冷房なしに夏を過ごしていた

1990年から2000年まで、千葉県館山市八幡というところに、小さな家を借りていた。週末に子どもたちと過ごすため、夏休みや冬休みは、何日も泊まりにいった。

八幡というところは、海から歩いて20分くらい。風がよく通って涼しい。借りた家には冷房の取り付け口が付いていたが、最初から冷房は考えていなかった。朝晩は寒いくらい風が吹く。夜も肌掛けをしっかりとかけないと、寒くて明け方、目が覚める。

ただ昼頃、海が凪いで風が止まる。そのときは首振りの扇風機が一台あれば用が足りた。ちかくにジャスコがあって、そこで扇風機を何台も買った。今、家で使っているのは、そのときのもの。

もちろん、夏だから日中は30℃を超える。そんなときは、みんなで海にいくのだ。海で泳いで、身体を冷やし、温めに焚いたお風呂に入る。朝から泳ぐ日は、お昼をたべて、みんなで昼寝する。朝、宿題を片付けた日は、午後、泳ぎに出かける。

そんな昭和な暮らし方をしていると、冷房は必要ない。部屋には家具がなかったし、小さな冷蔵庫におまけのように冷凍庫が付いていた。

不自由のような、自由いっぱいの毎日を過ごしていると、会社に戻るのがつまらなくなる。日焼け止めをたっぷり塗って、でも毎日、海で焼いていると、こんがりといい色になって、ハワイ帰りと騒がれた。

洗濯物は朝干すと、夕方には乾いている。地元の地引き網大会でとれたアジは、内臓をとって、糸で括って洗濯干しにぶら下げる。これが一夜干しになって、美味しかった。

今、都会の中で、同じような暮らしをすることは、難しいかもしれないが、いくらでも工夫のしがいがあるような気がする。そこに知恵を絞るのもまた、楽しいことだ。

団扇や扇子、麦茶、蚊取り線香、昭和の香りのするものを集めてみよう。案外、新しい発見があったりする。この機会に祖父母や両親の夏休みの過ごし方について、聞くのもいいだろう。知恵や経験は伝えていこうと思う。

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