歌舞伎座、壽初春大歌舞伎に行ってきました

お正月の楽しみの一つは、芝居見物です。今年も歌舞伎座の壽初春大歌舞伎、夜の部に行ってきました。新装歌舞伎座は、東銀座駅直結なので、寒さも感じないありがたさです。お正月なので、着物の人も多く、華やいでいます。
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『番町皿屋敷』は、岡本綺堂作。怪談ではなく、一途な恋の哀しい終末を描いています。腰元お菊(芝雀)が、愛する人の心の底を見たくて、故意に家宝の皿を割ります。最初は、粗相と笑ってすましていた青山播磨(吉右衛門)が、母を呼び寄せ、自分が婿になると伝えよ、と話します。

そこへ御用人柴田十太夫 (橘三郎)が事の真相を注進します。すると優しい顔の播磨が、一転して、男の真心を疑った女は許さない。家宝の皿を割ったから、手討ちにするのではない、こんな皿は惜しくもないのだ、とお菊に命じて、皿を一枚づつ差出させ、それを刀の柄でたたき割るのです。

お菊が、皿を差出すと、それを次々と割っていく。最後の皿が割れると、次は自分の命。見ているこちら側が震えるような怖さです。一度疑われた男は、いくら謝っても許すことはしない。こちらの心が見えないのかという怒りの裏返し。男女の愛憎は、深ければ、傷も深い。愛する人を手討ちにして、播磨はどうして生きていけるのでしょうか。芝雀の切ない恋、12月の国立劇場に続いての共演で播磨屋との息はぴったりでした。

『女暫』を玉三郎がやるのは、初めてみました。祝祭劇としての賑々しさ、登場人物の多さなど、『暫』の相似形です。ただ違うのは、女形が演ずるので、幕切れも女らしく、恥じらい、花道を引っ込むのに、舞台番の播磨屋の兄さんに六法を教わります。あの玉三郎が、男声で、見得を張り、愛らしいのです。なかなか乙な配役でした。

『黒塚』はもともと能楽の演目。今回、新歌舞伎座に初めて登場する新猿之助が主役。前の猿之助の凄みのある演技を覚えています。今回の作品は、舞踏劇の要素が強調され、あれは、若い役者だからできる軽快な踊りでした。勘九郎の阿闍梨祐慶も気品があってよかったです。若い役者の力強い熱演に、見ている側も興奮してきます。これからの歌舞伎界で活躍する二人の競演、清々しさを感じました。

一、番町皿屋敷(ばんちょうさらやしき)

青山播磨    吉右衛門
腰元お菊    芝 雀
並木長吉    桂 三
奴権次     吉之助
柴田十太夫   橘三郎
放駒四郎兵衛  染五郎
渋川後家真弓  東 蔵

二、女暫(おんなしばらく)

巴御前     玉三郎
蒲冠者範頼   歌 六
清水冠者義高  錦之助
女鯰若菜    七之助
茶後見     團 子
手塚太郎    弘太郎
紅梅姫     梅 丸
家老根井行親  橘三郎
局唐糸     笑 也
成田五郎    男女蔵
轟坊震斎    又五郎
舞台番辰次   吉右衛門

三、猿翁十種の内 黒塚(くろづか)

老女岩手実は安達原の鬼女 猿之助
山伏大和坊        門之助
強力太郎吾        寿 猿
山伏讃岐坊        男女蔵
阿闍梨祐慶        勘九郎

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