阿弖流為(あてるい)とは、平成の新作歌舞伎。2002年に演じられた現代劇を歌舞伎として、再演。主演の阿弖流為は市川染五郎、阿弖流為に奇妙な友情を感じ、帝のために蝦夷討伐へ向かう坂上田村麻呂に中村勘九郎、謎の蝦夷の女、立烏帽子に中村七之助という配役です。これは、初めから見るしかないと思っていました。
舞台は古代の日本、大和朝廷が日本統一をしているとき、北の国では、蝦夷が戦いに応じて、戦乱が続いていました。初めての征夷大将軍としての田村麻呂。戦いのシーンが多く、その激しき動きに、これは現代劇なのだと実感。
配役がすばらしい。市村 萬次郎扮する御霊御前、その巫女としての威力に圧倒されます。古代の朝廷では、神の意を伝える乙女たちがいたのですね。萬次郎さんも楽しんで演じています。 坂東 彌十郎演ずる右大臣 藤原稀継 とこの御霊御前は、固い絆で結ばれています。叔父と姪の間柄で、危うい関係を想像させます。
主人公の阿弖流為は、弱さも優しさももつ、青年の村長。蝦夷一族をまとめて戦いを続けますが、最後には和睦にします。文句なくかっこいいのです。日ごろの染ちゃんとも思えない立ち回り。高麗屋に生まれた御曹司は、男伊達が必要ですものね。
勘九郎と染五郎の友情は、あの陰陽師以来、息があって似合っています。 勘九郎はだんだん風格が出てきました。苦労すると、役者はやはり成長するのですね。
七之助も難しい役をうまく演じています。二役のうち、鈴鹿のほうが似合っていると思うのは私だけでしょうか。この人は優しい耐える娘役がうまいのです。
狂言回しのような片岡亀蔵扮する蛮甲(ばんこう)。強烈なキャラクターで、笑わせます。くまこも可愛かった。
二部構成ですが、眠る暇もなく舞台に釘付けにさせられます。人の心の奥底、陰謀と嘘、そして真実と友情。さまざまな思いが舞台の上に登場して、見ている人の心を揺さぶります。歌舞伎役者の演ずる現代劇なのでしょうか、楽しめました。
阿弖流為(あてるい)
阿弖流為 市川 染五郎
坂上田村麻呂利仁 中村 勘九郎
立烏帽子/鈴鹿 中村 七之助
阿毛斗 坂東 新 悟
飛連通 大谷 廣太郎
翔連通 中村 鶴 松
佐渡馬黒縄 市村 橘太郎
無碍随鏡 澤村 宗之助
蛮甲 片岡 亀 蔵
御霊御前 市村 萬次郎
藤原稀継 坂東 彌十郎