毎年この時期に出かける、京都南座の顔見世興行。昨年は改装中で期間も短く、見逃しました。今年は二等席を奮発して、三階の最前列で鑑賞しました。
まず着いた日に、JR京都駅の和久傳でお昼、ホテルで一休みして夜の部に、翌日は、早めに起きて、錦でおばんざいを調達。それをお弁当がわりにでかけました。
京都の顔見世は演目もたっぷり。休憩時間も演目ごとにあるだけで、凝縮されています。昼の部の寺子屋、芝翫は江戸風、武部源蔵役の愛之助以下は上方風と違います。亡くなった子どもの回向に焚くお香が舞台から流れてきました。松栄堂さんでしょうか。
鳥辺山心中で可憐な孝太郎と、無骨だが、心の優しい梅玉の道行きでしっぽりとしたところに、仁左衛門とじいさん、ばあさん。時蔵とふたりの甘える姿、幸せな二人がいっぺんして、年月にさらされて、37年ぶりに再会する。個人的な感想では、二人とも年を取りすぎている、もう少し若さが残っていてもいいのではないかと思いますが、残酷な時間の流れをあらわしているのでしょう。敵役の芝翫がねちねちといじめて、そうでないと、物語が成り立ちません。何度見てもはらはらどきどきします。
昼の部最後が新口村。藤十郎一家の上方芝居。舞台の上は雪景色。こちらの道行きは雪の中を死に向かってひたすら進む。その中に親子の情愛が見え隠れします。扇雀の梅川が可憐で、涙をそそります。これだけの演目は一日分。東京なら、休憩を挟んで一日の舞台になります。よいお席でみたので、役者さんの心の動きまでわかるような気がしました。
昼の部
第一、
菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 芝翫
武部源蔵 愛之助
戸浪 扇雀
涎くり与太郎 中村福之助
春藤玄蕃 亀鶴
千代 魁春
御台園生の前 秀太郎
第二、
鳥辺山心中(とりべやましんじゅう)岡本綺堂 作
菊地半九郎 梅玉
若松屋遊女お染 孝太郎
坂田源三郎 右團次
若党八介 寿治郎
お染父与兵衛 市蔵
若松屋遊女お花 魁春
坂田市之助 左團次
第三、
ぢいさんばあさん 森 鷗外 原作 宇野信夫 作・演出
美濃部伊織 仁左衛門
下嶋甚右衛門 芝翫
宮重久弥 愛之助
同輩の侍 市蔵
同 亀鶴
同 松之助
宮重久右衛門 高麗蔵
久弥妻きく 孝太郎
伊織妻るん 時蔵
第四、
恋飛脚大和往来(こいびきゃくやまとおうらい)
新口村
亀屋忠兵衛 藤十郎
傾城梅川 扇雀
忠三郎女房 吉弥
父孫右衛門 鴈治郎
夜の部は、いきなり義経千本桜で始まります。仁左衛門のいがみの権太は、ワルですが、可愛らしさがあります。若葉の内侍一向に親切にすると見せかけて、わざと間違えた荷物で強請る、この人がやると、お金を取られても仕方がないと思えるから不思議。お里役の扇雀のくどき、自分で布団を敷いて寝ましょうと誘うのが可笑しい。町娘が結婚できる相手でないことを分からずにいるのが哀しい。弥左衛門訳の左團次が、子どもを殺して後悔する父親をたくみに演じます。父子の別れがひとつのテーマでした。
童子役の鴈治郎の可愛いこと、五月人形のようです。みていてほっとします。
愛之助の弁天小僧菊之助は、菊五郎の演ずる型とは少し違い、娘役なのに、顔は上げて堂々としています。男にばれたときもまた違う、上方で演ずることの珍しい題材のような気がします。南郷力丸役の右團次は、お嬢様をたてて安定した演技。
これでお終いかと思うと、三社祭が残っていました。鷹之資は、富十郎の忘れ形見、踊りのうまさは群を抜いています。これからが楽しみですね。
二日間にわたっての歌舞伎見物でしたが、本当にたっぷりで堪能しました。来年もよいお席で見ようと思います。ロビーにも椅子が多く、お弁当もゆったりと食べられました。夜の部は、タクシーが拾えてホテルにすぐに戻れました。京都に泊まっているからの贅沢ですね。
夜の部
第一、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
木の実
小金吾討死
すし屋
いがみの権太 仁左衛門
弥助実は三位中将維盛 時蔵
お里 扇雀
若葉の内侍 孝太郎
主馬小金吾 千之助
猪熊大之進 松之助
弥左衛門女房お米 吉弥
権太女房小せん 秀太郎
鮓屋弥左衛門 左團次
梶原平三景時 梅玉
第二、面かぶり(めんかぶり)
童子 鴈治郎
第三、
弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)河竹黙阿弥 作
浜松屋見世先より
稲瀬川勢揃いまで
弁天小僧菊之助 愛之助
日本駄右衛門 芝翫
南郷力丸 右團次
鳶頭清次 亀鶴
浜松屋伜宗之助 中村福之助
浜松屋幸兵衛 市蔵
赤星十三郎 孝太郎
忠信利平 鴈治郎
第四、
三社祭(さんじゃまつり)
悪玉 鷹之資
善玉 千之助
以上