團菊祭五月大歌舞伎に行ってきました 昼の部

新歌舞伎座になって、三階席でも花道が2/3くらい見えるようになった。よい場所で見たいので、年会費を払って、松竹歌舞伎座会会員になっている。こちらは毎年の購入回数でランクが決まる。いまは、特別会員で、一般売りの二日前に購入できるようになった。

会員になると、毎月、「ほうおう」という雑誌が送られてきて、こちらに今月、来月の芝居のあらすじや見どころが載っている。会費はこの書籍代と思えば安い。

IMG_8612

五月は、大好きな菊五郎の出る團菊祭。團十郎はいないので、二人の見せ場はないが、その分、息子の菊之助が頑張っている。今回は、昼の部、夜の部と日を分けて鑑賞した。

IMG_8601

■摂州合邦辻
摂州合邦辻の玉手御前、菊之助が初役である。美しい継子、俊徳丸に恋を仕掛け、後を追ってくる。そして、父に刺されて初めて本心を打ち明ける場面など、見どころがたっぷり。菊之助の熱演に心打たれる。俊徳丸役の梅枝、最後に薬を飲んで元に戻るときに、いい男の色気が出るといいなあと思う。この人のために命を棄てようと思わせるいい男が必要なのだ。合邦道心役の歌六もよかった。片意地だが、筋を通そうとする姿がいい。

■通し狂言 天一坊大岡政談
初めてみる芝居だが、菊之助の悪役が見どころ。お世話になった老婆を殺すところから始まり、将軍家の御落胤と見せかけるために悪事を重ねる。池田大助を調べに使わすが、なかなか戻らないので、家族で切腹をしようと用意しているときに、大助がもどる。このあたりも忠臣蔵のパロディ調。お霜役の米吉が可愛くてうまい。この人は小粒でも存在感がある。これからが楽しみ。菊之助の満身の演技がよかった。もっと悪に徹してもいいのではと思う。二枚目が悪役をやるから、凄みがでるのだ。

昼の部
一、摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)
合邦庵室の場

玉手御前     菊之助
俊徳丸      梅 枝
浅香姫      尾上右近
奴入平      巳之助
合邦道心     歌 六
母おとく     東 蔵

二、通し狂言  天一坊大岡政談(てんいちぼうおおおかせいだん)
序 幕 紀州平野村お三住居の場
紀州加太の浦の場
二幕目 美濃国長洞常楽院本堂の場
三幕目 奉行屋敷内広書院の場
四幕目 大岡邸奥の間の場
大 詰 大岡役宅奥殿の場

大岡越前守     菊五郎
池田大助      松 緑
山内伊賀亮     海老蔵
お三        萬次郎
赤川大膳      秀 調
平石治右衛門    権十郎
下男久助      亀三郎
嫡子忠右衛門    萬太郎
お霜        米 吉
伊賀亮女房おさみ 宗之助
吉田三五郎     市 蔵
藤井左京      右之助
名主甚右衛門    家 橘
僧天忠       團 蔵
天一坊       菊之助
大岡妻小沢    時 蔵

銀座オペラ、『蝶々夫人』に行ってきました

有名なオペラの見どころを押さえた、ハイライト版の銀座オペラ。小川里美さん、高田正人さん、与那城敬さんのゴールデントリオに、オーケストラを一台で演奏してしまうという清水のりこさんのエレクトーン。

最初は、トスカでした。あまりの迫力とすばらしさに、半年後に再演、さらにバージョンアップして、椿姫。そして、2015年は、蝶々夫人と決まっていました。

この銀座オペラの特長は、こじんまりとしたホールで、歌い手さんたちとの距離が近い。まるで、自分のために歌ってくれているような錯覚に陥ります。

satos2

蝶々夫人を演ずる小川里美さんは、客席左手の通路から登場し、歌いながら舞台に登壇。ここで、お客様の心をぎゅっと掴んでしまいます。

ピンカートン役の高田正人さん、陽気で明るいけれど、一人の女の真実の愛に気づかず、哀しい永遠の別れとなるのです。長崎にはこんな青年がいたのだろうなあ、と思わせる役への入れ込みが見事です。

蝶々夫人は、最後まで明るさと、そして武家の娘の矜持を忘れずにいます。三年間も放っておかれて、生まれた子どもすら、認知されていないというのに、なぜあんなにも信じることができるのでしょうか。棄てられた女ではなく、帰りを待ち続ける可憐な乙女のような女性を熱演してくれました。清らかな無垢の心があるから、哀しみがいっそう悲劇を生むのです。

今回、初出演のスズキ役の鳥木弥生さんの忠実な女中、そして、抑えた演技の中で哀しみを表現するのが、巧みです。明治の女になりきっていました。

シャープレス役の与那城敬さん、年齢を重ねた役に、相手の心を思う気持ちが切々と表れます。この方の人柄のよさが役の上でもにじみ出ていました。すばらしい歌唱力。もっと大きなホールで聞きたいと思いました。

そして、エレクトーンの清水のりこさん。舞台で重要な音をひとりで表現しています。オーケストラなしに、コンサートホールで本格的なオペラが楽しめるのも、この方の努力の賜物。毎回、そう思いますが、今回も特にプッチーニの音色を上手にまとめていました。

演出、そして狂言回し役の彌勒忠史さん。今回は羽織袴の明治の正装で、舞台の進行を助けます。これだけの人数でハイライト場面だけを演じても、違和感のない演出の手腕は相当なものです。

今年もすばらしい黄金週間の幕開けになりました。コンサートが終わって、銀座の町を歩くのも楽しいのです。次回、ますます楽しみになりました。

 

 

【東京創元社】2015年新刊ラインナップ説明会に行ってきました

昨年に引き続き、今年も 2015年新刊ラインナップ説明会」に招待されて出かけてきました。4/20、開催場所は都内某所。もともと、報道関係者向けの説明会が、一般ブロガーにも抽選で招待枠があるのというものです。

「東京創元社」さんには、アガサ・クリスティのミステリー小説から、ヴァン・ボークトのようなSFまで、昔からお世話になっています。平成になって、こんなすてきなイベントに参加できるなんて、感激です。

推理小説、ミステリー、探偵小説、いろいろないい方はできますが、ミステリーを読むということは、時間を予約するということです。細切れの時間ではなく、通して一気に読み終えたい、そのためには、一作品あたりに、某かの時間配分が必要なのです。

そういう意味で、海外から、国内まで各営業担当者が力説する話題作、新作には、興味が引かれます。また、今回は、スペシャルゲストに、90年代のエラリークイーン、有栖川有栖さん、そして、平成のエラリークイーンの青崎有吾さんの対談が面白かったです。

有栖川有栖さんの作品は、かなりあるので、全部は読んでいませんが、国名シリーズを集めてしまいました。若くて、才気あふれる作品から、短編集、そして、数々のトリック。お二人のやり取りを聞いていて、イメージがどんどんと膨らんでいきます。有栖川さん、いまは、初心に帰って、クリスティを読み返しているとおっしゃっていましたが、それが次作にどんな影響をするのか、楽しみです。

海外作品も、優秀なものが目白押しで、これでは、眠る時間を削らなくてはいけませんね。

【東京創元社】では、webサイトも充実しています。期間限定で、全文無料公開があったり、お得感満載。メイルマガジンもありますので、登録することをお薦めします。

 

歌舞伎の楽しみ方講座 – 役者模様と判じ物 – に行ってきました

六本木のawaiさんでは、二つ月に一回くらい、着物に関わる文化講座を開いています。今回は、「歌舞伎の楽しみ方講座 – 役者模様と判じ物 -」ということで、出かけてきました。

講師は、岡田美穂(おかだ・みほ)さん。五月の歌舞伎座は、團菊祭だが、それにちなんで、成田屋さんの定紋である、三升、そして、替紋の杏葉牡丹の由来など、楽しく解説いただいた。
成田屋の「三升」

今の歌舞伎界でも市川家というのが主流だが、その中でも七代目團十郎の美的センスのすごさには、驚かされる。市川家に伝わる役者模様、六弥太格子(三升繋ぎ)、荒磯模様などこの人が作り上げている。

一方、もう一つの歌舞伎の名門、音羽屋は、「重ね扇に抱き柏」が定紋。

ほかに、四つ輪がある。替紋は、杏葉菊で、成田屋の牡丹を菊に替えただけ。雑司ヶ谷にある梅幸の墓所の家紋は、この杏葉菊だそうだ。見に行ってみたい気がする。

調べていたら、歌舞伎美人でも、文様の特集をしていたので、こちらも紹介する。
役者紋を纏う

判じ絵というのは、謎解きのようなもの。縦三本、横三本の縞に「中」と「ら」をあしらった中村格子。【中】と、線が6つで【む】そして、【ら】で中村屋。

岡田先生いわく、縦横の線の数がキーポイントになるそう。

そして、最期に先生自身のお着物が、判じ物。江戸小紋の雨降り柄に裏地が筍。これは何を意味するのか。
IMG_7899

答え、雨後の筍。

江戸は、贅沢禁止令がたびたび出て、豪奢を禁止された。その分、裏地に凝ったり、文様のバリエーションを作ったのではないか。江戸の文化の成熟度を感じさせる話しだった。

歌舞伎の楽しみ方は、六本木稽古場でも今後開催される。ご興味のある方は、ぜひ、お出かけください。

 
グルメ食品・ギフトを通販でお取り寄せ!ぐるなび食市場

桜の季節の着物

桜がいっせいに咲き始めて、今日の風で少し散ったが、まだまだ見頃。この時期だけ、着る着物がある。桃色の寿光織の付け下げ。樹木模様だ。桜と競うことはないので、ひっそりと着ている。

今年はこちらにペルシャ柄の袋帯を締めて、上野公園まで出かけた。

IMG_7872

お花見も途中して、上野精養軒で同窓会幹事の食事会。こんな贅沢な食事会も久しぶり。歩いたので程よくお腹も空いて、フレンチのコースは美味。お天気もよく、行き帰りに、上野の花を楽しむことができた。

今年の上野は静かだった。発電機の持ち込み禁止。煮炊き禁止。カンテラのみ可ということで、カラオケをするひともいない。

名所といわれる九段下のお堀にもいってみたい。桜の季節は、地元でも楽しめる。散り染めもまた、いい。今年は桜を堪能しようと思う。

 

伝統芸能の伝承と人材育成、シンポジウムに出かけてきました

いささか、旧聞に属する話しだが、3/7に開かれた「伝統芸能の伝承と人材育成」というシンポジウムは、興味深かった。イノベーション・マネジメント研究センタが主催で、伝統芸能での伝承はどのように行なわれているかの事例発表があった。

登壇するひとが、司会者の田路則子さん、スピーカの田路則子さん、西尾 久美子さんお三方がお着物。それだけで、会場は華やいで見える。大学の先生の着物姿というのも知的に美しい。

講演1「稽古と師弟関係に与える影響」
柳原 佐智子(富山大学経済学部准教授)
第一部の茶道は、インターネットを使ってお手前を教えるということだったが、初めての人ではなく、すでにお稽古に通われていたひとが、海外転勤などで、お稽古をやむなく中断しなければならなかったときに、インターネットを使って、所作の練習、アドバイスなどをいただけ、繋がることができるという話しだ。国内でも結婚や転勤などで、従来のお師匠に通うことができなくなった時も、この方式で繋がっていることができる。ビデオなどによる学習とはちがい、所作をひとつひとつ確かめながらできるのがすばらしい。

講演3「『型付』と所作単元 ―能の技芸を伝える方法―」
山中 玲子(野上記念法政大学能楽研究所所長・教授)
第二部の能楽は、型付と所作単元を組み合わせることにより、能楽が習えることを教えてくれた。わたしが実際に、熊野(ゆや)を習ったのは、市の教育講座で10回シリーズ。ここでは、謡から始まり、摺り足とよばれる歩行法、そして、所作を習う。その経験を踏まえながらのお話なので、わかりやすかった。

講演4 「プロフェッショナル人材『能楽師』の育成」
西尾 久美子(京都女子大学現代社会学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
第二部の後半は、能楽師がプロの能楽師を教える話。子方から始まり、第一期 25歳までに基礎技能を徹底して教える。第二期は35歳頃まで、演目によるテーマの違いを理解させ、基礎の徹底と演技の結びつきを知る。

第三期は45歳頃まで。この頃になるとテーマの解釈における独自性を探求する。また基礎の充実とそれを活かした演技を両立する。

第四期は45歳頃から。テーマの解釈を探求し、表現を極める。

この間、プロの能楽師なので、当然舞台にたち、OJTをする。経験で学ぶのだ。そして、ひとりの能楽師が40年から50年かけて成長していく。能楽にはその年齢にふさわしい番組があるので、それをうまく教えながら、学んでいく。

3/9に見たのは、この第二期の若手能楽師。そして、3/20に見たのは、第四期の円熟した能楽師。そこで得る感想が異なるのも当然のことだと思う。若手には若手だからできる演目があるのだから、どの世代でも、お客様に満足してもらえると思う。

 

以下、 発表資料から、抜き書きする。

法政大学イノベーション・マネジメント研究センターと野上記念法政大学能楽研究所は、3月7日(土)にシンポジウムを開催いたします。

日本の伝統文化の源流である「能楽」と「茶道」のフィールドに、技能継承と人材育成という経営学的観点からアプローチします。学習、実践知、チームマネジメント、キャリア形成という切り口から探訪する伝統芸能の世界です。

日時     3月7日(土)13:30~17:30(開場13:00)
会場     法政大学市ケ谷キャンパス 外濠校舎6階 薩埵ホール
(アクセス)東京都千代田区富士見2-17-1
JR、地下鉄飯田橋駅または市ヶ谷駅より徒歩約10分
市ケ谷キャンパス

参加費     無料
プログラム     《総合司会》 田路 則子
(法政大学イノベーション・マネジメント研究センター所長、経営学部教授)
13:00     開場
13:30     開会挨拶 田路則子
第1部 インターネットを利用した茶道の学習
13:35     講演1「稽古と師弟関係に与える影響」
柳原 佐智子(富山大学経済学部准教授)
14:15     講演2「実践共同体としての社中」
古賀 広志(関西大学総合情報学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
休憩
第2部 能の技芸伝承
15:05     講演3「『型付』と所作単元 ―能の技芸を伝える方法―」
山中 玲子(野上記念法政大学能楽研究所所長・教授)
15:45     講演4 「プロフェッショナル人材『能楽師』の育成」
西尾 久美子(京都女子大学現代社会学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
休憩
16:35     パネルディスカッション
《司会》田路 則子
《パネリスト》柳原 佐智子、古賀 広志、山中 玲子、西尾 久美子
定員     先着200人(定員に達し次第締め切り)
主催 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
野上記念法政大学能楽研究所

国立能楽堂で、「頼政」を鑑賞

3月9日に、国立能楽堂で、若手の研修発表会を見た。「田村」は力強くよかった。そのときに、思ったことがある。経験と円熟の技は、いかほど違うのかと。

IMG_7617

そして、3/20の定例公演で、喜多流の「頼政」を見た。すると、最初の笛から違っていた。笛、小鼓、大鼓が競演している。どこが山場なのか分かっているから、安心してみていられる。ワキの旅僧 森常好がすばらしい。声がいいので、最初から物語に魅せられてしまう。能楽ってこんなにもどきどきするものだったのか、と久しぶりにうれしかった。

源頼政の霊 粟谷能夫も、哀しさを表現していてすてきだった。くぐもった声も、字幕音声ガイドに助けられて、意味がわかると、ぐいぐいと引き込まれていく。宇治川を平家方がせめて来る様子も、リアルな描写だ。武人としての最期も雅。

「埋もれ木の花咲くこもなかりしに」
舞台は、宇治の平等院。宇治川を渡り平家方が押し寄せ、これまで悟った頼政は、覚悟を決めて、芝の上に扇を敷いて、辞世の歌を詠み自害する。

埋もれ木の 花咲くことも なかりしに身のなる果てぞ 哀れなりける

その場所が「扇の芝」と言って、平等院の正面入口から鳳凰堂へ至る道の左側(観音堂横)にあるそうだ。音声ガイドは、日本語、英語とあるから、外国人も楽しめるはず。

今年は定例公演になんどか通うようになると思う。

 

2015年3月20日 (金) 午後6時半  国立能楽堂 定例公演

■狂言 苞山伏(つとやまぶし)
シテ / 山伏 高澤祐介 アド / 山人 三宅右矩 小アド / 使いの者 三宅右近

■能 頼政(よりまさ)
前シテ / 老人、後シテ / 源頼政の霊 粟谷能夫
ワキ / 旅僧 森常好
アイ / 所の者 石田幸雄
笛 松田弘之 小鼓 鵜澤洋太郎 大鼓 白坂保行
後見 友枝昭世 狩野了一
地謡 佐々木多門 粟谷充雄 内田成信 大島輝久
中村邦生 粟谷明生 出雲康雅 長島茂

通し狂言、菅原伝授手習鑑を見てきました

菅原伝授手習鑑」はよく上演される演目です。通し狂言もなんどか行なわれています。でも、今回は、染五郎が初役で松王丸、菊之助が桜丸を昼夜で演ずるという画期的なもの。ゆっくりと楽しみたいので、昼の部、夜の部と二回に分けて鑑賞しました。IMG_7255

物語の発端は、加茂堤。
帝の弟、斎世(ときよ)親王と菅丞相の娘、苅屋姫が逢い引きし、それを政敵、藤原時平の家来に見とがめられ、桜丸が必死に応戦し、二人は落ち延びます。桜丸の身分は舎人、恋の取り持ちが思わぬ悲劇へと進みます。この春の場面、パリのオペラバスチーユでみた、ワルキューレの春のシーンが思い起こされてなりませんでした。

季節はのどかな春、手紙を交わして、今日ようやく会うことができた二人、そして、忍び寄る不幸。17歳の斎世親王と、恥じらいながら牛車に入る苅屋姫。若手の萬太郎と壱太郎が演ずるから可憐な印象になります。菊之助の桜丸は、品があって優しく、女形も演ずる役者だからと思いました。八重を演ずる梅枝も、いい女形になってきました。こんな女房がいたらいいなあ、と思います。

そして、名作といわれるのにふさわしい涙と別れの場面が随所に散りばめられています。江戸の観客たちは、自分たちの別れと重ねて、密かに涙したのでしょうか。妻との別れ、子との別れ、親子の別れ。さまざまな別れの中に、筆法伝授もあり、また、主君、菅丞相の実子、菅秀才とその妻、園生の前を無事助けることができるのです。

特に寺子屋といわれる場面では、菅秀才の首を差出せという難題に、頭を抱えた武部源蔵が、その日、寺子屋に入学した品のよい男の子を身代わりに殺して、その首を松王丸に首実検させます。こんな無体なことも、主君への忠義のためと、人殺しをします。その首を確かめた松王丸は、違いないといい、無事、難を逃れることができました。

この首は、松王丸の実子、小太郎で、わざわざ身代わりに差出したのでした。お家のため、子どもを犠牲にして、忠義を尽くすというのは、仙台萩にも出てきます。この苦しい選択は、封建社会の武家奉公には、付きものだったのかもしれません。跡付きがなければ、お家は断絶。家来家臣は路頭に迷います。武家ものの残酷さは、上方の和事とはまた、ひと味違うと思いました。観客に武家のひとがいるから、共感を呼ぶのでしょう。宿下がりのお女中たちは、あるある、こんな話し聞いたことがあると、ひとしきり盛り上がったことと思います。

子どもを亡くした夫婦は、白装束に着替えて、野辺送りをすませ、それからどこに行くのでしょう。松王丸を演じた染五郎は、また初々しさを残して、哀しみを表現していました。男役にもぜひぜひ、挑戦してほしいと思います。

この三つ子の兄弟、それぞれに仕えるところが違います。
桜丸  桜なので宮中、斎世(ときよ)親王
梅王丸 梅なので菅原道真、菅丞相
松王丸 松は徳川、松平、そして平安時代に擬して藤原時平と覚えると分かりやすいです、徳川家批判の意味も込められているのではと思いました。

昼の部
通し狂言『 菅原伝授手習鑑 』すがわらでんじゅてならいかがみ
【序 幕 加茂堤(かもづつみ)】
桜丸     菊之助
八重     梅 枝
斎世親王     萬太郎
苅屋姫     壱太郎
三善清行     亀 寿

【二幕目 筆法伝授(ひっぽうでんじゅ)】
菅丞相    仁左衛門
武部源蔵    染五郎
梅王丸    愛之助
戸浪    梅 枝
左中弁希世    橘太郎
腰元勝野    宗之助
三善清行    亀 寿
荒島主税    亀三郎
局水無瀬    家 橘
園生の前    魁 春

【三幕目 道明寺(どうみょうじ)】
菅丞相     仁左衛門
立田の前     芝 雀
判官代輝国     菊之助
奴宅内     愛之助
苅屋姫     壱太郎
贋迎い弥藤次     松之助
宿禰太郎     彌十郎
土師兵衛     歌 六
覚寿     秀太郎

夜の部
通し狂言『 菅原伝授手習鑑 』すがわらでんじゅてならいかがみ
【四幕目 車引】
梅王丸     愛之助
松王丸     染五郎
桜丸     菊之助
杉王丸     萬太郎
藤原時平公     彌十郎

【五幕目 賀の祝】
桜丸     菊之助
松王丸     染五郎
梅王丸     愛之助
春     新 悟
八重     梅 枝
千代     孝太郎
白太夫     左團次

【六幕目 寺子屋(てらこや)】寺入りよりいろは送りまで
松王丸    染五郎
武部源蔵    松 緑
戸浪    壱太郎
涎くり与太郎    廣太郎
菅秀才    左 近
下男三助    錦 吾
春藤玄蕃    亀 鶴
園生の前    高麗蔵
千代    孝太郎

グルメ食品・ギフトを通販でお取り寄せ!ぐるなび食市場

能楽研修発表会 第六回青翔会に行ってきました

国立能楽堂で、年に二回開催される若手能楽師による青翔会。今年は「田村」があるので、楽しみに出かけてきました。舞囃子は、よく知っている三輪(みわ)があって楽しめました。

「田村」とは、坂上田村麿のことで、戦について語る修羅能です。これだけの動きのある舞台は、やはり若手ならでは。会場でもよかったという声を多く聞きました。

この研修発表会、いつも気づくのが遅く、今回もようやくチケットを取ることができました。昔は無料で抽選制だったのですが、指定席になって、行きやすくなりました。次回からは、昼間の番組になるそうです。

以下は、案内パンフからの抜粋。

能楽(三役)研修修了生をはじめとする若手能楽師の研鑽の場である青翔会。狂言『仏師』野村太一郎、舞囃子『半蔀』辰巳大二郎、舞囃子『三輪』金春憲和、能『田村』武田祥照の内容です。

すっぱ(詐欺師)と田舎者の頓狂なやり取りが楽しい『仏師』、光源氏との恋を偲ぶ夕顔が切なく舞う『半蔀』、三輪山伝説に取材した『三輪』。能『田村』は、桜舞い散る清水寺を背景に、坂上田村麿が勝ち戦の様子を勇壮に舞います。

若手能楽師たちの渾身の舞台にどうぞご期待ください。
公演期間    2015年3月9日(月)
開演時間    午後4時開演(午後7時15分頃終演予定)

演目・主な出演者
狂言  仏師(ぶっし)       野村 太一郎(和泉流)
舞囃子 半蔀(はしとみ)      辰巳 大二郎(宝生流)
舞囃子 三輪(みわ)      金春 憲和(金春流)

能 田村(たむら)         武田 祥照(観世流)

FOODEX JAPAN2015で、イタリア・ワイン・セミナに行ってきました

FOODEX JAPANは、アジア最大の食品展示会です。今年は、イタリア・ワイン・セミナが開催されるということで、参加してきました。

主催は、AIS (Associazione Italiana Sommelier)。ソムリエの育成を主な活動とし、50年の歴史をもち、約400,000名のソムリエを育成。大学やホテル学校などとのコラボレーションも行なっている。

IMG_7275

会場は、セミナルームB。限られた一時間という枠の中で、5つのワインのテイスティングを行ないました。解説はAISの会長、アントネッロ・マイエッタさん。

最初は、スプマンテでした。
寒いところでとれる、麦わら色、気泡が長く続く、フレッシュな香り、焼きたてのパン、シトロンの皮のよう、と豊かな表現が続きます。シャルドネがエレガントさを与え、豊かな印象なります。魚介類、海老が合いますが、お寿司にも合います。
IMG_7279IMG_7280

二番目、三番目と白です。
IMG_7284IMG_7286
二番目は、フリウラーノ Friulano 100%という珍しいもの。年間25,000しか生産されません。イタリアワインは、地域性が特徴で、小ロットが当たり前です。
こちらは、黄金の色合い、ボディがしっかりしている。アーモンドの香り、口に含むと、味わいが広がっていく、複雑性がある。魚介類、しっかりとしたソースにも合います。

三番目は、シチリア産です。熟した実、蜂蜜、アカシアの香り、甘いバニラ。シャルドネが柔らかな優雅さを作り上げています。バリックを使ったワインです。

さて、ここからが赤ワインになります。四番目、五番目を紹介します。
IMG_7289IMG_7290
四番目のBarbarescoは、画面では2008年と表示されていますが、実際にティスティングしたのは、1998年もの。この年もすばらしいビンテージの年でした。若々しいタンニンが17年の歳月を経て、まろやかになります。色は爽やかな赤、透明感があります。スミレの香り、シナモン、黒こしょうも混ざっています。まだまだ熟成するワインです。

五番目は、サンジョベーゼ100。大きな樽で熟成しています。フレッシュなスミレの香り、タンニンが広がります。しっかりとしたボディです。イタリアを代表するトスカーナのワインです。

このようにメモ書きを列挙しているだけでもわかるが、イタリアワインのレパートリーの広さ。そして、それを表現する言葉の豊かさ。ワインとなるぶどう品種だけで、3000品種もあり、それぞれがその特徴を活かしたワイン作りをしているのです。イタリアのように、北から南まで、1500kmにも渡り、気象条件、日照条件、風向きなどその組み合わせだけでも気の遠くなるような品種の多様さですね。

ワインのことが少しわかるようになると、それに合わせて食事のコースも変わってきます。貴重な機会に参加できて本当によかったです。

グルメ食品・ギフトを通販でお取り寄せ!ぐるなび食市場