日生劇場で、ドン・ジョヴァンニを観る

モーツァルトのオペラは悲劇の中に喜劇があって、見ている人は、その時の感情や気分で、それを哀しみや同情とみることもできるし、一方で舞台の上で演じられている一つの物語と、冷ややかに見つめることもできる。

オペラ劇場に集う人々は、どんな思い、あるいは思惑で望んでいるのだろうか。今回の「ドン・ジョヴァンニ」、土曜日の午後公演で、若い女性が多くて驚く。これは私の個人的な感想なのだが、ドン・ジョヴァンニ役の歌手は、かっこいい男性が演じないと、すべてが嘘くさくなる。

忠臣蔵の六段目で、お軽は、夫勘平のために、一文字屋に身売りするのだが、この勘平が色男でないと、話は成立しない。菊五郎や仁左衛門のような二枚目が演ずるものなのだ。

ドン・ジョヴァンニが、不誠実ではあるが、魅力的な色男だからこそ、ドンナ・エルヴィーラが押しかけていくのだし、ドンナ・アンナも誘惑されそうになって、逃げ出すのだが、婚約者のドン・オッターヴィオには、物足りなさを覚えている。今回のニコラ・ウリヴィエーリは、そういう意味でも完璧な配役である。蛇足ながら、フィガロの結婚の伯爵は、あまりにいい男だど、喜劇の要素が消されてしまう。こちらは長身だけが取り柄の人でいいのだ。

今回の演出なのだが、ドンナ・アンナ役の小川 里美さんが際立って、存在感があった。普通は、ドンナ・エルヴィーラが全面に出ていて、ドンナ・アンナは、悲劇の人、そして、優しいだけのドン・オッターヴィオに物足りぬ思い抱いている人、という印象である。だが、今回は違っていた。ドンナ・アンナは、こんなに目立っていた人だったかしらと思うほどである。小川 里美さんの歌唱力はすばらしく、きちんと自分の立ち位置がわかっている。彼女がドン・ジョヴァンニに襲われなかったら、そして、父親が娘を助けるために、闘い、殺されなかったら、ドラマは始まられない。サッカーで例えると、得点を入れるためのアシストである。最初の10分で、すでにゴールを決めていたのかもしれない。それほど、彼女の憤りは激しかった。理不尽なことに闘う、婚約者も巻き込んで闘うという姿勢がはっきりしていて、これは初めての経験だった。

ドンナ・エルヴィーラ役の佐藤 亜希子さんも素晴らしい。気品あふれた表情で、要所要所で、まだ、ドン・ジョヴァンニを思いきれない女心を感じさせる。喜劇の要素もたっぷりで、うまい役者だと思う。

ゼルリーナ役の清水 理恵さんも実にいい。こんな可愛い女に男は惚れてしまうのだろう。自分にはない要素なので、余計に羨ましい。姿も声も可愛くて、ドン・ジョヴァンニが、なんとか手に入れようともがくのもうなづける。

レポレッロ役の押川 浩士さんも、この下僕に徹していて、楽しい。今回、気づいたのだが、最後の夕食の場面で、騎士長の銅像がやってくるとき、最初にみたドンナ・エルヴィーラが悲鳴をあげ、その次に確かめにでたレポレッロが恐怖の叫びをあげるのだが、そのすぐ後で、旦那様、外に出てはだめです。玄関を開けてはだめです、と必死で止める。あんなにひどい目にあっていて、なぜか主人思いで不思議でならなかった。だが、ドン・ジョヴァンニは、気位が高く、天邪鬼。行ってはならないと言われると、素直に従わずに、出て行く。それを知っていて、レポレッロが、親切心をだしたのではないか。

チームワークもいいし、みんなの実力も競り合っていて、見ていて満足度の高いオペラだった。このグループは今週末7/7、横須賀でも上演する。

藤原歌劇団公演 NISSAY OPERA 2018
モーツァルト作曲 オペラ『ドン・ジョヴァンニ』全2幕
(イタリア語歌唱・日本語字幕付)
総監督:折江 忠道
指揮:ジュゼッペ・サッバティーニ
演出:岩田 達宗
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

2018年6月30日(土)14:00開演

【キャスト】 6月30日(土)
ドン・ジョヴァンニ    ニコラ・ウリヴィエーリ
ドンナ・アンナ      小川 里美
ドンナ・エルヴィーラ        佐藤 亜希子
ドン・オッターヴィオ        小山 陽二郎
騎士長          豊島 祐壹
レポレッロ             押川 浩士
ゼルリーナ             清水 理恵
マゼット         宮本 史利

びわ湖で、ワルキューレを見てきました

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びわ湖ホールで、「ワルキューレ」を見てきました。昨年の「ラインの黄金」に続く二作目。京都からは、地下鉄東西線で浜大津まで、そこから乗り換えて三つ目の石場下車。歩いて5分です。びわ湖を見ながら、オペラを聴くというのは、異国風ですてき。オペラハウスも海外のようです。
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五年前にパリ・バスチーユでみた、「ワルキューレ」は不条理な愛の物語でした。この新演出はどう表現するのだろうかと、楽しみでした。

3月4日 日曜日 14時から開始

この日は、日本人だけのプログラム。それがチームワークも良く、歌唱もすばらしいのです。日本人だけで、指輪ができる時代になったのですね。物語は新演出ですから、パリ・バスチーユに似ています。でも、パリほど、愛の対比をするのではなく、もっと物語の基本から見せてくれます。男と女が出会って、逃げて、そして男は殺され、女が残される。冬の場面から、春が訪れ、二人にも春の恵みがやってくる。愛の季節の始まり。この辺りの情景の変化は、パリで見たものととても似ていました。ヨーロッパの人々にとって、春の訪れは、生命の息吹なのでしょう。

ジークムントは優れた英雄、それに対して、ジークリンデは、汚れた女、あなたの愛を受けるにはふさわしくないと訴えます。それでも二人は愛すことを止められず、戦いで決着をつけようということになりました。ヴォータンは、もとより、ジークムントを勝利させることは考えていません。彼は刺されて殺され、剣も粉々にされてしまいます。

二人の愛の印を宿した女は、そのことを知ると、どんなことをしても、その子を産み落とそうと決意します。ともに死を願っていたのに、こんどは生きようとするのです。

ヴォータンは、フリッカに頭が上がらず、ジークムントを討ち果てました。その怒りを娘たちに向けるのですが、それは最愛の娘との別れを意味していていました。最後にブリュンヒルデが眠る山に火をつけ、炎に包まれます。この結界を破るのがジークフリート、来年が楽しみです。

ワルキューレは何度見ても発見があります。その演出の解釈ごとに新しいドラマが生まれ、新しい感動があります。今回も、わざわざ来てよかったと思えるほどのすばらしい舞台でした。

京都の大丸で買えた、ふたばの豆大福を楽屋に差し入れ、終演後は、知合いの小川里美さんとお話ししてきました。来年は、いよいよジークフリート、こちらもでかけなくちゃと思います。

指 揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
演 出:ミヒャエル・ハンペ
美術・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ

4日 出演者

ジークムント 望月哲也
フンディング 山下浩司
ヴォータン 青山 貴
ジークリンデ 田崎尚美
ブリュンヒルデ  池田香織
フリッカ 中島郁子
ゲルヒルデ 基村昌代*
オルトリンデ 小川里美
ワルトラウテ 澤村翔子
シュヴェルトライテ 小林昌代
ヘルムヴィーゲ 岩川亮子*
ジークルーネ 小野和歌子
グリムゲルデ 森 季子*
ロスワイセ 平舘直子

*…びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

管弦楽:京都市交響楽団

参考リンク
究極の重厚長大オペラ「リング」 日本人に受けるワケ 2017/9/25

三月大歌舞伎は、義経千本桜 渡海屋・大物浦と、助六由縁江戸桜を見てきました

三月は飛ぶように過ぎていきます。歌舞伎座は、夜の部、昼の部と見てきました。さすがに同日に通しでみることはできず、二日に分けてみたのですが、充実していました。

真山青果の明君行状記は、理屈が勝負、心理描写や言葉のやりとりを積み重ねて面白さがわかります。梅玉と亀三郎の対決がなかなかよかったです。明君と呼ばれる池田の殿様、本当に家来どもから尊敬されているのですね。

義経千本桜は、72歳の仁左衛門が演ずる知盛が目当て。次はないかもしれないと出かけました。松嶋屋の型は、よく知っている高麗屋とは違っていて、柔らかい。上方の味わいがありました。

三津五郎三回忌追善狂言のどんつく、これが楽しい。これだけの豪華な役者を揃えて、追善供養とは、早く逝き過ぎた三津五郎を思い出します。巳之助がよい役者になってきました。こちらも楽しみです。

【昼の部】

真山青果 作
真山美保 演出
今井豊茂 演出
一、明君行状記(めいくんぎょうじょうき)
池田光政      梅玉

青地善左衛門    亀三郎
妻ぬい       高麗蔵
弟大五郎      萬太郎
若党林助      橘太郎
木崎某       寿治郎
吉江某       松之助
筒井三之允     松江
磯村甚太夫     権十郎
山内権左衛門    團蔵

二、義経千本桜(よしつねせんぼんざくら)
渡海屋・大物浦
渡海屋銀平実は新中納言知盛     仁左衛門
女房お柳実は典侍の局        時蔵
相模五郎              巳之助
銀平娘お安実は安徳帝        市川右近
入江丹蔵              猿弥
武蔵坊弁慶             彌十郎
源義経               梅玉

十世坂東三津五郎三回忌追善狂言
三、神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)
どんつく
荷持どんつく    巳之助
親方鶴太夫     松緑
若旦那       海老蔵
太鼓打       亀寿
町娘        新悟
子守        尾上右近
太鼓持       秀調
太鼓持       彌十郎
田舎侍       團蔵
芸者        時蔵
白酒売       魁春
門礼者       彦三郎
大工        菊五郎

 

引窓は、なんどか見ていますが、幸四郎のは初めて。右之助と魁春の義理の親子のやりとりが、こんな人もいたのだろうと思います。幸四郎は、生真面目そうで朴訥としていてよかったです。

助六由縁江戸桜、海老蔵の助六。次は團十郎になっているのでしょうか。これだけの人を集めての芝居、盛り上がらないはずはありません。色街の華やかな様子、傾城たちが皆若くてきれい。愛染の児太郎が色っぽいのです。

菊五郎の白酒売りを従え、堂々とした役者ぶり。海老蔵もうまくなってきました。

【夜の部】

蝶々曲輪日記
一、引窓(ひきまど)
南与兵衛後に南方十次兵衛   幸四郎
濡髪長五郎          彌十郎
平岡丹平           錦吾
三原伝造           廣太郎
母お幸            右之助
女房お早           魁春

二、けいせい浜真砂(けいせいはまのまさご)
女五右衛門南禅寺山門の場
石川屋真砂路   藤十郎
真柴久吉     仁左衛門

河東節開曲三百年記念
歌舞伎十八番の内
三、助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)
河東節十寸見会御連中

花川戸助六     海老蔵
三浦屋揚巻     雀右衛門
くわんぺら門兵衛  歌六
朝顔仙平      男女蔵
通人里暁      亀三郎
三浦屋白玉     梅枝
福山かつぎ     巳之助
傾城八重衣     新悟
同浮橋       尾上右近
同胡蝶       廣松
同愛染       児太郎
男伊達山谷弥吉   宗之助
同 田甫富松    男寅
文使い番新白菊   歌女之丞
奴奈良平      九團次
国侍利金太     市蔵
遣手お辰      家橘
三浦屋女房お京   友右衛門
曽我満江      秀太郎
髭の意休      左團次
白酒売新兵衛    菊五郎

口上        右團次
後見        右之助

びわ湖ホールで、『ラインの黄金』を見てきました

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びわ湖ホールに行くのは、京都から市営地下鉄で浜大津に出て、そのまま石場で降ります。駅から歩いて三分、ホールに近づくと巨大な垂れ幕がありました。

ラインの黄金は、ワーグナーの「ニーベルングの指輪」の序夜の作品です。と同時に、これから四年間、「神々のたそがれ」まで、このびわ湖ホールで上演されるという宣言も意味しています。

全一幕、休憩なし。ドイツ語上演、日本語字幕付き。すでにチケットは完売。開演一時間以上前から、人々はロビーに集まっています。期待感が高まりますね。 びわ湖リングというのは、新国立劇場で上演されたTOKYO RINGを意識していますね。あのときの舞台装置、ヴォータンがさすらい人となって、古びたモーテルに泊まっていたり、スーパーマンのTシャツを着たジークフリートが、ブレンダーで剣を溶かして、作るのです。

ラインの黄金の序曲が演奏されると、ヴォークリンデ(ラインの乙女)のソプラノが聞こえてきますが、姿は見えません。紗の幕がかかり、そこに映し出される水の中の風景、アルベリヒが乙女たちを捕まえようとしますが、するりと逃げられてしまいます。観客はスクリーンに映し出される映像と生の歌声にちょっと戸惑い、これから何が起きるのだろうかとじっと待っています。

すると、黄金がまばゆいばかりに現れて、愛することを断念したアルベリヒに奪われてしまいます。一方、完成した「ヴァルハラ」の城を前に、ヴォータンは、苦渋に満ちた表情で現れます。今回のヴォータンと妻のフリッカは、今までの中にいちばん睦まじい夫婦を演じています。これも演出の違いでしょうか。

パリのバスチーユでみた、ジークフリートでは、美しいが凍りつくようなフリッカでした。策士ローゲに頼り、巨人族に約束したフライヤの代わりに、黄金を渡すことを思いつきます。この巨人たちは余りに大きすぎ、舞台上での対比で、ヴォータンを除く、他の神々たちが矮小に見えてしまいます。これも演出なのでしょうか。

字幕はもう少し上に映してくれるといいと思いました。ヴォータンとローゲが坑道を通り、地下に降りていくさまはタイムマシンの移動のようです。こちらも映像が映し出されます。時間や距離が大きく隔たっているものは映像が手助けするようです。

指輪を手にしながら、すべてを失うアルベリヒ。感情の起伏がわかりやすい、うまいです。最後に指輪を渡すとき、呪いをかけるのですが、こんなに粘っこくくどくどしく関西バージョンとでもいえそうなうまさです。 ヴォータンはときどき自信を失うも、その存在感があります。ローゲ役の、西村さん、大役をそつなくこなしていますが、もう少し遊んでもよかったのではと思いました。ある意味、この場面での影の主役なんですから。

巨人族が指輪を受け取るなり、その呪いで、兄弟が殺しあいます。その殺伐とした風景をみて、ヴォータンは指輪の呪いから逃れた一方での哀しさをうまく表現していました。ロッド・ギルフリー、いい役者です。

二時間半はあっという間、来年までこの続きが見られないというのは残念です。次がどんな展開になるのか、こちらも楽しみにしようと思いました。

こちらも四年間にこの時間を予約して、びわ湖ホールに通うことになるのです。びわ湖リングを見とどけるために。 新構成の今回のオペラ、見る人の心を捕らえて、終演後も拍手が鳴り響きました。席を立つ人もなく、みんな拍手を続けたのです。 楽しみにしている人に支えられての次作、演ずる人も作る人も大変でしょうが、苦労と楽しさは裏表。こちらも覚悟しておきます。

ラインの黄金を見終わってのびわ湖の風景もまた、味わい深いものでした。見立ての世界ですが、あれがライン川なのです。

以下、びわ湖ホールからの解説も載せておきます。

いよいよ、びわ湖リング始動!
<ニーベルングの指環>四部作を4年にわたって新制作。演出にドイツオペラ界が誇る世界的巨匠ミヒャエル・ハンペ、舞台装置と衣裳デザイナーに絵画、映画、オペラ等で世界的に活躍しているヘニング・フォン・ギールケを迎えます。キャストは国内外で活躍の歌手を厳選し、びわ湖ホールでしか観られない決定版の上演を目指します。

指 揮:沼尻竜典(びわ湖ホール芸術監督)
演 出:ミヒャエル・ハンペ
装置・衣裳:ヘニング・フォン・ギールケ
管弦楽:京都市交響楽団
出演
ヴォータン:ロッド・ギルフリー
ドンナー:ヴィタリ・ユシュマノフ
フロー:村上敏明
ローゲ:西村 悟
ファゾルト:デニス・ビシュニャ
ファフナー:斉木健詞
アルベリヒ:カルステン・メーヴェス
ミーメ:与儀 巧
フリッカ:小山由美
フライア:砂川涼子
エルダ:竹本節子
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:小野和歌子
フロスヒルデ:梅津貴子

 

 

 

東京創元社 新刊ラインナップの後、有栖川有栖さんのサイン会

東京創元社 新刊ラインナップの説明会、そして、ゲスト対抗ビブリオバトル、最後に、作家さんによるサイン会が開かれました。事前に為書き用のメモが渡され、そこに名前を書いておきます。壇上に各先生方が並びます。

一人一冊、持ち込みでも、会場で販売している書籍でもよいということでしたが、有栖川有栖さんのデビュー作、月光ゲーム Yの悲劇’88にサインしてもらいました。これで、ようやく完結した気分です。

昨年のテレビシリーズも、続編を希望しますと話したら、少し有栖川さんは動揺したようです。最後に握手までしていただき、柔らかな手の感触で、子供のような手をしていると思いました。五月にでる江神二郎さんの短編集、文庫版も楽しみです。
11歳のときにミステリー作家を夢見て、実現したのは29歳のときだった。そして、今、28年過ぎてしまった。と語る有栖川さん、ちなみに有栖川さんの列がいちばん長かったです。人気作家なのですね。
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オペラ・バスチーユで、ローエングリーンを見てきました

パリ三日目の夜は、オペラ・バスチーユで、ローエングリーンを見てきました。新演出ということで楽しみにしていましたが、なんと一月はJonas Kaufmannが出ていたのです。

夜の19:00始まり、終りが23:25、途中、休憩が二回入ります。カーテンコールの途中で帰らねばならないシンデレラの気分でした。

客層は昨日の魔笛とはあきらかに違います。フランスにもワーグナー信者が多いのですね。舞台はミラノスカラ座のカウフマンバージョン。ローエングリーン役のぶStuart Skelton、太めで脚も短く、無骨な騎士。でも舞台の進行するにつれて、エルザを深く愛していることがわかります。純粋な騎士、崇高な騎士に見えてきました。

エルザ役のEdith Haller、最初は夢見がちな内気な少女、そして、騎士と結婚するときは堂々たる女王ぶりと、演技がうまいのです。もちろん、歌もすばらしい。この物語は、ローエングリーンよりもエルザの比重が大きいのです。

特筆すべきはオルトルート役のEvelyn Herlitzius、かいがいしい妻ぶりを見て、そして、夫をけしかける悪女ぶり、エルザを脅すのは怖いくらいうまいのです。この人にマクベス夫人をやらせてみたいと思いました。

ドイツの話しですし、ナチスの影が見えて、欧州での演出はやはりそうなるのでしょうね。黒と白のコスチューム、色で人の心を表すことができるのを知りました。最近の流行なのでしょうね。

演奏も抜群によく、昨日と同じオーケストラなのだろうかと思ったりして。幕が終わりごととにカーテンコールがあります。本当にすばらしい。四年前もそう思いしましたが、オペラの楽しさを実感しています。

なぜ、エルザが騎士の出身や名前を聞きたがったのが、不思議でしたが、周りからの外圧、素性もわからないものに王国を任せるのかという無言の非難、そして、オルトルートの脅し。エルザは子どものころから脅かされて育っているのです。

騎士が出自と名前を名乗るシーンは、心が清められます。去っていくことに決めた男の最後の真実。歌舞伎の中にもありますね。

終わるとすぐにタクシーを拾いました。女性の黒人のドライバーで、ホテルのアドレスをみて、すぐに発車。昨日とは違うセーヌ川沿いの道で戻ってきました。無事に帰れてうれしかったので、チップもよぶんに渡しました。

この時間設定23時半終了で、歩いて帰れるバスチーユ付近のホテルに泊まるしかないのでしょうか。国立劇場で、職員も大変ですね。だから、幕ごとにカーテンコールがあるのかもしれない、と思いました。 また、来ようと決めました。

Lohengrin

Opera in three acts (1850)

Music
Richard Wagner
Libretto
Richard Wagner
In German
Conductor
Philippe Jordan
Director
Claus Guth
Heinrich der Vogler
René Pape

Rafal Siwek

Lohengrin
Jonas Kaufmann

Stuart Skelton

Elsa von Brabant
Martina Serafin

Edith Haller

Friedrich von Telramund
Wolfgang Koch

Tomasz Konieczny

Ortrud
Evelyn Herlitzius

Michaela Schuster

Der Heerrufer des Königs
Egils Silins
Vier Brabantische Edle
Hyun-Jong Roh
Cyrille Lovighi
Laurent Laberdesque
Julien Joguet
Vier Edelknaben
Irina Kopylova
Corinne Talibart
Laetitia Jeanson
Lilla Farkas
Set design
Christian Schmidt
Costume design
Christian Schmidt
Lighting design
Olaf Winter
Choreography
Volker Michl
Dramaturgy
Ronny Dietrich
Chorus master
José Luis Basso

Orchestre et Choeurs de l’Opéra national de Paris

Production du Teatro alla Scala, Silan

French and English surtitles

Lohengrin appears in a “silvery‑blue” light aboard a boat pulled by a swan (Thomas Mann). He has just saved Elsa, accused of murdering her brother, and has made her promise to never ask him his name. Written by Wagner in great solitude, Lohengrin is first and foremost an immense aesthetic and political manifesto questioning the place of genius in society and laying the groundwork for musical drama. The work, conducted by Liszt at its premiere in Weimar in 1850, marked a turning point in Wagner’s life. It had a profound impact on Ludwig II of Bavaria who became his patron and friend, supporting him in all his future enterprises: “The defiled gods will have their revenge and come and live with us on the peaks, breathing the air of heaven”, Ludwig wrote to him in 1868 from Neuschwanstein Castle (“new swan rock”) which he had just had built. Directed by Claus Guth, who reveals all the fragility of the knight with whom Wagner identified, the production brings together Jonas Kaufmann, Martina Serafin and René Pape under the baton of Philippe Jordan.

パリの日曜日、美術館

パリには日曜日ならではの楽しみがあります。今回は2014年の秋にリニューアルされたピカソ美術館に出かけてみました。

日曜日は9時半からオープン。場所はメトロのSt. Paul。サンジェルマンディプレからは Chateletで一番線に乗り換えます。メトロでカルネ10枚券を買って、バスメトロの地図をもらっておきましょう。これが役に立ちます。

ピカソ美術館も15年ぶりくらい。案内表示を頼りにまっすぐ進みます。パリはテロ事件もあって、建物に入る前にセキュリティチェックがきびしく、かばんの中身も調べられます。

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内部はフラッシュを焚かなければ、撮影できます。ピカソの絵の中で好きなものをとってみました。

わたしの大好きなマチスの絵もあってうれしくなります。ピカソ個人のコレクションもあって、セザンヌもいました。
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こちらは通常、11時半なのですが、日曜日は9時半オープン。帰るころには少し混んできましたが、贅沢に鑑賞しました。個人の建物だったところなので、壁や天井も見事です。

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中にはカフェもあって、二時間くらいみればゆっくり鑑賞できます。入場料11ユーロ。写真も撮れるので、お得な気がしました。 つづく。

パリの朝ごはん

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2/9から一週間の予定でパリに来ています。着いた翌日から連日オペラ鑑賞、昨日はバレーを見てきました。

パリは、サンジェルマンディプレと決めています。美味しいレストランが揃っているし、MONOPRIXというスーパーマーケットで、食料品や雑貨が買えます。サンジェルマンディプレのバス停前にあって、地下に降りていくのです。ここでオレンジやりんご、ヨーグルト、ペリエを買ってホテルに戻ります。

朝食はホテルから歩いて五分のPAUL。 四年前には若い人がきびきび働いていたのですが、いまは中年のギャルソンです。 朝食のコースもあるのですが、常連さんの真似をして、クロワッサン二つとカフェをいただいています。 美味しいクロワッサン、大きいのです。カフェにはマカロンが付きます。毎日営業。

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レーズンパンやブリオッシュ、田舎パンも売っています。パン屋さんです。

少し歩くのですが、有名なポワラーヌもカフェをやっています。こちらは8時半から。この通りは美味しいお店があるので、歩くだけでも楽しいです。

 

新春大歌舞伎に行ってきました

東京でお正月を過ごすには、江戸文化に触れることのできる歌舞伎見物が一番。毎年恒例の新春大歌舞伎に行ってきました。
1/5は、快晴。昼の部、夜の部とたっぷりと見てきました。
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昼の部は、染五郎が将軍慶喜、そして、異言する山岡鉄太郎役の愛之助、真山青果の台詞たっぷりがふたりの心理を見事に描いていて、こんな一日があったのかもしれないと、歴史に思いをふけました。高橋伊勢守の歌昇が、控えめで大人びていてよかったです。

沼津は、国立劇場で三月に通し狂言をするさわりの一幕のようなもの。複雑な人間関係がわかっていないと難しいでしょうね。吉右衛門は、この役で20歳くらい若返って二十代の商家の主人を演じます。色あり、情けありはさすがです。

夜の部の井伊直弼役の幸四郎、正妻昌子の方が雀右衛門、そして愛妾お静の方が玉三郎と、贅沢な配役。こういうのを役者冥利につきるというのではないでしょうか。玉三郎と幸四郎のからみは初めて。新鮮です。死を覚悟して、来世もお前と一緒だと誓う男心。雪が降るのも風情があって、しんしんとしてきます。武家の世界を垣間見た気がしました。

角兵衛獅子役の鷹之資は、あの富十郎の遺児。踊りのうまさは天来のものでしょうか。楽しみながら踊っている横顔、似ていますね。これからが楽しみな若者です。

夜の部最後は、松浦の殿様役の染五郎、ちと若すぎる。まあ、まわりが引き立ててくれるので、楽しめました。愛之助、なんでも器用にこなしますが、耐える役が似合ってきました。左団次のうまさも光っています。壱太郎も可憐でいいです。最後まで楽しめました。

 

 

平成29年1月5日(木)

【昼の部】

大政奉還百五十年
真山青果 作 真山美保 演出
一、将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)

徳川慶喜     染五郎
山岡鉄太郎    愛之助
土肥庄次郎    廣太郎
吉崎角之助    男寅
間宮金八郎    種之助
天野八郎     又五郎
高橋伊勢守    歌昇

河竹黙阿弥 作
二世藤間勘祖 構成
二、大津絵道成寺(おおつえどうじょうじ)

愛之助五変化
藤娘      愛之助
鷹匠
座頭
船頭
大津絵の鬼

弁慶      歌昇
犬       種之助
外方      吉之丞
矢の根の五郎  染五郎

伊賀越道中双六
三、沼津(ぬまづ)

呉服屋十兵衛    吉右衛門
お米        雀右衛門
荷持安兵衛     吉之丞
池添孫八      又五郎
雲助平作      歌六

【夜の部】

北條秀司 作・演出
一、井伊大老(いいたいろう)

井伊直弼     幸四郎
仙英禅師     歌六
長野主膳     染五郎
水無部六臣    愛之助
老女雲の井    吉弥
宇津木六之丞   錦吾
中泉右京     高麗蔵
昌子の方     雀右衛門
お静の方     玉三郎

五世中村富十郎七回忌追善狂言
二、
上 越後獅子(えちごじし)
角兵衛獅子 鷹之資

下 傾城(けいせい)
傾城    玉三郎

三、秀山十種の内 松浦の太鼓(まつうらのたいこ)

松浦鎮信   染五郎
大高源吾   愛之助
お縫     壱太郎
宝井其角   左團次

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京都大原詣

この時期に京都に来ています。南座の顔見世興行をみて、友だちと会い、少し観光して帰ります。それから大原詣でも欠かさずにしています。 大原には順徳天皇と後鳥羽上皇の御陵があって、そこを詣でています。

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毎年、出かけるときは、京都市内は雨ですが、大原に向かうと必ず晴れます。山城の国大原郷は、また別の世界でもあります。 今日は天皇誕生日、早めのお昼をいただき、ちょうど来たバスに乗ったので、着いたのもハイタイム、いつになく混んでいました。といっても、12月、観光バスは来ません。個人の旅行者ばかりでした。

山の上は青空が広がり、陽が射すと暖かです。今年は例年になく、京都も暖かくて驚いています。 あちこちでお参りして、心もやすらかになったところで、帰ります。

三条京阪で降りてから三条大橋を渡りました。ここからの景色が好きです。帰りに六角通りの八百一によって、お買い物して戻りました。 いつもの京都は、観光客もいなくて、地元の人に混じって暮らしています。