近世畸人伝の面白さ

2004年4月から、日本橋人形町で、江戸のくずし字講座を主宰している。「近世畸人伝」を題材に取り上げたのは、2008年の4月。今年で7年目になる。

「近世畸人伝」ということばは、馴染みがないのだが、江戸中期に実際にいた人々のエピソードをまとめたもの。畸人=奇人で、ユニークな生き方をした人ばかりを紹介している。

作者の伴蒿蹊(ばん・こうけい)は、有名な国学者で、武士・儒学者・文学者から遊女・乞食にいた る、実に様々な階層や職業の奇人の伝記を記している。それもこだわりがあって、儒学者は漢文調、遊女は柔らかな和文と、登場する人により、文体も使い分けている。

書籍としての「近世畸人伝」も電子版もあるが、これをさらりと読んでも、それほど感激はない。1つ1つの江戸のくずし字を読み解き、文学的バックグラウンドのある講師とともに鑑賞すると、そのよさが際立ってくる。こんな面白い内容は初めて、とおどろかれる受講者も多い。江戸時代には本当に面白い、ユニークなひとがいたのだ、と今さらながらに驚かされる。

春期講座は第一回は始まっているが、どの会からも参加できる。初回は無料の見学コースがあるので、ご興味のある方は、ぜひ、遊びに来てください。

この本、江戸の版本を所有している。何年か前、暮れに京都に出かけた時、寺町通の書店で、ガラスケースに並んでいるのを発見、そのまま求めて連れて帰ってきた。京で出版された本を、京都で手に入れる。なんの不思議もないことなのだが、時間の流れが経っているのがおかしい。手放されたのはお寺さんとのことだったが、当時の教養本として、所蔵していたのではないか。現在、こちらの版本をテキストに使って、みなさまにコピーしたものをお渡ししている。

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