いささか、旧聞に属する話しだが、3/7に開かれた「伝統芸能の伝承と人材育成」というシンポジウムは、興味深かった。イノベーション・マネジメント研究センタが主催で、伝統芸能での伝承はどのように行なわれているかの事例発表があった。
登壇するひとが、司会者の田路則子さん、スピーカの田路則子さん、西尾 久美子さんお三方がお着物。それだけで、会場は華やいで見える。大学の先生の着物姿というのも知的に美しい。
講演1「稽古と師弟関係に与える影響」
柳原 佐智子(富山大学経済学部准教授)
第一部の茶道は、インターネットを使ってお手前を教えるということだったが、初めての人ではなく、すでにお稽古に通われていたひとが、海外転勤などで、お稽古をやむなく中断しなければならなかったときに、インターネットを使って、所作の練習、アドバイスなどをいただけ、繋がることができるという話しだ。国内でも結婚や転勤などで、従来のお師匠に通うことができなくなった時も、この方式で繋がっていることができる。ビデオなどによる学習とはちがい、所作をひとつひとつ確かめながらできるのがすばらしい。
講演3「『型付』と所作単元 ―能の技芸を伝える方法―」
山中 玲子(野上記念法政大学能楽研究所所長・教授)
第二部の能楽は、型付と所作単元を組み合わせることにより、能楽が習えることを教えてくれた。わたしが実際に、熊野(ゆや)を習ったのは、市の教育講座で10回シリーズ。ここでは、謡から始まり、摺り足とよばれる歩行法、そして、所作を習う。その経験を踏まえながらのお話なので、わかりやすかった。
講演4 「プロフェッショナル人材『能楽師』の育成」
西尾 久美子(京都女子大学現代社会学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
第二部の後半は、能楽師がプロの能楽師を教える話。子方から始まり、第一期 25歳までに基礎技能を徹底して教える。第二期は35歳頃まで、演目によるテーマの違いを理解させ、基礎の徹底と演技の結びつきを知る。
第三期は45歳頃まで。この頃になるとテーマの解釈における独自性を探求する。また基礎の充実とそれを活かした演技を両立する。
第四期は45歳頃から。テーマの解釈を探求し、表現を極める。
この間、プロの能楽師なので、当然舞台にたち、OJTをする。経験で学ぶのだ。そして、ひとりの能楽師が40年から50年かけて成長していく。能楽にはその年齢にふさわしい番組があるので、それをうまく教えながら、学んでいく。
3/9に見たのは、この第二期の若手能楽師。そして、3/20に見たのは、第四期の円熟した能楽師。そこで得る感想が異なるのも当然のことだと思う。若手には若手だからできる演目があるのだから、どの世代でも、お客様に満足してもらえると思う。
以下、 発表資料から、抜き書きする。
法政大学イノベーション・マネジメント研究センターと野上記念法政大学能楽研究所は、3月7日(土)にシンポジウムを開催いたします。
日本の伝統文化の源流である「能楽」と「茶道」のフィールドに、技能継承と人材育成という経営学的観点からアプローチします。学習、実践知、チームマネジメント、キャリア形成という切り口から探訪する伝統芸能の世界です。
日時 3月7日(土)13:30~17:30(開場13:00)
会場 法政大学市ケ谷キャンパス 外濠校舎6階 薩埵ホール
(アクセス)東京都千代田区富士見2-17-1
JR、地下鉄飯田橋駅または市ヶ谷駅より徒歩約10分
市ケ谷キャンパス
参加費 無料
プログラム 《総合司会》 田路 則子
(法政大学イノベーション・マネジメント研究センター所長、経営学部教授)
13:00 開場
13:30 開会挨拶 田路則子
第1部 インターネットを利用した茶道の学習
13:35 講演1「稽古と師弟関係に与える影響」
柳原 佐智子(富山大学経済学部准教授)
14:15 講演2「実践共同体としての社中」
古賀 広志(関西大学総合情報学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
休憩
第2部 能の技芸伝承
15:05 講演3「『型付』と所作単元 ―能の技芸を伝える方法―」
山中 玲子(野上記念法政大学能楽研究所所長・教授)
15:45 講演4 「プロフェッショナル人材『能楽師』の育成」
西尾 久美子(京都女子大学現代社会学部教授、イノベーション・マネジメント
研究センター客員研究員)
休憩
16:35 パネルディスカッション
《司会》田路 則子
《パネリスト》柳原 佐智子、古賀 広志、山中 玲子、西尾 久美子
定員 先着200人(定員に達し次第締め切り)
主催 法政大学イノベーション・マネジメント研究センター
野上記念法政大学能楽研究所