12月に京都南座で顔見世興行。お正月は、歌舞伎座で壽初春大歌舞伎というのが、ここ数年の恒例になっています。
オペラも能楽も行きますが、お江戸で、江戸の歌舞伎を見るのが楽しいのです。お正月はやはり、歌舞伎で始まるのが似合っている、と思っています。今年は幸運なことに初日のケチットが取れました。
みんなが待ちに待った初日、この日は、いつにもまして、着物姿の艶やかな女性が多く、見ているだけで正月気分を味わえます。歌舞伎座が新装オープンしてから、着物の方が大変増えました。お正月は、さらにそれが華やかになり、特別な気分になります。
夜の部の演目は、お正月にふさわしく、踊りあり、武士ものあり、廓もの、恋人の別れと、歌舞伎の楽しい要素がびっしりと詰まっています。
■赤い顔の猩々は、もともと能楽から来ていますが、見ているだけで、お正月気分になれます。
■二条城の清正は、幸四郎と金太郎(染五郎長男、孫)の情愛のこもったやりとりが、祖父と孫が演じることで、二重に心打たれます。命をかけての二条城でのやりとり、清正公らしい実直で、豪胆な仕草、幸四郎にぴったりでした。左団次の家康も心に一物あって、狸親父らしく宜い出来です。
■廓文章の鴈治郎は、姿や仕草が藤十郎にそっくり、親はもうすこし、軽やかでふわふわと演じていますが、新鴈治郎も和物の柔らかさはしっかりと身につけています。芸達者な家系ですね。喜左衛門役の歌六、大人の役者になりましたね。
■片岡直次郎は、初役の染五郎。三千歳役の芝雀がたっぷりとかき口説き、それを受けて、ワルだが、憎めない色男を演じていました。育ちはいいのだが、悪事に足をつっこんだ悲劇のようなものを感じさせます。丈賀役の東蔵、ベテランのいい味を出しています。
壽初春大歌舞伎
夜の部
一、猩々(しょうじょう)
猩々 梅玉
酒売り 松緑
猩々 橋之助
二、吉田絃二郎 作
秀山十種の内 二条城の清正(にじょうじょうのきよまさ)
二条城大広間の場
淀川御座船の場
加藤清正 幸四郎
大政所 魁春
豊臣秀頼 金太郎
井伊直孝 松江
池田輝政 廣太郎
斑鳩平次 錦吾
浅野幸長 桂三
藤堂和泉守 高麗蔵
本多佐渡守 彌十郎
徳川家康 左團次
三、玩辞楼十二曲の内 廓文章(くるわぶんしょう)
吉田屋
藤屋伊左衛門 鴈治郎
吉田屋喜左衛門 歌六
阿波の大尽 寿猿
おきさ 吉弥
扇屋夕霧 玉三郎
四、河竹黙阿弥 作
雪暮夜入谷畦道(ゆきのゆうべいりやのあぜみち)
直侍
浄瑠璃「忍逢春雪解」
片岡直次郎 染五郎
三千歳 芝雀
暗闇の丑松 吉之助
寮番喜兵衛 錦吾
丈賀 東蔵