『ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり』出版記念トークショー

ヘザー・ブラッキンさんのすてきな日常の暮らしを写真と文章で見せてくれる著書『ふつうの住まいでかなえる外国スタイルの部屋づくり』の出版記念トークが、11/29、渋谷のHouzz Japan(ハウズ・ジャパン株式会社)に開催され、行ってきました。

凝ったインテリアを購入するのではなく、身近なところにあるシンプルで、上質な暮らしという点で、共感を覚えました。棚もご自分で作ってしまうというのにもびっくり。ペンキ塗りのお話も楽しそうでした。 色へのこだわりは、シンプルな生活へのこだわりでした。

へザーさんともお話できて、和やかな楽しい会でした。ご本も購入しましたが、すぐにできそうなヒントが満載。 居心地のよい部屋をつくるためのヒントもたくさんあります。

本のタイトルを隠して、わざと裏をみせるとか、色へのこだわりを感じました。

お母さまは、作家の森瑤子さん。お母さまのコーナーもあって、見守ってもらっているのだそうです。 すてきな親子ですね。12月になるまえに、お話をうかがえてよかったです。

10月歌舞伎公演「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」第一部

国立劇場 50周年記念イベントのひとつ、仮名手本忠臣蔵を全段上演というのが始まりました。 これまでも何回もみていますが、全段というのは初めてです。

塩冶判官が中村梅玉、顔世御前が片岡秀太郎というのも、上方風で面白かったです。高師直がいじめるのは、今で言うパワーハラスメント、昔からあったのですね。

見たことのない、腰元おかると、早野勘平の逢引の場面も出てきて、のちにおかるが遊女になるのも、そのあだっぽさでは、仕方がないのかもしれないと思いました。慎み深く教養のある腰元ではなく、本当に明るくて、おきゃんで、軽いのです。

二人の道行きは美しいです。その先に死が待っているからでしょうか。しあわせになりたかったけれど、なれない二人の哀しさが伝わってきます。

特設サイト http://www.ntj.jac.go.jp/50th/kabuki_chushingura/

【第一部】 四幕九場
国立劇場美術係=美術

大  序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場
二段目 桃井館力弥使者の場
同   松切りの場
三段目 足利館門前の場
同   松の間刃傷の場
同   裏門の場
四段目 扇ヶ谷塩冶館花献上の場
同   判官切腹の場
同   表門城明渡しの場

(主な配役)
【大 序】
塩冶判官     中 村 梅  玉
顔世御前     片 岡 秀太郎
足利直義     中 村 松  江
桃井若狭之助 中 村 錦之助
高師直       市 川 左團次

【二段目】
桃井若狭之助 中 村 錦之助
本蔵妻戸無瀬 市 村 萬次郎
大星力弥     中 村 隼  人
本蔵娘小浪   中 村 米  吉
加古川本蔵   市 川 團  蔵

【三段目】
塩冶判官    中 村 梅  玉
早野勘平    中 村 扇  雀
桃井若狭之助 中 村 錦之助
鷺坂伴内    市 村 橘太郎
腰元おかる    市 川 高麗蔵
加古川本蔵   市 川 團  蔵
高師直       市 川 左團次

【四段目】
大星由良之助     松 本 幸 四 郎
石堂右馬之丞     市 川 左 團 次
薬師寺次郎左衛門 坂 東 彦 三 郎
大鷲文吾         坂 東 秀    調
赤垣源蔵         大 谷 桂    三
織部安兵衛       澤 村 宗 之 助
千崎弥五郎       市 村 竹    松
大星力弥         中 村 隼    人
佐藤与茂七       市 川 男    寅
矢間重太郎       嵐    橘 三 郎
斧九太夫         松 本 錦   吾
竹森喜多八       澤 村 由 次 郎
原郷右衛門       大 谷 友右衛門
顔世御前         片 岡 秀 太 郎
塩冶判官         中 村 梅   玉
ほか

国立演芸場で、落語を聞いてきました

夏に弱いはずなのに、京都の祇園祭を皮切りに、結構出かけています。特に夏の夜の落語鑑賞は最高の娯楽。同期生の主催するイベントに参加させていただきました。

今回は、東銀座でオペラビューイングのチケットを予約し、そこから都営バス [都03] 四谷駅行で、三宅坂に向かいます。築地の停留所は東劇ビルの前。少し築地側に戻ると、屋根付きの停留所があります。こちらでは、東京駅、新橋駅行きがあって便利です。三宅坂までは17分、地下鉄を乗り換え、半蔵門から歩くよりずっと楽しい。

夜の部は貸切で、18時開演ですが、最初は前座、この方は、プログラムの捲りをしたり、座布団を裏返したりと、忙しいです。続いて、二つ目。この辺りから、笑いを取るというか、面白くなってきます。落語が続くと飽きないように、曲芸や奇術などがあって、最後のオオトリが、柳亭市馬(りゅうてい いちば)。柳家小さんの弟子で、落語協会会長なんですね。

今回の出し物は『らくだ』。長屋でも鼻つまみ者のらくだというあだ名の男が、河豚に当たって死んでいるのを、兄貴分の男がみつけて、葬儀を行ってやりたい、しかし、金はない。そこに通りかかった屑屋、つかまって、いろいろと手伝いをさせられる。ケチで有名な大家からも酒と料理を出させて、こき使う。

そんな人情噺を聞かせてもらいました。最後まで聞きたかったが、屑屋が酒を勧められて、酔って人間が豹変して、今度は兄貴分を怒鳴りつけるというオチ。こういうのを見ると、独演会でたっぷりと聞きたい気になるから不思議です。

石山源氏と、源氏供養を見てきました

7月の国立能楽堂は『能のふるさと・近江』の特集企画でした。その最終日の演目が、《源氏供養》。なかなか上演されることのない曲です。京都に行く前に日程を確認し、チケットも取れました。

当日は、源氏にちなんで、絽の一つ紋に牡丹の帯、帯揚げは撫子で出かけました。能楽の前には狂言があるのですが、今回は、箏曲「石山源氏」。こちらは、続けて演奏されることは稀なことのようです。なにしろ、能楽堂の舞台に五つの琴が並ぶのですから、何が起きるのだろうかと、どきどきします。能楽の囃し方と較べ、五つ紋の黒留袖の女性が登場し、唄、琴、三弦、笛と奏でるのは華やかで、心躍る世界です。

この箏曲「石山源氏」、今年が石山寺の本尊の如意輪観世音菩薩が、33年に一度の御開扉ということで、特別に企画されたようです。リンク先に歌詞が載っていますが、ほんとうに流れるように美しい。今回は、 山田流箏曲家家元の山勢松韻が唄い、最高級の供養になったのではないでしょうか。

続いて、源氏供養。紫式部が能楽の題材になっているのというのも珍しく、そして、こちらも上演されることが珍しい曲。源氏が主題なので、格調高く、優美で、平安のみやびな世界を想像させます。

近江の石山寺に詣でたので、あの風景も浮かび、話にすっと入っていけました。石山寺で、雅楽を聞いたのも、こちらの演目をみることができたのも、源氏のおかげ。ありがたくもあり、みんなに感謝したい気持ちで帰ってきました。

 

シテ方宝生流・武田孝史氏インタビュー

日本文学全集12 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 刊行記念トークイベントに行ってきました

日本文学全集12 『松尾芭蕉 おくのほそ道/与謝蕪村/小林一茶/とくとく歌仙』 刊行記念トークイベント@東京堂ホール
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池澤夏樹個人編集の日本文学全集、前評判も高く、斬新、ユニーク、愉しいとの書評もあり、気になるところから集めています。久々の全集物、河出書房新社の社運をかけた事業でもあります。

個人的には、昔々、河出書房の日本文学全集を親に揃えてもらって、源氏物語から読みましたので、今回の江戸の俳諧シリーズには大変興味がありました。幸運なことにこちらのイベントに参加することができ、昨日7/5、神保町まで出かけてきました。

涼しい一日だったので、もっと時間をとって、この辺りを歩き回ればよかったなあと少し後悔。それくらい、ネットの書店を愛用している自分には目新しく、出会いもありました。

写真は右から、松浦寿輝さん、辻原登さん、長谷川櫂さん。江戸を代表する歌人、松尾芭蕉、与謝蕪村、小林一茶の選と解説、訳を担当しています。

人形町の江戸のくずし字講座でも二年余りにわたり、「おくのほそ道」を芭蕉直筆版で習ったので、それがどう訳されているのか、どきどきしながら拝見しました。リズム感があり、自然な流れで、江戸人が読むような平易な日本語になっています。お見事でした。松浦さんは詩人でもあり、言葉のもつセンスが光っているのです。

芭蕉は、古典などの教養を裏に、雅な世界を自然に置き換えて表現している。神格化されすぎているが、ハイブリットな人ではなかったのか、今回担当して、瑞々しい感情に驚かされたと松浦さんは語っています。みなさま、ご自分の担当された歌人より、それ以外のひとの批評が多く、一体化した江戸人集合のように見受けられました。

辻原さんは芭蕉が嫌い、蕪村の作品をまとめるとき、俳句には季語があるから、季節でまとめてみようと思ったそうです。春夏秋冬、ただそれだけでは、物足りないので、もう一度春を締めくくりに持ってきた。それが「春風馬提曲」です。

「春風馬提曲」はこちらで初めて読みました。漢詩と、漢詩読み下し文の混ざった斬新、新鮮な前衛詩だと辻原さんは記しています。こちらも従来の解釈とは違い、商家に勤めた女中が故郷に帰るのではなく、妓家に勤めた女が帰るとしています。すると、これまでの解釈では不自然だった部分が見事にわかるのだとそうです。こういうことは、教わらないと気づくこともありませんから、それだけでのこのトークイベントに参加してよかったと思いました。

一茶は、古典も知らず、俗物に徹して句をつくったひとと、長谷川さんは語ります。俗なものにばらけていくのが、近代の特徴で、そういう意味で、近代化をしたひとなのだそうです。一茶から近代詩が始まる、面白いです。

近代、明治以降、郷愁を追求していて、それを先取りしたのか蕪村。蕪村は俳人だけでなく画家でもあります。近世畸人伝などを読んでいると、蕪村は池野大雅と同じ画家です。作られた句が絵画的と言われるのも、基本がそこにあるからと思いました。

辻原さんのいう、近代の詩人は郷愁のものばかり。どこから来て、どこに行くのかがわからないのが近代。それに比べ、芭蕉ははっきりとどこから来て、どこに行くのかが記されている。

松浦さんが、芭蕉は西行を参照して旅をする、中国の古典も引用する。旅の中に、日本文化の厚みが刻みこまれている。それが天明期になると、狂歌が盛んになり、雅なものでなく、俗なものが流行る。今がまさにそんな時代だと思われます。だから、古典を読んで、もう一度学びたくなるのですね。

三人のお話は息があって、ツッコミもあって、まだまだ聞いていたい気がしました。

俳句を作ることはできなくても、詩を書くことはいいなあと、久しぶりに思いました。心の動き、感性のひらめきを残すには、現代人には詩が似合っていると思います。そんなさまざまな思いを胸に戻ってきました。ありがとうございました。

國學院大学で、「宮廷装束の着装披露」を見てきました

江戸のメイルマガジンのために、資料を集めていて、こんな記事を発見。

宮廷装束の着装披露 -武官装束と女房装束-」(霞会館衣紋道研究会主催・國學院大學神道文化学部共催)を開催いたします。

前々から行きたい思っていたイベントだった。源氏物語を読んでいて、当時の宮中ではどんな装束を着けていたのかと気になっていた。今回は、武官と女房の男女の着装ということで、二倍嬉しい。事前予約なし、先着100名という募集なので、とにかく、30分前の受付開始に間に合うように出かけた。

渋谷にあるのは知っていたが、國學院大学に入るのは初めてのことである。会場は板敷きの祭式教室。椅子も用意されていたが、着物なので座る方が心地よい。

装束を着けてもらう人は、身分の高い人なので、御方様とよばれ、前衣紋者、後衣紋者と二名が着装を手伝う。平安のお姫様たちは、自分で着ることはできなかったはず。女房たちに囲まれて傅かれて暮らしていた様子が、よくわかる。

最後に写真撮影もあったのだが、SNSやブログへの投稿はご遠慮くださいという主催者側の意向で載せられない。簡単にいうと、お雛様の装束を想像してみてください。武官は鷹の羽でできた矢を背中に背負っているし、太刀は、差しているが刀ではなく装束の一部。笏は懐紙のようなものを巻いてその中に差し込んでいる。

女房装束もお雛様のお姫様どおり。雛人形は平安の宮中の様子を正確に表現しているのだとわかった。源氏物語を読むときに情景がより、立体的にわかりそうだ。

國學院大学には博物館もあって、こちらも充実している。東京にあるのにその存在をしらなかった。

 

FOODEX JAPAN 2016に出かけてきました

幕張メッセで毎年開催されるFOODEX JAPANは、総合食品展示会です。国内、海外の新しい食材と出会う場で、昨年は庄内麩が気に入り、取引を始めました。

今年の全体の印象は、ヨーロッパの結束が際立っていたこと。ヨーロッパ・ブースも中心に位置し、アメリカが縮小気味に比べて、イタリア、ドイツ、フランスなどはパフォーマンスも見事で、目立っていました。

イタリアブースでは、日本国内からシェフを呼び寄せ、イタリア料理の講習、そして試食と続きます。アンケートもあって、答えるとかわいいメモ帳がもらえます。ドイツブースでは、ドイツ人二人による、料理の実演、こちらも出来上がったものを試食できます。なにしろ、よくしゃべる二人に通訳はひとりで、あたふたしています。

■ドイツ風チキンのクリーム煮 (レセピはこちらで補完したものです)
1.  鶏肉400gは、皮をはがし、一口大に切って、塩胡椒し、炒めてブイヨンで煮込む。
2. ホワイトソースをつくり、このチキンを加えてさらに煮込む。チリパウダーも少々加える。味見して、砂糖も小さじ1加える。
3. アスパラ、インゲンを4、5センチに切ってさっと茹で、炒める。
4. 皮をむいたポテトをいちょう切りして、油で炒める。ブイヨンを入れて煮込む。
5. 器にチキンを盛り、アスパラ、インゲンを散らして、上からポテトを並べる。最後に熱々のホワイトソースを注ぐ。

■ドイツ風野菜のカレー煮
1. 玉ねぎをみじん切りし、砂糖を小さじ1加え、油で炒める。そこにトマト1個をすりおろしたもの、さらに100ccのオレンジジュースを加え、煮詰める。ここにカレーパウダー、チリソースを加え、カレー味にする。
2. ベーコンあるいは、ソーセージを炒め、マッシュルームも加えて、炒める。ここにコーン、アスパラ、グリーンピースを加え、炒める。
3. 器にこれらを彩りよくならべ、熱々のカレーソースを注ぐ。ピリリして、甘さのあるカレー味が絶妙のおいしさ。

イタリア館では、カラーの小冊子を配布していましたが、お料理のレセピとしては、一工夫が必要。ドイツ館のダイナミックな実演は楽しかったし、すぐに作ってみたくなります。

後半、かなり歩いて、心地よく疲れて、会場を眺めていると、自分がその場にいるのではなく、なにかの映像を眺めているような気分になりました。それは、大きなパーティの真っ最中。みんな何かを頬張り、グラスを持ち、大声で話し合っている。幸せな時間なのです。食材だけでなく、そこで提供されるサービス、また、そこに集う人が醸し出す幸せ感。 普通の展示会では、味わえない瞬間です。そこに居合わせた全員が感じていたことだと思いました。

 

 

冬の京都の楽しみ方

ここ数年、クリスマスの前後には京都にいる。最初は知り合いのオペラ歌手の第九の公演があったのが始まり。それから、毎年、南座で顔見世歌舞伎をみて、知り合いと会い、お正月前の中休みをしている。

この時期は、紅葉のころと違い、町も人々も普通に暮らしている。さすがに十二月も二十日過ぎると、修学旅行の学生たちもいない。祇園祭のような賑わいはないが、それでも、お正月の準備やら、弘法の市がたったりと、住んでいるひとのためのイベントはある。IMG_0497ss20

今年の京都は暖かい。着物で町を歩くと、寒い思いをしないですむ。人の少ない町を歩くと、たくさんの発見がある。お気に入りの店には、必ず立ち寄るようにしている。

今日は、友人と会った後で、大原に向かった。大原は、四条烏丸と、四条河原町から出ている京都バスに乗って約一時間。 それだけで別の世界が広がる。

大原御陵にお参りしてから、三千院に向かう。ここでは、クリスマスは無縁の世界。日本国、山城の国、大原郷だ。雨の予報だったが、ときおりぱらぱらと来るだけで、なんとか降らずに曇り空のまま。

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お庭を見せているだけで、心が和む。人が少ないのもポイントが高い。いつまでもここに座っていたいとも思うのだ。 悠久のときを過ごす気分だ。

三条通に戻ってきたときは、小雨が降っていた。 お昼時を過ぎて、中途半端な時間に食事をしようとするときは、三条のかつくらに駆け込む。ここは昔、パリに住むイタリア人とよく通った。揚げたてのヒレカツをいただくと元気がでる。

最近は、その帰り道に、八百一のスイートを買って戻る。ザ・ブレッドのパン・ヴァリエがマイブーム。 大丸地下のパン屋さんも大好き。

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三条にはお気に入りの店がたくさんあって、四条まで、歩きながら帰ってくる。なぜ、三条のホテルにしないかというと、南座の歌舞伎が終わって、四条まではバス一本。夜道が怖いのではなく、雨や雪の日に無理をして歩きたくないのだ。

二月に来たときは、本当に雪に閉じ込められて過ごした。食べ物屋さんが近くにある四条は、そういう意味でもありがたかった。明日は、南座の夜の部、夕方までは、お天気しだいだか、どこかに出かけようと思う。

歌川国芳・肉筆画展に行ってきました

12/7 月曜日の夜、表参道から歩いてすぐの「本の場所」で開催された《歌川国芳・肉筆画展 いとうせいこう × 河治和香トークイベント》に行ってきました。

国芳は、浮世絵師として有名ですが、その彼が残した版本ではなく、肉筆画ということに興味があり、また、いとうせいこうさんのファンなので、このトークイベント楽しみでした。

国芳は、面倒見がよかったらしく、有名になった弟子たちもいっしょに暮らしていたようです。肉筆画は、スポンサーからの依頼で、やはり日銭になるからと描きに出向いたのでしょう。

《めりやす》ということば、伸び縮みするというよりは、滅入りやす、の意味だったのではないか。お二人のお話は、まるで江戸から生きていたかのように、真実味に溢れています。四方に作品が展示されていて、それを見ながらお話を聞くという、贅沢な環境で一時間半があっという間でした。

 

オーチャードホールで、仮面舞踏会を見てきました

12/5 土曜日、師走の最初の週末は、オペラもあちこちで開催されています。気忙しい12月でも最初の頃なら、オペラを楽しむことができるだろうという配慮でしょうか。

渋谷Bunkamuraは、地下鉄3Aの出口から歩いてすぐ。昔、ここでレンブラントの絵画を見たことや、最近では、パリ・オペラ座の『至高のエトワール ~パリ・オペラ座に生きて~』の映画をみたことを思い出しました。

このあたりは、渋谷の雑踏からちょっと切り離されていて、外国旅行をしている気分になれます。そんな中での仮面舞踏会、期待が高まります。

ヴェルディの仮面舞踏会は、愛の物語です。許されない愛、裏切り、真実、赦しがテーマになります。オペラの快楽については、次回にでも語りたいですが、このお話は、純粋に人を愛した、そんな思いを知っている人にとっては、ずしりとした重みがあります。

舞台は、アメリカ。ボストン総督のリッカルドは、秘書レナートの妻、アメーリアへの想いを募らせています。彼女もまたリッカルドを愛して、苦しんでいます。

リッカルドには、命をねらう、暗殺団がいて、仮面舞踏会の夜、命を落とすことになります。このリッカルドが、命を懸けて、愛する人は、部下の妻でした。

舞台は、レンブラントの絵に出てくるように、重厚で華やかです。絵の中の人々が動きだすように、思われました。

主役リッカルドを演ずる西村悟さん、最初は若すぎるのではと思いましたが、最後に赦しを与えて死ぬ時の大人らしさ。若くて、寛大な心をもって、人々を導くのだという立場が伝わってきます。

アメーリア役の小川里美さん。彼女が、人妻であり、子供がいるにもかかわらず、可憐な美しさをもっていないと、物語が始まりません。この配役はぴったりでした。西村さんと小川さんの二重奏もすばらしいです。

レナート役の牧野 正人さん、愛していた妻が、別の男に心を奪われていたというむずかしい役どころを、やや年上の夫の苦しみとしてうまく表現していました。

愛することの喜びと、そして、苦悩がみごとに表されていました。オペラは、非日常のお話なのに、共感することが多かったのは、作品の持つ魅力でしょうか。たっぷりと楽しんで戻ってきました。

追記、独特な存在感のあるウルリカは、鳥木弥生さん。いつもキャラクターとは違う仏像のような預言者です。衣装も表情もはっとさせてよかったです。

リッカルド  西村悟
アメーリア  小川里美
レナート   牧野 正人
ウルリカ   鳥木弥生
オスカル   高橋薫子