夜の部は、4時半開場で、終演が9時半、本当にたっぷりです。
『仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居の場』を京都で見るのは、興があります。一力茶屋もそうですが、物語の舞台になる場所でみるのが楽しいのです。
藤十郎の戸無瀬は、歌舞伎座でも見ていますが、なよなよした女の中に、きりりと光るものがあって、心を打たれます。今回、小浪役の壱太郎が休演で残念でした。これは、可憐な女形がやることで、哀しみが心に染みます。加古川本蔵役の幸四郎、似合っています。この人、男気というよりは、こんなやつしのような役が似合いますね。
『お祭り』は、ご存知、仁左衛門。こちらも国立劇場で見たのを思い出したました。お客様に愛されている役者だとよく分かります。
『鳥辺山心中』は、初めてみました。橋之助がいちずな武士半九郎を好演し、遊女お染 孝太郎に、真心を見せます。岡本綺堂作の新作歌舞伎なんですね。京都に上洛した旗本の菊地半九郎は、急に江戸に帰ることになり、馴染みになった遊女お染を苦界から救うため、所持する刀を売って代金に当てようとします。同僚坂田市之助はそのことを一蹴し、さらに彼の弟、源三郎にまで、放蕩ものとののしられ、些細なことから切り合い、殺めてしまいます。
お染と半九郎は、晴れ着に着替え、死に場所を求め、鳥辺山あたりまでやってきて、幕となります。
『爪王』こちらは二度目。歌舞伎座さよなら公演で見ています。今回、京都でみたものは、さらにバージョンアップされ、哀しさが極まっていました。七之助の演ずる吹雪という鷹が、美しい。少し痩せて、この役がぴったりと似合います。
吹雪は、最初、狐に破れ、血まみれて、ようやく家にもどります。しばし、身体を安め、春がきました。
鷹匠は、吹雪に獲物を恐れる鷹は王者では無いと言い、吹雪は再び大空へ舞い上がり狐に挑みます。鷹匠 亀蔵との信頼、そして、再度挑戦して、みごとに狐を打ち取るのです。たぶんこのあと、吹雪は、倒れると予想されます。それがまた、哀しかった。
あの若さで、これだけの役を演ずる七之助が楽しみです。
一、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
九段目 山科閑居の場
本蔵妻戸無瀬 藤十郎
大星由良之助 梅 玉
大星力弥 扇 雀
本蔵娘小浪 壱太郎
由良之助妻お石 秀太郎
加古川本蔵 幸四郎
二、お祭り(おまつり)
鳶頭松吉 仁左衛門
三、鳥辺山心中(とりべやましんじゅう)
菊地半九郎 橋之助
遊女お染 孝太郎
坂田源三郎 亀 鶴
父与兵衛 松之助
遊女お花 七之助
坂田市之助 扇 雀
四、爪王(つめおう)
狐 勘九郎
鷹 七之助
庄屋 国 生
鷹匠 亀 蔵