起業して、人形町で江戸のくずし字講座を主宰しています。一の酉、二の酉、三の酉という、江戸から続く風物詩は、入谷の朝顔市と同様、ニュースでみるものだと思っていました。それが、たまたま、人形町でのセミナの日、お客様からのご要望で、酉の市を案内することになり、事前に資料を集めて勉強しました。
浅草の鷲神社、目黒の大鳥神社、新宿の花園神社、と酉の市が開催される場所は、各地域ごとにあります。私の場合、人形町で暮らしているので、入谷から歩いての鷲神社にお参りするのが筋だと思います。
そんなわけで、以来、毎年、この時期になると、日程調整を始め、駆けつけるようにしています。今年は二の酉でおしまいということで、なんとか、午前中に着くように出かけました。昼過ぎから、どっと混み出し、夕方は二時間待ちの行列もざらです。本日は、暖かく、外を歩いたり、並んだりするのに理想的な一日でした。
普段はビルの間に挟まれた小さな空間が、祭りの期間は、神の宿る場所と、強く意識されます。並んで境内を歩き、鳥居をくぐって、お賽銭を投げ、鐘を鳴らします。
その後は、隣にある酉ノ寺で、『一粒萬倍御種銭』をいただき、最後に商売繁盛の熊手を買って帰ります。これだけのことなのに、大勢の人びとが集い、行列するのです。江戸から続いている風物。人びとは暮しの中で、何をねがったのでしょうか。
師走の前の11月に酉の市があって、新年の準備、心構えのようなものが始まります。
神様との約束事なので、ここに来て、古い熊手を返し、新しい物にするとほっとします。