3月歌舞伎公演「梅雨小袖昔八丈-髪結新三-」を見てきました

国立劇場の3月歌舞伎公演は、「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)-髪結新三-」「三人形(みつにんぎょう)」。

橋之助が初役で新三を演ずるというので、出かけてきました。三月歌舞伎は、ブログ形式の特設サイトもあって、先にこちらで学習すれば、意味がよくわかります。わたしはすでに、菊五郎の髪結新三を何度か見ているので、橋之助に、いなせな江戸っ子がどこまで出せるのかと楽しみにしていました。

河竹黙阿弥が、五代目尾上菊五郎のために、書き下ろした作品ということで、音羽屋には、有利なしぐさが多いのです。他の役柄ともリンクして、「早見勘平」や、「弁天小僧」など、いい男をなんども演じている自信が、なるほどと思わせる場面がたくさんあります。

たとえば、大家さんが交渉成立して、娘お熊を駕篭に乗せて帰すとき、これは、お軽が身売りして、連れて行かれるのを勘平が止めるところのパロディです。みていて、ああこの場面、知っているという観客の心理が、新三に肩入れさせるのです。

また、大家が三十両を渡すとき、ここは、弁天小僧が帰る時、南郷力丸が分け前を要求する場面。力丸が、おまえ、忘れているものはないかいと、声をかけます。大家は弁天小僧きどりで、懐に手を入れて、おっと忘れるところだった、というのです。

河竹黙阿弥が、菊五郎の芝居を知り尽くしていて、随所にこんな遊びをいれているのですから、ファンは心を掴まれます。芝居の面白さがミルフィーユの階層のように、重ねられているのです。

橋之助も熱演していますが、粋な小悪党という点では、いい人過ぎます。彼は色悪を演ずるには、まだ若いのかもしれません。初演だから、きっと、次回はもっと工夫して、役を自分のもとにするでしょう。これは、年齢や経験を積むことで、苦労して得るもので、見る側が気長に待つことも大切。音羽屋の菊之助も、弁天小僧の初役は、大変でした。その後の成長振りをみれば、分かることですが、稽古を重ね、精進しかないのでしょう。

老獪なのが、新三の店子の大家さん、團蔵の枯れた演技のなかで、ドスを効かせ、貰った三十両の半分を巻き上げるすごさ。これが江戸の歌舞伎の面白さなんです。菊五郎の新三をみたときは、いつも江戸の時代には、こんな悪党がいたのだろうなあ、という共感があります。悪いやつなんだが、憎めないところがある。だから、明日へと繋がるのです。

お熊役の児太郎も、可憐なそして色気もある、江戸の娘をたくみに演じていました。この人の娘役も楽しみです。

第二部の三人形の趣向も面白かったです。
時は、春。花の吉原に置かれた「三人形」は、若衆(錦之助)・傾城(児太郎)・奴(国生)。この人形に魂が入って、それぞれが踊りだすという趣向の歌舞伎舞踊です。常磐津連中の奏でる音曲の中、三人が気持ちよさそうに踊る姿は、江戸のある日の再現のよう。音楽と踊りの歌舞伎ならではの演目でした。

河竹黙阿弥=作
梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかしはちじょう)
- 髪結新三 – 三幕六場

序 幕 白子屋見世先の場
永代橋川端の場

二幕目 冨吉町新三内の場
家主長兵衛内の場
元の新三内の場

大 詰 深川閻魔堂橋の場

三人形(みつにんぎょう) 常磐津連中
国立劇場美術係=美術

(出演)
中 村 橋之助
中 村 錦之助
市 川 門之助
中 村 松  江
中 村 児太郎
中 村 国  生
坂 東 秀  調
市 村 萬次郎
市 川 團  蔵

ほか

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