能楽を見るのに、ふさわしい時がある。
まず、睡眠。前の日は遠足と同じ。たっぷり眠れるように、早く休もう。そして、予習も大切。演目の意味や由来、台詞などについて、事前学習をしておきたい。今は、便利なサイトも多いので、分厚い謡曲集を広げなくても、必要な情報は入手できる。
当日は、時間に余裕をもって出かけたい。能楽を見るのに、サッカー観戦の気分ではだめ。心を平らかにして、哀しみも歓びも、心で感じられるようにしておこう。
服装も大切。着物も楽しい。カジュアルではなく、セミフォーマルくらいのほうが居心地がよい。
なぜ、こんなことを書いているかというと、この能楽発表会は、久々に楽しかった。よい時間を過ごした。なぜだろうかと、自問していると、前日よく眠ったのだ。仕事を頑張って、あれこれ完了して出かけると、ほぼ眠ってしまう。地謡も舞いも心地よく眠りを誘う。どんなに事前に学習しても、うとうととしていたら、見逃す。
今回の演目は、橋掛かりを使うものが多かった。脇正面の橋掛かり側にいたので、動きがよくわかった。半能というのは、能楽の前半分あるいは、後半分を演ずるが、今回の石橋は、後ろ半分で、二匹の獅子が激しい動作で舞う。これも能楽で、躍動感あふれたものだった。
みたいと思っていた演目がみなすばらしく、また、こちらも哀しみや悟りについて考えることが多かったので、素直に心に入ってくる。能楽でこんなに濃厚な時間を過ごしたのは、久しぶりだった。観客側も、あらかじめ準備していないと、すべてを受け取ることができない。これは、芸術というもの全般についていえることだと思う。
能 小鍛冶(こかじ) 坂口 貴信(観世流)
狂言 水汲(みずくみ) 内藤 連(和泉流)
舞囃子 舟弁慶(ふなべんけい) 岩松 由実(金春流)
舞囃子 岩船(いわふね) 金井 賢郎(宝生流)
半能 石橋(しゃっきょう) 浅見 重好(観世流)
http://www.ntj.jac.go.jp/schedule/nou/2013/3118.html?lan=j