銀座オペラ、『蝶々夫人』に行ってきました

有名なオペラの見どころを押さえた、ハイライト版の銀座オペラ。小川里美さん、高田正人さん、与那城敬さんのゴールデントリオに、オーケストラを一台で演奏してしまうという清水のりこさんのエレクトーン。

最初は、トスカでした。あまりの迫力とすばらしさに、半年後に再演、さらにバージョンアップして、椿姫。そして、2015年は、蝶々夫人と決まっていました。

この銀座オペラの特長は、こじんまりとしたホールで、歌い手さんたちとの距離が近い。まるで、自分のために歌ってくれているような錯覚に陥ります。

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蝶々夫人を演ずる小川里美さんは、客席左手の通路から登場し、歌いながら舞台に登壇。ここで、お客様の心をぎゅっと掴んでしまいます。

ピンカートン役の高田正人さん、陽気で明るいけれど、一人の女の真実の愛に気づかず、哀しい永遠の別れとなるのです。長崎にはこんな青年がいたのだろうなあ、と思わせる役への入れ込みが見事です。

蝶々夫人は、最後まで明るさと、そして武家の娘の矜持を忘れずにいます。三年間も放っておかれて、生まれた子どもすら、認知されていないというのに、なぜあんなにも信じることができるのでしょうか。棄てられた女ではなく、帰りを待ち続ける可憐な乙女のような女性を熱演してくれました。清らかな無垢の心があるから、哀しみがいっそう悲劇を生むのです。

今回、初出演のスズキ役の鳥木弥生さんの忠実な女中、そして、抑えた演技の中で哀しみを表現するのが、巧みです。明治の女になりきっていました。

シャープレス役の与那城敬さん、年齢を重ねた役に、相手の心を思う気持ちが切々と表れます。この方の人柄のよさが役の上でもにじみ出ていました。すばらしい歌唱力。もっと大きなホールで聞きたいと思いました。

そして、エレクトーンの清水のりこさん。舞台で重要な音をひとりで表現しています。オーケストラなしに、コンサートホールで本格的なオペラが楽しめるのも、この方の努力の賜物。毎回、そう思いますが、今回も特にプッチーニの音色を上手にまとめていました。

演出、そして狂言回し役の彌勒忠史さん。今回は羽織袴の明治の正装で、舞台の進行を助けます。これだけの人数でハイライト場面だけを演じても、違和感のない演出の手腕は相当なものです。

今年もすばらしい黄金週間の幕開けになりました。コンサートが終わって、銀座の町を歩くのも楽しいのです。次回、ますます楽しみになりました。

 

 

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