ちょっとした偶然、思いがけない幸運が、人生には散りばめられている。それに気がつくか、あるいは、それを実行するかで、ずいぶんと違ってくる。
この映画、MODE PRESSのサイトを眺めていて、応募したら、映画鑑賞券プレゼントに当選した。でも、このサイトを見なかったら、映画自体も知らなかったのだ。
ファッションは、アートの一部だと思う。表現する力があるし、モデルが三次元でそれをまとうと、さらに輝き始める。昔、外資系半導体の広告担当だったとき、業界紙はもちろん、海外のファッション雑誌も定期購読して、モノを売るということについて、勉強した。さすがに1920年代のファッションはしらないが、1960年代からはしっかりと覚えている。
マリークワントが流行らせたというミニスカート。小枝のような美少女ツィギーが日本にもやってきた。ダイアナが目をとめたモデルは、有名になる。あのシンプソン夫人も彼女の店のナイトガウンをオーダしていたなんて、世紀の恋に加担したのだ。ジャクリーン・ケネディが、大統領就任式に着ていく服をアドバイスしたり、さすがに大物ぞろいである。
「ハーパース・バザー(Harper’s BAZAAR)」で編集者になった彼女は、従来の主婦向けの雑誌を刷新する。旅を演出し、それを読者が想像して楽しむ。1962年に「ヴォーグ(VOGUE)」に転職してからは、さらにその才能に磨きがかかった。当時の「ヴォーグ」は、潤沢な予算で、彼女の難しい注文にもNOということがなかった。若いカメラマン、だれも知らない新人モデルを次々と起用し、トップスターにしていく。
ダイアナのすばらしいところは、本人ですら気づいていない魅力を引き出し、新しい美を造り上げていくこと。「ヴォーグ」編集長を9年勤めたあと、経営方針の変更で、彼女は解雇される。
そして、70歳になったとき、メトロポリタン美術館衣装研究所の顧問に就任。コスチュームをテーマ別に展示して、大好評を博す。行列して、なかなか中に入れない展示会をなんども成功させた。
二人の男の子は、放任だったが、夫トーマスに対する愛情は最後まで変わらなかった。結婚して何十年もたっても、まだ、夫に対するはにかみがある。いちばん美しい自分をみてほしいと思う。この映画の監督は彼女の孫と結婚した女性。それだけに普通は取れないような家族のインタビューもある。
そして、何よりも感動したのは、これまで、貧しい女が働くと思われていたのを、女が働くことは粋である、と思わせたこと。自分を表現するために働く女がいるのだ。もちろん、お金は大事だが、それだけではない。彼女のファッションだけでないアート全般に対する意識の高さ、10年後を見つめる視点がすごい。
平日の夕方5時の部をみたが、客席は5人だけ。ちょっともったいなと思った。全国でも上映するので、ぜひ、見てもらいたい。そして、見終わったあと、自分はなにがしたいのか、と考えてみてほしい。http://dv.gaga.ne.jp/