着物の話

昨年から続々と着物が集っている。親族から譲られたもの、知人からのいただきもの、どれも微妙にサイズが異なっている。

着物は、長襦袢、着物、羽織、道行き、雨コートと重ねて着用するので、すべてがマイサイズなら苦労はないのだが、いただき物同士を組み合わせるのには、工夫がいる。自分で買い揃えれば高価なものばかりなので、贅沢な悩みといえばそのとおりだ。

昭和に作られた着物には、現代の帯を合わせ、出かける場所に合わせて、組み合わせを変える。歌舞伎、能楽、オペラ、展覧会、食事会と、相手やその場所の雰囲気に合わせて、着物を選ぶ。

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ふだん過ごすには、どんな組み合わせもいいのだが、公共、あるいは、公式な場所に出かけるときは、自分の好き嫌いより、相手のことを考えて、着物を選ぶ。夏は着ている当人よりも、周りの人に涼しげに見えるように工夫する。季節を先取りし、季節感を大切にする。結構、頭を使うから、惚けないのかもしれない。

幸い、母親が存命なので、分からないことはいちいち確認している。昔はそういう決まり事が煩わしくて、逃げていたのだが、この頃は大人になって、日本文化を理解しようという気になっている。江戸の話を読むのにも、着物を着て過ごしていると、見えてくることが多い。

いただいて、箪笥から溢れた着物は用途別、季節別に整理しようと思う。目的がしっかりしているのだから、両方に使えるもの、用途が決まっているものを一目でわかるように、保管しておくとよい。

派手すぎてもいけない、かといって紬では失礼になるとき、色無地に格調高い袋帯を着るといいと教わった。これは応用範囲が広そうだ。訪問着では派手になる場所もあるのだ。

季節限定の柄や、通年使える柄を分けて管理しないし、混乱してしまう。着物も帯も、組み合わせによって新しい美が生まれる。それを楽しむための苦労も、また、楽しい。

 

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