1970年に「モーレツからビューティフルへ」という富士ゼロックスのCMがあった。戦後の高度成長を支えて、モーレツに頑張って来た人たちが、もっとゆっくり、もっと優雅に暮らしてもいいのでは、と考え始めたときだった。
その後、レナウンから「シンプルライフ」のCMが出て、人びとはその名前の響きに魅了された。より本質に近い、人間の暮らしを見つめるいい提案だった。そして、バブルが始まった。
バブルがはじけた後、失われた10年、右肩上がりではなくなった10年などと、称したが、本当にそうだったのだろうか。
2011年3月11日に、大震災が来て、もう一つの戦後が始まろうとしている。大切なことは、自分が何を創り出すことができるか、である。それは製品、サービス、あるいは、別の仕組み。
簡単に、安易に、とりあえずということはやめよう。ちょっと時間がかかっても、長く使用に耐えるものを創りたい。
お料理でいえば、レトルトパックを温めるだけとか、あるいは、調味料付きソースを混ぜるだけとか、そういうお手軽な料理ばかりしていると、肉や魚、野菜があっても、どうやって調理したらいいか、わからない。
ハンバークはどうやって作るのか、ビーフシチューは、餃子は、鯖の味噌煮は、豆腐のみそ汁は、どんな材料を揃えたらいいのか、くらい知っていたい。
こんな時代だから、少し手間がかかっても、安易には流されたくない。今年は西日の当たるベランダにゴーヤのプランターを置こうと思っている。水やりとか、手がかかりそうだが、それも楽しみの1つだ。どれだけ、断熱効果があるのか、緑があることの幸せ、風の通りが変わることなど、わくわくしてくる。
仕事も、ときには、手作りでやってみたい。お客様に出す手紙を毛筆書きにしたら、真っ先に読んでくださるようになった。たとえDMでも、毛筆書きの封書は、そのまま捨てない。何かと思って、開けてくださる。
お客様に向かう側には、簡単、安易はやめよう。気配り、思いやり、優しさが、自然とにじむような対応が理想だ。誠実な応対をされると、安心するし、また、ひとに教えたくなる。そうやって口コミで、お客様を増やすことができる。
親切は出し惜しみしてはいけない。本質を常に考えて、何が最適なのか、すぐに実行しよう。毎日、基礎訓練をしていると、有事のときに役に立つ。これからも災害が起きるだろう。そのとき、何をしたらいいのか、ただちに判断して、行動する。6月は、警戒する月といわれている。雨も多いから、みなさまもくれぐれもご注意ください。