銀座シャネルホールで開催されるPygmalion Days に当選して、永野光太郎さんのピアノ演奏を聴いてきました。
曲目はどれも珍しく、初めて聴くものもありました。華麗なピアノ演奏に較べて、地味で無骨で、音を造り上げていくような演奏。イタリア、ドイツのバロック時代の作品は、あの万葉集のような素朴で、人間の愛憎を歌っている歌集のように懐かしいものでした。
プログラムには、たぶん初めての試みだと思いますが、楽譜が載っていて、それに見ながら演奏を聴きます。楽譜も手描きのもので、ピアノを習っていたものですが、譜面を追うのが難しい。その曲が最後まで演奏されると、本当に心が震える思いをしました。すてきでした。【クラヴサン曲集 より シャンボニエール氏のトンボー】
光野さんの技量のすごさは、後半でも発揮されます。バッハのフランス組曲をこんな演奏で聴いたのも初めてのこと。聞き慣れた旋律が、優美に、静かな哀しみをもって心に染みてきます。最後のアンコールでの、ショパンのノクターンもすばらしかったです。
わずか一時間あまりの演奏なのに、聴き終わった後の心の高揚感、幸せな時間を過ごせたという満足感。音楽って本来、ひとの心を癒し、そして、幸せな気持ちにさせるものです。
会場には偶然、知合いの方がいて、最後にその感想を共感しあうことができました。こちらも、幸せなひとときでした。
2012.11.15[ソワレ]演奏曲目
<J.S.バッハ>
ゴールドベルク変奏曲 BWV988より アリア
<G.フレスコバルディ>
トッカータ集 第1巻 より トッカータ第9番
<J.J.フローベルガー>
パルティータ FbWV622(グリム筆写譜)
アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ(初期稿)
<J.H.ダングルベール>
クラヴサン曲集 より シャンボニエール氏のトンボー
<G.ベーム>
組曲 ヘ短調(メラー写本)より
アルマンド、クーラント、サラバンド
<J.S.バッハ>
フランス組曲 第5番 BWV816(ゲルバー写本)より
アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグ
アンコール
ショパン ノクターン
J.S.バッハとバロック時代の作曲家たちに焦点を当て、特に組曲(バロックダンス)の歴史について、解説を交えて進行します。今回は現代のピアノで、オ ルガン或はチェンバロの作品を演奏する事になりますが、M.プレトリウスが「心の中で思い浮かべようと、声に出して歌おうと、楽器で演奏しようと、神のお 言葉は神のお言葉である」と書いたように、バロック音楽を現代のピアノで演奏しても、作品本来の姿が失われる事はないと確信しています。
永野光太郎
(都立芸術高校後援会ブログより抜粋)
■追記 永野光太郎さんの演奏がサイトにあります。