京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行・昼の部」に行ってきました

京都四條南座「當る申年 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎 四代目中村鴈治郎襲名披露」に行ってきました。

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1月の大阪松竹座から始まった鴈治郎襲名披露の締めくくりが京都。鴈治郎さんは、どうしても関西で見たかったので、望みが叶いました。

【玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場】

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山科閑居というのは、雪の降る中、嫁入り支度で、加古川本蔵の女房・戸無瀬が小浪を伴い大星由良之助の住まいを訪ねてくるというあらすじです。それが、玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記というのは、なんだろうと、疑問符が一杯。

玩辞楼十二曲の内
雁治郎が選んだ十二曲のうちのひとつ、とわかりました。

碁盤太平記、わからないのも当然。40年振りの上演だそうです。上演に当たっての苦労などは、扇雀さんのブログを拝見しました。

扇雀さんのお話によれば、

この作品も最初は近松門左衛門の原作に沿う形で上演されましたが渡辺霞亭の手が加えられて原作とは全く違った作品に変化していきました。そこには初代鴈治 郎の工夫とアイデアが凝縮されていますが、全てお客様に楽しんで頂く。また、自分自身が作品の良さをより出すために手を加えていくそして何よりもリアリ ティを目指すといったことから改訂が加えられて来ました。

初代の雁治郎さんもクリエイターだったのですね。偽りの放蕩を重ね、妻、そして、母も縁切りし、家から追い出す。それをみていた吉良家の間者も、大石には仇討ちする本懐なしと、手紙を手渡します。

実はそれも敵方と知って、油断させるために策を設けたこと。下僕岡平は、自らが吉良家の家臣、高村逸平太だと名乗り、最後は碁盤の目を使って、吉良家の屋敷見取り図を知らせます。たしかに忠臣蔵は、太平記の時代になぞらえていました。

息子の主税が父宛の密書を預かり、密かに読んでいると下僕岡平が忍び寄ってくる。今度は文盲のはずの岡平が密書を読んでいるのを主税が見咎める。 これは仮名手本の一力茶屋のパロディ。

最初にのどかに碁を指しているのが、最後にまた碁盤が登場するなど、ここそこに伏線があって、最後にはそれがひとつにまとまるという高度な技は、渡辺霞亭がストーリーテラーだからこそでしょう。

扇雀さんは、昨年の「藤十郎の恋」のような柔らかものが得意だと思っていましたが、大石のような忍を飲み込んだような役柄も似合います。

最後の場面で、明かりを消して、親子の対面、別れを告げるところ、そして、女房りくが傘を差出し、そして、手を引っ込めずにためらっているところ。夫婦の強い愛情を感じました。別れ際が、たっぷりしていて、きれいでした。

同じく、【玩辞楼十二曲の内 心中天網島の河庄】

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こちらは、愛想尽かしで、心中まではいきません。それだけに見せ場は、治兵衛の呼び戻しの演技です。くどくどと、腰は低くで、優しいひとなのですが、腹を立てると手が出る、足が出るという大坂のお人です。

見ているこちらは泣き笑いなのですが、演ずる側は気持ちが入らないとできないと思いました。

雁治郎さんもそのあたりを語っています。

「治兵衛は恋に病い、裏切られて腹を立て、兄にはグチグチ言い訳し、ひとり小春を思い出してしゃべる。お客様にもその世界に入っていただかないと」と話し、型としてではなく、気持ちで動いている、それこそが『河庄』治兵衛なのだ。

わたしは、それを呼び戻しの美学だと思います。普通の歌舞伎は、終わったら、花道を通って帰るだけ。それが呼び戻されて、また、芝居を始める。そこに華がなければ、単なるくどさに終わってしまいます。しょうもない奴やけれど、まあ、話を聞いてやるかという気分にならないと続きません。このたっぷり感は、関西にいると普通なんですが、お国柄なのでしょうか。

夜の部も楽しみです。

昼の部

近松門左衛門 作
渡辺霞亭 脚色

第一
玩辞楼十二曲の内 碁盤太平記(ごばんたいへいき)
山科閑居の場

大石内蔵助      扇雀
下僕岡平実は高村逸平太 愛之助
大石主税       壱太郎
医者玄伯       寿治郎
大石妻りく      孝太郎
大石母千寿      東蔵

第二
義経千本桜吉野山(よしのやま)

佐藤忠信実は源九郎狐  橋之助
静御前         藤十郎

第三
玩辞楼十二曲の内 心中天網島
河庄(かわしょう)

紙屋治兵衛    翫雀改め鴈治郎
紀の国屋小春   時蔵
江戸屋太兵衛   愛之助
五貫屋善六    亀鶴
丁稚三五郎    萬太郎(時蔵の次男)
河内屋お庄    秀太郎
粉屋孫右衛門   梅玉

第四
河竹黙阿弥 作
新古演劇十種の内 土蜘(つちぐも)

叡山の僧智籌実は土蜘の精  仁左衛門
平井保昌    左團次
侍女胡蝶    孝太郎
渡辺源次綱   進之介 (我當の息子)
坂田公時    男女蔵
碓井貞光    萬太郎
卜部季武    国生
巫子榊     梅枝
番卒藤内    愛之助
番卒次郎    橋之助
番卒太郎    扇雀
源頼光     梅玉

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