2001年から始まったイタリア映画祭、日頃、あまり紹介されることにないイタリア映画が集結して、見ているだけで、イタリアの現実が透けて見えてくる。
ハリウッド映画のように、豪華なスター、豪華なセットではなく、イタリア映画は風景描写がすばらしい。同じロケ地を使っても、監督の姿勢で違う角度から描かれるのがおもしろい。
今回みたのは、「IO SONO LI」(シュン・リーと詩人)。ベネチアのようなラグーンにあるキオッジャという町のオストリア(カフェ+バール)にひとりの中国女性が現れる。彼女は故郷、福州に8歳になる男の子を置いて、出稼ぎに来ている。ここに集うイタリア人たちのなかに、ユーゴスラビアから30年くらい前に移民してきた老人がいて、二人は心を通わせ始める。
しかしながら、狭い町、田舎町で、中国人とイタリア人の友情はゆるされない。心を通わせてすぐに、別れがやってくる。
海の風景がすばらしい。主人公が中国女性なので、騒々しくもなく、静かに流れていく水の流れのようだ。だが、それだけではない。イタリアにおける移民の問題、あるいは田舎町まで、中国人が台頭してきて、外国人に乗っ取られるのではないかという危惧も感じている。
中 国で子供を抱えた女性たちが、よりよい生活を求めて、イタリアにやってくる。本来なら、夫が稼いで子供たちを養うはずなのに、それがいない女たちが出稼ぎ にやってくる。映画の中では、洋服の縫製工場が出てくるが、レストランや工場で働き、借金を返し、子供を国から呼び寄せるのだ。現実にそんな人が結構い て、その子供たちは、完璧なイタリア語を話して、学校に通う。
この作品の監督、アンドレア・セグレも子供たちが通う小学校で両親が中国から の移民の夫婦に出会い、中国について学んだそうだ。本来、ドキュメンタリーを作ってきたということで、事実のような淡々とした物語には、陰影があり、想像 する部分が残されている。主演女優のチャオ・タオの演技もすばらしかった。 今冬公開予定なので、ぜひみてほしい。