドンナ・アンナは、婚約者のドン・オッターヴィオに、復讐してと訴えます。そして、それなしにはあなたの愛を受け入れることができないと、歌います。そして、最後の場面で、ドン・ジョヴァンニが滅びると、今度は一年の喪が明けたら、気持ちの整理もつくから、待って欲しいというのです。

そして、これはわずか一日の出来事だったということを知ると、彼女の願いも無理はないのでは、と思ってしまうのです。

レポレッロ役のルカ・ピザローニ、本当にご主人思いで、忠実な召使。殺されそうになっても、最後には主人を止め、改心させようとするのです。傑出した演技に、彼がいなかったら、ドン・ジョヴァンニの行為も際立って見えなかったと思わせます。

最後に、ドン・ジョヴァンニを演ずるマリウシュ・クヴィエチェン、貴族であり、女に手を出すのが天職ですが、頭が切れて、自信もあって、魅力的な男です。ワルのなかに見せる、少年のような純粋さ、そして、騎士であることの誇り。

今回の演出は、人々の心の動きをくっきりと見せて、作品のもつすばらしさを伝えていたと思います。

指揮:ファビオ・ルイージ 演出:マイケル・グランデージ
出演:マリウシュ・クヴィエチェン、マリーナ・レベッカ、ラモン・ヴァルガス、バルバラ・フリットリ、ジョシュア・ブルーム、ルカ・ピサローニ

上映期間 2011年11月19日(土)~11月25日(金)
予定時間 3時間55分(休憩1回)[ MET上演日 2011年10月29日 ]

METオペラビューイング フィガロの結婚を見る

今年も東劇「METライブビューイング アンコール2015」に出かけてきました。
初回は、8/23の『フィガロの結婚』、新演出で、舞台を1930年代に設定し、使用人を大勢使っている大地主というがアルマヴィーヴァ伯爵です。

この時代なので、衣装がエレガント、特に伯爵夫人の優雅さといったら、みているだけでうっとりします。ケルビーノの愛らしいこと。物語はよく知っているのに、登場人物が変わると、違う話のように思えるのがすばらしいです。

スザンナはここでは、何でも心得たお女中。フランス映画でよく出てくる、有能なお女中です。伯爵は、スザンナにも手玉に取られ、わがままだが、いい男です。伯爵夫人をほおっておきながら、誰かが手紙を送るのは許さないのです。

そんな恋の混戦模様が、最後には幸福な結婚で終わるという、オペラの楽しさ満載の作品です。

指揮:ジェイムズ・レヴァイン 演出:リチャード・エア

出演:イルダール・アブドラザコフ(フィガロ)、ペーター・マッテイ(伯爵)、マルリース・ペーターセン(スザンナ)、アマンダ・マジェスキー(伯爵夫人)、イザベル・レナード(ケルビーノ)

上映時間
3時間36分(休憩1回) [ MET上演日 2014年10月18日 ]
イタリア語

 

 

国立能楽堂で「融(とおる)」を見てきました

6月は、佐渡の能月間。この時期は薪能が各地で開かれます。以前は、わざわざ出かけて、能楽を楽しんだのですが、代わりに国立能楽堂で鑑賞することにしました。

このチケットが売り出し日にすでに完売というプラチナチケット、5月公演の隅田川も取れず、6月3日の「融(とおる)」が脇正面でようやく入手できました。能楽堂は、こじんまりとしていて、収納人数も多くないし、能楽はわずか一日の興行です。チケットを取るには、大変なことだと後から気づきました。

「融(とおる)」は、嵯峨天皇の十二皇子で、源氏物語のモデルにもなった源融(みなもとのとおる)です。最初は、老人の姿、そして、後半は雅な貴公子の姿で登場します。このとき、付ける面は「中将」。優雅な舞いは、ひととき、中世の世界に連れて行ってくれます。

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今回は、同時開催で、国立能楽堂 資料展示室での展示も見ることができました。

演目・主な出演者
狂言 若和布(わかめ)  佐藤 融(和泉流)
能  融(とおる) 酌之舞(しゃくのまい)  坂井 音重(観世流)